激流のペリリューやテールトップリーフを潜るためのデイドリームの安全対策とは

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パラオの魚の群れ(撮影:越智隆治)

ダイバーの間では、激流で有名なパラオのペリリューコーナー。
パラオ在住のインストラクターでさえ、まともにガイドできる人は少ないと言われる。

ましてや、さらに遠く、パラオの北の激流ポイント、テールトップリーフに至っては、潜りに行く機会も少ないので、今回のパラオ南北サファリでお世話になっている、Day Dream Palauのトップガイドである遠藤学さんでさえ、潮読みは難しいという。

今回も、テールトップリーフの水深30m前後のリーフ上の中層をドリフトで流しながら、緩やかにカーブするコーナー先端を過ぎた途端に、急にブルーウォーターへの払い出しの速い潮がかり、一気にリーフから沖へと流された。

パラオ、テールトップリーフの潮の流れ(撮影:越智隆治)

後方のダイバーが吐き出したエアが、先行するダイバーを越えて進行方向に流れて行く。それだけ、流れが速い事が伺える

ペリリューでも、速い流れの中でドリフトし、ポイントを2つも3つまたいで流す場合がある。
今回も、イエローウォールというポイントから、コーナー先端に向かって、ドロップオフをロングドリフトし、最後はペリリューコーナーを横切って浮上した。その距離約1.8km。

パラオ、ペリリューでのドリフトダイビング(撮影:越智隆治)

イエローウォールから、ペリリューコーナー先端まで、ドロップオフを流す。その距離は、約1.8km

潮の速さ、波の高さ、天候、キャプテンの経験値、ゲストのスキル、魚の群れの状態など、様々な状況によってその時その時の遠藤さんの対応は臨機応変に変わる。

そのときのポイント全体の状況を把握した上で、どこで何分後に浮上するのかを、ピンポイントでキャプテンと打ち合わせて、その通りにダイビングを組み立てる。

今回のように流れの速いときに、まずリーフから離れて遠藤さんがすぐに行なうのが、フロートをあげる事。
その水深は25m前後だったりする。

フロートに装着している漁業用の手釣り用のラインは70mもある。
深い場所からフロートを打ち上げる場合、この手釣り用のラインの細さによる、潮の抵抗の少なさと、強度も重要なポイントになっている。

打ち上げるフロートのサイズも、通常のフロート長さが5フィート程度なのに対して、遠藤さんのフロートは、倍の10フィート。
幅も3倍近くある巨大なものだ。

エアをいっぱいに入れた巨大フロートは、フィンガーリールに巻かれたラインを勢い良く吐き出しながら、一気に水面に向かってロケットのように浮上していく。

パラオのダイブフロート(撮影:越智隆治)

全長10フィートのフロートを水深25mから打ち上げる

巨大フロートを一気に打ち上げ、そのフロートが水面に到達すると、しばらくしてボートがフロートの周囲を旋回し、「フロートを確認している」事を安全停止中のダイバーたちに知らせる。

パラオでの安全停止(撮影:越智隆治)

安全停止中に、ボートがフロートを確認している事をダイバーに知らせるために、フロートの周囲を一周して知らせてくれる

リーフから離され、どんどんと沖へ流されていく状況で、ボートが旋回してフロートを確認している事を知らせてくれるこの行為、他のダイバーはどう思っているかわからないが、漂流経験のある自分としては、本当にほっとする。

ガイドとスキッパーとの間で、どういう潜り方をして、どう浮上するかの打ち合わせがしっかりできている事も、ハードな海でも安心して潜れる大きな要因だ。

経験本数の多いダイバーたちの多くが、穏やかな海よりも、こうした激しい海に潜ることを求めるようになってきている。
ペリリューエクスプレスやテールトップリーフを潜る事、それ自体がベテランダイバーのステータスであるとも言える。

彼等のハードな要求を満たし、ギリギリまで攻めるダイビングを行いながらも、安心して潜れるのは、こうした安全対策を怠らないガイドやオペレーターの姿勢にあるのだと、久しぶりに遠藤さんと潜って、改めて実感した。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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