「KAILは疲れない」は本当か?フィン履き比べでガチンコタイム計測!

日本のダイビング器材メーカー・TUSAが2012年に新開発したフィン、KAIL(カイル)

先日、このフィンについて、TUSAの担当者とお話をする機会がありました。
そのTUSAの担当者曰く「これは“1ダイブ最後までしっかり、楽に蹴りきれるフィン”をコンセプトにしていて、疲れにくいフィンなんですよ」と。

「なるほど、疲れないフィンかあ」と思っていると、さらにその担当者はこう続けました。

「実は、去年から今年にかけてインストラクターやガイドを対象に200mのタイムを測ってもらったんですが、KAILは他のフィンに負けたことがないんです」

なに、負けたことがない?

それが本当だとすると、確かに明確な長所があるフィンなのかもしれません。

そこで!
オーシャナでは読者モニターを募って、実際にガチンコでタイム計測テストをしてみることにしました。

果たして、そのガチンコ勝負の結果は!?

TUSAのフィン・KAIL FF16

TUSAのフィン・KAIL FF16

構成:いぬたく
取材:いぬたく、平井健二郎
写真:いぬたく、(株)タバタ

体育会系ダイバーによるタイムテスト結果

まずは、TUSAが独自に行ったタイムテストの結果を先にご紹介します。

これは都内某大学の体育会系ダイビング部の学生ダイバーが、200mをKAILと自分のゴム製フルフットフィンでそれぞれ全力で泳いだタイムを記録したものです。

KAIL(カイル)のタイムテスト結果

KAILの欄は自分のフィンとのタイム差を表記。青色の項目が、KAILの方が速い結果となったもの(クリックすると大きくなります)

この表から分かるのは、以下の二点。

  • 距離が25mだとKAILの優位性は特に見られない(2勝4敗1分)
  • 距離が200mになるとKAILが全勝(7勝0敗)

つまり、KAILはコンセプト通り、長い距離を泳いでも足への負担と疲労が少ない=それがタイム短縮に表れている、ということになっています。

しかし、これはあくまでTUSAが行ったタイムテスト。
そこはオーシャナも自分の目で確かめないと!ということで行ったのが、今回のガチンコタイム計測です。

プールに集まった読者モニター6人+1人

オーシャナのヘッドライン記事で読者モニターを募ったところ、急な呼びかけにも関わらず、6名の方が集まってくださいました。

みなさんダイビングの経験はかなりお持ちで(こういうモニターに興味を持っていただくのはそういう方が多くなりますよね)、それぞれ異なるKAIL以外のゴム製フィンをお持ちで、泳ぐフォームなどはしっかりした方ばかりでした。
実際にタイムを計測したのは、その6名と僕の合計7名。

今回のタイムテストで、読者モニターの皆さんにお願いした内容は、以下の通りです。

  • まず自分のフィンで200m泳ぎ、その後にKAILで200m泳ぐ
  • 全力で泳ごうとせず、自分のペースで

上で挙げたTUSAのタイムテストのように全員がマッチョな体育会系というわけではないので(笑)、全力で泳いでは体力がもちません。
そのため、無理せず自分のペースで泳いでもらうようにお願いしました。

KAILのタイムテスト

2人1組でバディを組んで、それぞれタイムを計測

ただ、ここはKAILの肩をもつわけではないのですが、2回目に泳いだ際にはちょっと疲れている方もいらっしゃいました。
(そりゃ4分間も泳ぎっぱなしだと普通の人は疲れますよね…)

ガチンコタイムテストの結果はいかに!?

そのようにして測った結果は、以下の通りです!
ジャーン!

KAIL(カイル)の読者モニターテスト結果

KAILの欄は自分のフィンとのタイム差を表記。青色の項目が、KAILの方が速い結果となったもの(クリックすると大きくなります)

この結果から分かったことは以下の二点でしょうか。

  • 25mだとやはりあまり違いはない(全員が3秒差以内の違いに留まる)
  • 200mだとKAILの5勝1敗1分

1敗こそしたものの、やはり200mではKAILの優位性が浮き立つ結果となりました。
KAIL、確かに明確な特徴のあるフィンだと言えそうです!

硬くて長いフィンで感じる“蹴りごたえ”の落とし穴

そもそもこのタイム計測というのは、「なんとなくのフィーリング」になりがちなフィンの使用感について、客観的な事実である数値から特徴を表したいという意図を込めてTUSAが行っていたもの。

このモニター会を行うにあたって、僕がハッとさせられた言葉がありました。
それはTUSA担当者の「“蹴りごたえ”っていうのは、硬くて長いフィンのほうが必ずあるんですよね」という言葉。

その方は、以下のように続けました。
「ただ、長く泳ぐ時や、流れに逆らって泳ぐ時だと、途中からヘバッてしまうんです」

途中からヘバるというのは、正直なところちょっと意外な感覚でした。
というのも、KAILを履いて蹴って(僕だけでなく)多くの人が感じるのは、「スカスカした蹴り心地」で、「これ、本当に進んでるのかな?」と不安になりさえするぐらいの印象だからです。

そのため、例えば伊豆でモニター会を行っても、「なんか進んでるかよく分からないんだよね~」という感想をもらうことが多かったそう。

ただ、実はそれはしっかり進んでるんです!(笑)
それも疲労感が少なく、かなり快適に。

その結果が200mのタイム結果に表れるのだということが、自分で実際にタイムテストを行って分かったことでした。

KAIL読者モニター

読者モニターとして集まっていただいた皆さん

読者モニターによるKAILの感想・レビュー

とはいえもちろん実際に履いた方の声も大事だよね、ということで、読者モニターの皆さんの感想をご紹介します。

「KAILは軽くて、特に悪いところは見当たらない。
ただ、これまで買える場所がなくて『どこで買えるのかな?』と思っていた。」
(Aさん、30代女性)

「次回のフリッパーレースのために水面を泳ぐフィンが欲しいと思っていたので、KAILにすることに決めた。
前回のレースは他のゴム製フィンで参加したが、それよりもブレードが短くて楽に泳げる。」
(Bさん、60代女性)

「自分のゴム製フィンよりも短くて軽いので、特に水面での移動が楽だった。
自分のフィンに慣れていると、蹴りこみ過ぎて空振りする感じはする。」
(Cさん、30代女性)

「最初は蹴り心地がスカスカしていて『進んでるのかな?』と感じた。
100m過ぎたあたりから足の疲れ方が違う。」
(Dさん、30代女性)

「自分のゴム製フィンだと足首のまわり、特に足の甲への負担が大きいが、KAILは疲労感が分散される感じなので疲れを感じにくい。」
(Eさん、30代女性)

「他のゴム製フィンの方が水の抵抗を感じるので、40分のダイビングになると大きく違いそう。自分の場合はKAILの方がタイムが遅い結果になったが、実際にはKAILだと疲れ方が違ってほとんど疲れなかった。
自分はインストラクター(ガイド)をしているが、3本目がラクで楽しくなるフィンと言える。ただ、ガイドをしている時はあおり足が多いので、フィンの長さは見栄えにつながる部分もある。」
(Fさん、40代男性)

僕が履いて200mを泳ぎ比べてみた感想としては、実際に足、特に足首と太ももの疲労感がかなり違いました。
それはフィンキックをしていて強く実感します。

僕は最後に急いで測ったので休憩時間もなく(笑)、ほとんど連続で200mを泳いだため、2回目のKAILの前には両足にまだ疲れが残っている状態でした。

それでもKAILでのフィンキックを始めると、その時点でも足への負担が少ないことが分かりました。
正直、「ここまで違うのか!」と驚きもしました。
(ちょっとKAILの思惑通りで悔しいのですが。笑)

以上は水面でのフィンスイム。ではダイビング中は?

と、以上がガチンコタイム計測の結果と、その際の感想です。

ただ、これはあくまで水面を泳いだもの。
実際にダイビングを行う際には、シチュエーションはまた少し違ってくるでしょう。

そこでダイビング時のKAILの使い勝手を訊くために、今回は最も適任と言える方にお話をうかがってきました。

その方は「フィンを履いて泳いでいる時間なら誰にも負けないと思う」と言うほどフィンへのこだわりが強いダイビングインストラクター、スキューバ サービスステーション NASO(ナッソー)の柳田さん。

柳田さんによる「KAIL、ダイビング中はどうなのよ?」は、次ページをご覧ください!

「KAILは疲れない」は本当か?フィン履き比べでガチンコタイム計測!

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