伊豆大島ボランティア&ダイビング。現地に行ったからできたこと・分かること
2013年11月16~17日に開催した、オーシャナ主催の伊豆大島ボランティア&ダイビング企画。
土石流の影響なく潜れる状態にかかわらず、こうした災害地復興につきものの、「今、大々的に『潜りに来てください』と言っていいのか」という現地の複雑な思いと、「行ってよいのかわからない」「あえて潜りに行く必要もない」というダイバー側との思いに、何か“きっかけ”を作りたいと開催した企画です。
まず、初日の昨日はダイバー20名で陸上ボランティア活動に参加しました。
土石流災害から1ヶ月。伊豆大島ボランティアレポート – 伊豆大島|オーシャナ
そして、2日目の本日はファンダイビング。
ところどころ土砂崩れの跡があり、雨の日は海に流れる場所もありますが、ダイビングポイントは多くあるので、被災前と変わらず潜ることができます。
※土石流災害は局地的で島全体ではありません。
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ダイビングは伊豆大島の人気ビーチダイビングポイント「秋の浜」へ。
シーサウンドの小川修作さん、T-Factory(ティーファクトリー)の河辺保さん、伊豆大島ダイビングセンターカラーズの荻島浩二さんに協力いただき、3班に分かれてエントリー!
水中は、ビーチポイントにもかかわらず水深がとれるので、バリエーション豊富な水中環境、生物相を楽しめます。
かけあがりにはイサキの川、中層にはキンギョハナダイの雨、根にはクマノミ城あり、砂地には元気なソフトコーラルありとワイドシーンの連続です。
もちろん、人気生物もしっかり登場。
参加者みんなで、伊豆大島の海をすっかり2本楽しみました。
参加者の声で企画を振り返る
ボランティアは敷居が高い? “身近”がキーワード
参加者の皆さんに、今回の企画に参加した理由を聞いてみたところ、まず、ボランティアに参加することへの敷居の高さを指摘する声が結構ありました。
「ボランティアに参加するのは敷居が高く感じます。何ていうんでしょうか、自分への照れや偽善というツッコミみたいなものがあって……」
「やはり身近なことでないと、テレビの先にあることになっちゃうんですよね。特にきっかけもなければ自ら参加しようとまでは思いません」
そんな敷居の高さを乗り越えるキーワードが、“きっかけ”や“身近”のようです。
「去年、伊豆大島に潜っていたこともあって気になっていました。どういう状況か聞きたい気持ちもありましたが、一度しか行ってない人に聞かれるのも迷惑かなって。だから、記事を見ていいきっかけだったから行ってしまおうと思いました」
「ペンションいち・まる・いちに来たことがあって、身近な存在だったので。一度来たことはかなり大きかったです」
「よく読んでいるオーシャナで見て、興味はあったので思い切って参加しようと思いました」
今回の企画がきっかけとなった人は、ボランティアとダイビングが同時にできることに魅力を感じた人が多かったようです。
「被災地では復興支援と共に、観光業など経済の復活も重要です。そういう意味では、今回、ボランティアだけでなく遊びも絡めた企画は初めて参加しましたが、セットでできるのはありがたいと思いました」
「ボランディアには興味があり、参加することもありますが、楽しいこととセットじゃないと嫌。これに人生を捧げるわけではないし、自分も楽しみながらできることやろうという気持ちの方が無理なくできるんじゃないかな」
見て感じた被災地の状況は人それぞれ
土砂災害のあったエリアの陸上ボランティアに参加したところ、興味深かったのは受け止め方が人によって真逆だったりすることです。
「すでに1ヶ月も経っていたし、報道でもあまり見なくなったので、すっかり良くなったと思っていました。でも、実際に来てみたら思ったよりひどく、身が引き締まりました」
「想像と違っていた。直接的な復興の手伝いというより、例えばおばあちゃんの買い物の手伝いとか生活支援のつもりで来ましたが、実際には土砂も蓄積し、まだまだだなと感じました」
「日ごろからニュースを見て気になっていたのですが、思ったより復興していて驚きました」
ボランティアセンターの方にお聞きすると、ちょうど一か月が経ち、自衛隊の撤退という区切りもあって、ボランティアの受け入れを一旦やめるかどうかの検討も始まっているそうです。
“落ち着いた”というのが、ずっと現地を支えてきた彼らの感触のようです。
ただ、難しいのが、参加者の声の違いでもわかるように、受け止め方は人それぞれ。
「もうひと区切りついた。観光客を取り戻そう」という意見もあれば、「まだまだ土砂が積もっている場所もある。それに、行方不明者がいる限りは終わらない」という意見もあり、自粛との葛藤の問題に帰結していきます。
伊豆大島のボランティアにはそれまでの活動が集約されていた
各地のボランティアによく参加している方が今回の企画に来てくれたのですが、多く参加しているからこその視点が興味深い話。
「東北、和歌山、山口など、多くのボランティアに参加しており、伊豆大島で会ったボランティア仲間とも話したのですが、今回のボランティア体制は、それまでの被災地での活動のすべてが集約されている印象を受けました。差配や流れ、物資の取りそろえ、道具の手入れや管理など、蓄積されたノウハウがすべて活かされ、スムーズでした」
「ボランティアはこっちまで消沈していてはダメ。時に笑顔で楽しむのも大事。また、観光業を助けるダイビングを楽しむというのは、良い企画だと思って参加しました」
全員が「参加して良かった」
今回参加した皆さんは、「ふくらはぎが痛い」「腰に来た」「今季初ドライで辛かった。今度はウエットがいい」という声もありつつ(笑)、全員が「参加して良かった」と口をそろえました。
「お手伝いも遊びもできて楽しかった」
「大島の海は、いつも潜っている伊豆のイメージだったけど、ワイドシーンもあって楽しめた」
「人見知りなので不安でしたが、どんどん行ってしまえばつながりも増えることがわかりました」
「ダイビング…海は通常に戻っていると感じられたので、観光振興のためにも災害があったからと躊躇せず伊豆大島に行くべきです。本企画は素晴らしく、それに呼応した参加者の行動力と熱意が伝わりました。ボランティアとダイビングの組み合わせはこれからも企画して欲しいと思います」
皆さんの感想を聞いて改めて思ったのは、興味や思いがあるのに、いろいろ考えすぎて躊躇、自粛してしまうのなら、まずは現地に行ってしまえばよい、ということ。
自問自答、不安、批判的な意見への恐れなど、勝手に想像が膨らんで身動きが取れなくなるくらいなら、行ってしまえばわかることも解消することも多く、何より実際に誰かの助けになるはずです。
そして“結果として”何か得ることもあるでしょう。
参加者へのダイビングガイドさんの声
参加された皆様にはどんなに感謝しても言い足りないほど有難く思っております。
これだけの方が大島を思ってくれたのを実感し、勇気づけられました。
久しぶりに、いつものようににぎわっていた秋の浜を見て嬉しかったです。
(シーサウンド・小川修作さん)
スコップも持ったことのないような人が泥かきをするのは大変なことです。それなのに、島外からわざわざ来ていただけるだなんて感謝しかありません。私たちは、なかなか「海は大丈夫だから来てね」とは言いづらく、実際に潜った皆さんが「楽しかった」と言っていただけたのには心底良かったと思いました。
(T-Factory(ティーファクトリー)・河辺保さん)
感謝感謝。パワーをもらいました。これからのシーズンは透明度も上がり、季節来遊魚という南方のカラフルな魚も多いベストシーズンです。これを機に、再び、多くのダイバーさんに潜りに来てほしいです。
(伊豆大島ダイビングセンターカラーズ荻島浩二さん)
※
災害直後の初動時は、慎重に想像力を働かせることが大事ですが、自粛ムードをどうするかという段階、ダイビングで言えば「あえて潜らなくてもいいのでは?」というときにあえて潜ってみることも、身近でできる小さい何かなんだと、現地ガイドさんたちの声を聞いて思いました。
高速船で2時間ほどの、ベストシーズンの伊豆大島の海。
ぜひ、潜りにいってみてください。
(企画協力)
ペンションいち・まる・いち
シーサウンド
T-Factory(ティーファクトリー)
伊豆大島ダイビングセンターカラーズ