4メートルからの2ミリの世界 ~越智隆治はじめてのダンゴウオ@鳥取・田後 前編~
クジラやイルカ、マナティなどなど、大物の撮影をライフワークとする越智カメラマンは、3月17日にタイガーシャークの撮影から帰国したばかり。
そんな越智カメラマンと今回、向かった先は鳥取県のブルーライン田後(たじり)。
狙いは、ダイバーの人気者・ダンゴウオの撮影、4メートルの被写体から2ミリの世界です。
はじまりは、「ダンゴウオとか見たことないし」のひと言
とあるダイバーに「ダンゴウオってどうやって撮るんでしょうか?」と質問され、越智カメラマンが衝撃の返答。
「俺、撮ったことないし。っていうか、見たことないし」
一同、「え~~~!」。
世界をまたにかけて撮影する越智カメラマンが、ダイバーにとって超ポピュラーな人気者・ダンゴウオを見たことないとは意外過ぎます。
そんな話を、鳥取のブルーライン田後(たじり)の山崎英治さんと電話している時に何気なく話すと、「え! それなら、ダンゴウオ天国の田後でぜひデビューしましょうよ!」。
「いいですね~。やりましょう!」となったのが、昨年の9月のこと。
■鳥取・田後の海
田後のダイビングショップ・スポット情報 – ダイビングナビ
しかし、ロケに行ける日程はおよそ半年後の3月までありません。
その間、ダンゴウオが見られてもおかしくない海で潜る予定もいくつかあり、出てしまったら出てしまったでテーマを変えて撮ることにはなっていたのですが、山崎さんの「なるべく見ないようにしてくださいね~」の言葉が頭から離れません。
この日から、会いたいはずのダンゴウオが、もし見てしまったら「うわっ。出たっ!」という、見てはいけない幽霊のような存在に(笑)。
そこは、持っている(?)男、越智隆治。
秋の八幡野ではダンゴが出る寸前のシーズンで、その後、ダンゴが出たと話題の伊豆のロケは流れ、ダンゴがウリの東北ロケは日程が変更になるなど、ことごとくダンゴウオを回避。
好きなのに無視してしまうツンデレな越智カメラマンです。
最大の危機(?)は、ダンゴウオといえば、この人、「不思議可愛いダンゴウオ」(河出書房新社)の著書で知られる佐藤長明さんがガイドする函館の海を潜ることになったとき。
さすがにこれは見ちゃうだろうと思っていたものの、終わってみれば「あれ? そういえば見なかったぞ」。
潜る前に「こういう企画があって、ダンゴウオ見られないんですよ~」と冗談っぽく言っていたので、おそらく気を使ってくれたのでしょう(笑)。
そんなこんなで、気が付けば越智カメラマンはノーダンゴウオのまま半年が過ぎ、ダンゴウオに会いに、鳥取ロケが実現することとなりました。
越智隆治、人生最小の被写体にとまどう
鳥取への車中、ダンゴウオとの初対面に、さぞ心躍らせているだろうと越智カメラマンに話を振ると、携帯の画面に目を近づけたり離したりしながら、「ダンゴウオ、俺、見えるかな……」と不安そう。
越智隆治47歳。
数日前まで対峙していたタイガーシャークやグレートハンマーとは違って、「老眼キラー」の異名を持つダンゴウオ。
ある意味、タイガーシャークより強敵かもしれません。
鳥取まで車でおよそ9時間。
ブルーライン田後に到着し、山崎さん夫婦たちに出迎えていただき、さっそく打ち合わせ。
山崎:天使のリングのような模様をした、赤ちゃんダンゴウオがたくさんいますから、ぜひ、可愛いく撮ってくださいね
越智:このサイズの被写体に関しては初めてなので、素人みたいなものかも……
山崎:またまた~。越智さんが撮ると、きっと違うんだろうな~、すごいんだろうな~
越智:これまで撮影する中で最小の被写体ですので、大丈夫かな……
山崎:越智さんが撮るんですから、幼魚が口を開けている決定的瞬間とか、エサを吸い込んでいるところとか撮れちゃったり!
越智:いや、1日半でそれは……
ハードルの高さを決める攻防が見ごたえたっぷり(笑)。
越智:大物やワイド写真と違って、こういうのは環境次第なので、ガイドさんの腕によるところも大きいですよね
山崎:いや~、そこはきっと越智さんの腕で何とか
なんの譲り合いでしょうか(笑)。
越智隆治、陸上で撮ってみて、いけそうな気がする
用意していただいた赤ちゃんダンゴウオの実物大の模型を見て、越智カメラマンは無言のち、小声で「勘弁してくれよ……」。
とりあえず、カメラで撮影、その後、ハウジングに入れて撮影、レンズを変えて……と、順を追って熱心に練習する越智カメラマン。
しばらくすると、「いけそうな気がする~!」。
エロ詩吟を思いついたわけではなく、準備してきたカメラ機材でしっかり対応できそうなことが確認でき、ホッとした模様です。
「あとは、いかに体が固定できるかに尽きる」とやる気がみなぎってきました。
越智隆治、長明さんの写真集を見て、いけそうな気がしない
撮影の展望も見え、あとは撮影のみとなった時、ふと目に入ってきた長明さんの写真集を手に取る越智カメラマン。
何やら微妙な表情を浮かべ、「これ見ちゃうとさ、なんか、何やってもダメな気がするんだけど……」
初めてのダンゴウオとの対面、慣れないマクロ撮影に、思いが行ったり来たりと揺れているようです。
しかしながら、何年もかけてライフワークとして撮り続けたダンゴウオに対して、こちらは1回きりのチャンス。
「1日半でどれだけ撮れるか? 撮れる海なのか?」をテーマに、いざダンゴウオとご対面です。
(後編に続く)