奇声でアジを呼ぶガイド!? 厳しい状況から生み出した、文句の言われない魚の集め方

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シミラン(撮影:越智 隆治)

ロウニンアジやギンガメアジ、カスミアジなどを呼び集める手段として、ペットボトルに海水を入れ、指示棒などでボンボン鳴らす方法は、今ではガイドの間で定番になっているかと思う。

しかし、タイのシミランクルーズでは、ヨーロピアンインストラクターの過度なまでの自然愛により、グローブ禁止、砂地ですら着底禁止、岩につかまるの禁止、マンタに接近して撮影禁止!
などなど、上記の行為を見つけようものなら、あっというまに目の前に飛んできて「お前イエローカード! そして退場!」ばりに、文句のジェスチャー。

ときには、後頭部を叩かれたり、胸ぐら掴まれたり、ファーストステージをつかまれて放り投げられたり、マスクをはずされたりすることも(実際今までに自分も目撃している行為。注:最近は気をつけているからか、そこまで酷い仕打ちは受けていないらしい)。

言っておくが、この「禁止事項」、タイ政府が決めているルールとして確立したものではなく、あくまで一部の自然愛過多なヨーロピアンインストラクターによる、高圧的な啓蒙活動行為の一貫。
もちろん、マナーとしてやってはいけないと示唆するのはいいのだけど、とにかく高圧的過ぎる。
そこまで他のダイバーにやれと言うなら、いっそのこと、彼ら自身がダイバーを海に連れて行くのを禁止にすればいいのに、とさえ思ってしまう。

そんななか、ペットボトルをボンボン鳴らして魚を集める行為も含まれているそうで、もしそのような行動を彼らの前で行おうものなら、「お前なにしてる!」とばかりにクレームを言われることもあるのだそうだ。

そのような苦境の状況下、少しでもゲストを楽しませようといろいろ試した結果、ediveのガイド、高見沢ショウジさんがあみだしたのが、「奇声で魚を呼ぶ」という方法。
本人は奇声ではないと言うが、普通に泳いでるガイドがなにか叫んでいたら、ちょっとびびる。

どういうことかというと、単純に自分が奇声を発して、カスミアジやロウニンアジ、ギンガメアジなどを呼ぶわけだ。
「声のトーンによって、反応する魚の種類も違ってもきますよ」とのこと。
音に反応するわけだから確かにその可能性はあるなと思い、早速トライしてもらうことに。

シミランのギンガメアジ(撮影:越智 隆治)

ギンガメアジは、カスミアジやロウニンアジとは少し違う音に反応するそうだ

「コボン」というポイントで、カスミアジの群れを発見!

ショウジさんが、その群れに向かって動きを停止した。
そのとたん、統制の取れていたカスミアジたちの動きに異変が生じ、Uターンしてこちらに向かってきたのだ!
その動きは、まさにぺットボトルで音を出してアジを呼び寄せている時と同じ行動だった。
離れているとただ向かい合っているだけなのだけど、近くにいると、確かにショウジさんから奇声が発せられているのがわかる。

なにをしているのか分からない人からは、マジックか、はたまた、よっぽど魚に好かれている人にしか見えないかも。

シミランのカスミアジ(撮影:越智 隆治)

カスミアジの群に向かって奇声を発している。魚たちが反応しているのがわかる。ヤガラも反応してる?

「小振りの固体が反応すれば、それに連動して、大きめの個体も反応しはじめます」とショウジさん。
これなら、ヨーロピアンインストラクターに文句を言われることもなく、アジを呼び寄せることができる。

ediveの女性スタッフも試したことはあるそうだが、なかなか上手くいかないようだ。
どちらかというと、ぺットボトルを叩く音や、「ぶっ、ぶっ、ぶっ」と音を発するダイブアラートのような重低音に近い奇声なので、声の低い男性の方が効果があるらしいとのこと。

ちなみに自分もトライしてみたが、全くの無反応だった。
どうやら恥ずかしがってやるとダメらしい。
羞恥心をなくしてやることも、成功の秘訣のようだ。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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