1年に1回のオーバーホールに懐疑的な人にお答えします。
オーバーホールを促す特集ってどうなの?
オーバーホールの特集を始めたところ、反響も上々でありがたいことですが、一方でネガティブな意見も直接メールやフェイスブックのメッセージで少なからずいただきました。
総じて、同じような意見だったので、ここであえて苦言を呈したいと思います。
ちょっとだけ頭にきています(笑)。
というか、僕らがこの特集を書いた真意を伝えたいと思います。
いただいた意見をまとめると以下のような感じです。
■オーバーホールはブラックボックスの利権に堕している
■自分でできることをやらせないで利権にしている
■1年に1回させることに根拠はなく、それは金儲けのためでないか
まずは、そもそも論の話から。
これは、特集でも書いているので復習になりますが、どんな遊びやスポーツでも道具のお手入れは基本です。
ましてや、機械の場合、どんなにお手入れをしているつもりでも、内部まではなかなかメンテナンスができないもの。
また、それぞれの部品には耐用年数が想定されており、定期的なチェックが必要です。
水中という特殊な環境では、器材のトラブルは事故に直結します。
定期的にオーバーホールを行なうことで、安全にダイビングが楽しめるのです。
ここまでで異論がある人はいないでしょう。
では、なぜネガティブな意見が出てくるかと言えば、一部の業界の方に問題があり、実際に、よくわからないことをいいことに手抜きや金額の上乗せということがあるでしょう。
また、そうしたことに無頓着で無知な消費者側のダイバーに対する思いもあるのかもしれません。
だから、器材に精通している熟練のダイバーたちは、「だまされている」とか「そんなの自分でできるでしょ」と言いたくなるのだと思います。
まず、言っておきたいことは、器材に精通するダイバーは少数、というか精通する必要を感じている人自体が少数で、「自分でなんかやりたくない」という人が多数だということです。
これはいけないことでしょうか?
僕は普通の感覚だと思っていますし、器材の内部のことを知らなくても最終的な動作の部分の確認さえできれば楽しめるという手軽さは大事だと思っています。
車をいじれなくても運転操作を知っていれば車を楽しむことができるのに似ています。
その一歩先の楽しみを知って欲しいという思いから、「器材のことを熟知していると良いことがあるよ」という啓蒙やお誘いはとてもいいことだと思います。
「車もいじくれると楽しいぜ~」「もしもの時に役に立つぜ~」という人は確かに格好いいですが、「だまされてんじゃね?」「自分でやっちゃえばいいんじゃね?」というのは少し押し付けがましく、ハードルの高いものだと思います。
車の車検も、実は自分で手間暇かけてやろうと思えばできます。
でも、そんな手間暇かけるならやってくれという感覚が一般的ではないでしょうか。
ブラックボックスを生み出さないために大事な情報開示
しかし、一方、熟練ダイバーのいうように、ブラックボックスという部分も実際にあります。
だからこそ、大事なのが情報開示。
オーバーホールとはなんなのかを詳しく提示し、その良し悪しの判断基準、どこに出せばいいのかということを詳細にお伝えするための今回の特集です。
ブラックボックスにしないため、自分でやらなくてもせめて判断できる材料を提示するため、さらに、オーシャナの信用のみで出す先を選ぶこともできるように(すなわち、こちらも信用問題なので、信頼できるパートナーを必死で見つけ出すわけです)という思いから書いた特集です。
特集の後に出てきますが、だったら自分たちでやってしまおうと、オーシャナでも信頼できるパートナーとオーバーホールを手掛けることになりました。
金儲け?
ただ、“健全”にお金をいただくことに真摯でありたいと思っています。
それと、プロをなめすぎているな、と。
確かに手抜きをして評判を落とすような人がプロと名乗るからこそのネガティブな意見なのだと思いますが、取材した身から言わせていただくと、本当のプロは素人がとても手の届かないレベルにいる断言します。
特殊な工具・機器などのハード面だけでなく、その過程、アフターケアもプロフェッショナルの精神が息づいています。
僕はここにとても感動して、だからこそ正当に評価されるべきで、逆に言えば、知られていないことが残念で、これはお伝えしたいと思いました。
1年に1回は横暴か?
レギュレーターは、1年に1度、または1年経っていない場合でも1年以内に潜水本数が100本に達したときがひとつの目安となっています。
(ただし、ATOMICのT、B、STシリーズのみ2年に一度)
ここで指摘されるのが「どうして1年?」「1年に1回じゃないとダメなの?」「金儲けのサイクルじゃない?」というご質問というか懐疑的なスタンス。
こうした疑問に、端的にお答えしておくなら、「そう思うのであれば、自己責任で2年でも3年でもいいし、なんなら壊れてからでもお好きにしてくださいな。ご自身でできるならやればいいのではないでしょうか」です。
「1年であることの根拠が不明瞭」、「器材によって傷み具合が異なる」、「1年以上しなくても長く使っている人がいる」などが、疑問の理由のようですが、まず、なぜ1年かと言われれば、自社の製品を最もよく知っているメーカーが、品質に責任を負うための推奨する期間だからです。
賞味期限がなぜその日付?
車検ってなぜその頻度?
と同じように、絶対的な答えはなく、実際、賞味期限が切れても食べられるでしょうし、車検を通さなくても普通に乗れる確率の方が高いのかもしれません。
また、保存方法によって賞味期限は変わるでしょうし、通勤で毎日乗っている車とたまの休みにしか乗らない車では傷みも違うでしょう。
それでも、賞味期限も車検も個別の事情によって設定値が変わることはありません。
そういうことです。
個別の事情に合わせられるスキルがあれば、それはそれで自分で考えてやればいいことです。
食べ物のにおいを嗅いで「これはまだいけるな」という人は、僕はむしろ知恵のある人で尊敬しますが、同じように、器材を自分でメンテできる人は尊敬します。
でも、それを押し付けたり、批判するとなるとちょっと違うなと思ってしまいます。
ゆとりをもって安全に楽しく潜って欲しいから、僕らは1年、100本という基準を推奨します。
それを推奨するうえで、情報開示をしたいと思っているのです。
確かにオーバーホールは自分でもできるし、そうしたことを教えてくれるお店もあります。
こうした需要はニッチではありますが、重要だとも思っています。
いずれ、お伝えできたらと考えています。