ダイビング中、突然エアーが吸えなくなった! 意外な理由と応急処置法
「レギュレーターが故障したら、エアーが出続ける、止まらない」というのが、現在のレギュレーターの通説ですが、故障ではなく、トラブルによってエアーが出なくなった、というケースが極希ではありますが発生しています。
今回はそんな事例の一つをご紹介します。
器材ユーザー様から受けた状況報告は以下のような内容でした。
・潜降開始から2~3分して突然エアーが吸えなくなった。
・その後、フリーフローしっ放しになった。
・レギュレーターのセカンドステージを振ったり叩いたりする。
・改善されず、オクトパスにくわえ替えて1ダイブを終えた。
・現地のインストラクターに器材を診てもらったところ、ダイアフラムとレバーの隙間が大きすぎて、そのために吸気してもレバーが動かずエアーが出ていない。
器材が実際に届いて、診断した結果は次の通りです。
■不具合箇所
レギュレーター、セカンドステージ
■症状
潜降2~3分後に突然エアーが吸えなくなり、フリーフロー開始。吐出量が著しく低下。
■診断結果
まず、器材到着後、フリーフローを確認。
次に、フェイスカバーをはずしたところ、ご指摘の通り、ダイアフラムとレバーの隙間が大きくなっていることを確認しました。
そして、ダイアフラムをはずすと、オーバーホール時に調整した位置よりもレバーが低い位置に下がっていました。
かつ、レバーに触れるとすごく動きが悪い。
何らかの引っ掛かりが考えられるため、分解を行ったところ、レバーがスムーズに滑らかに動くようになりました。
ケース内を拭き取りしたところ、黒いプラスティック片が出てきたため、各部品の損傷(欠け)を疑い確認をしましたが、いずれの部品もどこも欠けてはおりませんでした。
外部から混入した異物と思われます。
お聞きした話と照らし合わせると、以下のように推測されます。
・セッティングから潜降開始までは正常作動。
・潜降2~3分後、器材内部に混入した異物が、空気の流れによりレバー可動部(スピンドルボディとレバーの隙間)に挟まってレバーが下がらなくなったためエアーが停止。
・ふったり叩いたりして外部から衝撃を与えたことで、レバーが下がったものの、異物が挟まっているため、今度はレバーが上がることができず、レバーが押されたままの状態になり、エアーが出っ放し(フリーフロー)に。
・下がって止まった位置が、完全に下がりきったところではなく、可動域の中間であったため、細いエアーが出続けた状態になった、と考えられます。
言葉だけの説明ですとわかりにくいかと思いますので、画像を添付します。
こちらがボディとレバーなのですが、
爪楊枝とレバーが交差しているところに異物が挟まったとイメージしてください。
こちら、異物に干渉されて上がり下がりができなくなった状態を表現しています。
■当店で行った処置
セカンドステージ分解後、エアーで清掃をして、再度組立て調整。
■現地でユーザー試みることができる応急処置
タンクに接続して、セカンドのパージボタンを押したり離したりを繰り返しながら、マウスピースから流水を入れる。
うまく異物にあたり流しだせることができれば、エキゾーストバルブから異物が外部に排出されます。
異物の大きさや挟まった箇所によっては、分解しなければ取り除くことはできませんが、万一、同じような状況に遭遇された場合は、ぜひ試してみてください。
今回のようなケースは予防しがたいことかもしれないですが、幸いだったのは、トラブルに遭われたダイバーさんが、スキルと冷静さをお持ちで、呼吸源をオクトパスに変える機転をなされたこと。
スキルアップをして経験を積むことで、より安全なダイビングができるともいえる事例だと思います。
非常に珍しいケースではありますが、オクトパスにくわえかえることや現地でできる応急処置を含め、ぜひ頭の片隅に残しておいていただけますと幸いです。
安全なダイビングができますことを心よりお祈り致しております。