アジア初開催! 海に関わる世界の女性たちがつながる「Women4Ocean」ネットワーキングイベントに潜入!
2017年5月30日(火)、海に関わる女性ワーカーのためのNPO法人「Women4Ocean(ウーマンフォーオーシャン)」主催のイベントが、東京・六本木で開催されました。
オランダで発足した団体で、アジアでは初となるネットワーキングイベント。
こちらに潜入取材してきました!
会場には海洋関係の研究者を始め、海の環境保護を行なっている女性や、ダイビング関連の仕事をしている女性、さらには仕事とは関係なく海が大好きな女性たち約30名が参加し、トークショーや交流の時間を楽しみました。
海洋関連の仕事をしている、世界中の女性たちの架け橋となり、その活動をサポート・増幅することを目的としたNPO法人。
世界的なネットワークを作ることにより、男性が占める割合の多い海洋関連の仕事に従事している女性たちをサポートし、コミュニティ意識・活動意識を高める活動を行なっている。
さらに、この先海洋関連の職に就きたいと望んでいる女性や、趣味としてダイビングやマリンスポーツが好きな女性にも、海にまつわる仕事へのインスピレーションを与えるなど、活動の幅を広げていく予定。
国際色豊か!
海好きの女性たちが交流する
インターナショナルな夜
オランダで設立されたNPO法人ということもあり、1/3は外国人のゲストで、会場にはインターナショナルな雰囲気が。
日本人ゲストも英語が堪能な方たちが多く、あちらこちらで英語での会話が飛び交います。
水中レポーターの稲生薫子さんとご一緒しました。
他のゲストも一緒に混じりながら、軽食やお酒をたしなみ、それぞれが海の話に花を咲かせます。
海洋関連の仕事をしている
女性たちのトークショー
場が和んできたところで、いよいよトークショーがスタート。
初めに「Women4Ocean」創設者、Farah Yasmin Obaidullah(ファラ ヤスミン オバイドゥラ)さんから届いたビデオメッセージが上映され、
創設に至るまでや、海に対しての想いが届けられました。
そのあとは、海に関わる仕事をしている4人の女性ゲストが登壇。
1人目のスピーカーはイベントオーガナイザーでもあり、上智大学でサメの保護研究を行なっているMareike Dornhege(マライケ ドンヘゲ)さん。
10年前からイギリスのオックスフォード大学で海のワイルドライフ保護について学んできた彼女。
サメの研究をするために海に潜ることで、環境の変化を目の当たりにしたといいます。
サメは私たち人間と同じように9〜10ヶ月の間、卵をお腹に抱えてやっと1〜2匹が生まれるといったスピードで子孫を繁栄。
このスピードは、他の魚たちに比べると断然に遅いのです。
サメのヒレだけを狙った漁や、狙っていない種類の魚や動物たちが網にかかってしまう「混獲」によって生態系が崩れ始め、今では9割ものサメが減少してしまっているそう。
しかしマライケさんが日本に来てから、持続可能な漁について考える多くの漁師さんに出会い、希望の光を見出し始めたといいます。
過ちから学び、海を持続的に保持し、守っていくという意思が非常に大事であること。
サメを守ることによって海からもらったものを返していきたいということを語ってくれました。
2人目のスピーカーは国際環境NGO グリーンピース・ジャパンの海洋生態系担当 岡田幸子さん。
もともと海や魚が好きだったという岡田さん。
以前は、海に入ることで自分が海の一部、地球の一部と感じることができるスキューバダイビングにハマっていたそう。
スピーチは、過剰漁業がもたらす影響について。
海へのダメージをできる限り少なくし、魚介類の資源を維持していくための活動について語ってくれました。
多くのダイバーに人気のウミガメやイルカ、サメ、マンタなどが、漁法によって混獲されてしまっていること。
太平洋黒マグロ(本マグロ)が絶滅危惧種となっているのにも関わらず、今でもスーパーに並んでいること。
また、外洋など監視の目が行き届かない漁船の労働環境で、虐待や死亡事故が起きていることなど、海では色々な問題が起きているといいます。
このような状況に対して、私たちができることを解説。
まずは魚や水産加工品を買う際に「どういう方法でこの魚が獲られているのか? 漁獲する際に、海や海洋生物に悪影響を与えていないか? 発展途上国の人たちを犠牲にしていないか?」ということを気にかけること。
飲食店で魚などを食べる際には、私たち顧客が同様の質問をお店の方に投げかけることが、お店の方の知識や意識をあげるためにも大切だということを話してくれました。
最近よく耳にする、「倫理的、道徳的」を意味する「エシカル」という言葉。
自然の恵みを頂いて生きている私たちにも、食べるものの背景に意識を向けることが求められています。
人にも海にも優しい、循環・持続可能な「サステナブルシーフード」を増やしていくためにも、日々の暮らしの中でできる小さな行動に目を向けることが大切ですね。
3人目のスピーカーは、イベントオーガナイザーでもあり、フリーランスライターのBonnie Waycott(ボニー ウェイコット)さん。
ライターという仕事を通して、日本の海の魅力を明らかにし、ダイビングや海洋性保護、魚の養殖など、日本がどういう取り組みをしているかを伝えています。
日本でダイビングをするようになり、北海道の流氷ダイビングや、沖縄の海洋生物などを目の当たりにし、日本の海の多様性に気づいたそう。
それを機に、他の国も日本の海洋環境に興味を持つかもしれないと、ブログを書き始めました。
のちに、自らダイビングサイトにコンタクトを取り、記事を書くように。オーシャナにも寄稿していただいています。
今ではダイビングだけでなく、近畿大学のマグロの養殖や海藻養殖についても発信しています。
近年、沖縄の海で潜りたいという外国人ダイバーや、近畿大学のマグロ養殖について海外からの問い合わせも増えていて、海外の方たちが日本に対する興味を持っていると感じているそう。
しかし外国人ライターとして活動する中で、日本が抱える問題に直面することもあるといいます。
そのうちの一つとして、海外からの反響があるものの、ダイビングショップや大学が英語での問い合わせに対応しきれないということ。
また、外国人ダイバーは日本は物価が高いと思っていること。
さらに、海外における日本の海イメージは、捕鯨やマグロの過剰漁業などさまざまなネガティブな課題があるということです。
これらの問題に対してボニーさんは、英語ができるスタッフがいるダイビングショップと連携し、外国人ダイバーにショップを案内。
また、日本のポジティブな面も見てもらえるよう、東北ダイバーのボランティア活動について強調し、その話題が頻繁に普及するように努力しているそう。
最後は、オリンピックなどに向け、海外に日本の魅力を発信し続けることが自分のできることだと語ってくれました。
4人目のスピーカーは株式会社水中造形センター出版部 マリンダイビング 副編集長 後藤ゆかりさん。
後藤さんは雑誌「マリンダイビング」の副編集長として20年以上も活躍。
自身でカメラマンに同行し取材、編集、ライティングまですべてを行っているそう。
他にも、ダイビング機材メーカーや観光局へのインタビューなど幅広い方たちとお仕事をされています。
後藤さんは「仕事をする中での醍醐味は、カメラマンさんが撮ってきた写真を全て見ることができること。それを雑誌掲載用に自分たちで選べること。責任も伴う仕事だけど、やりがいがあって、とても楽しい」。とイキイキとした表情で語り、心から仕事が好きなことが伺えます。
さらには、一人でも多くのダイバーを育て、地球上の素晴らしい海を知ってもらうことが目的だそう。
ただ、「この素晴らしい海を次世代に残すには、知ってもらうだけでなく、マナーの向上やスキルアップも大事ということも伝えていきたい」とも語っていました。
後藤さん個人としては、「Women4Oceanを通して、海外の方々に日本の海の美しさを知ってほしい。また、海外で際立って取り上げられることが多い、日本人がイルカやクジラを獲ったり食べたりすることについて、「多くの日本人ダイバーは環境保護に敏感でそういう人たちばかりではないということも知ってほしい」とも語ってくれました。
それぞれの方法で、海に関わる仕事をされている4人の女性たち。
熱い想いを持って仕事に取り組む姿に、私も刺激を受けました。
そんな中、参加者にも話す機会が設けられいたので、私も含め計4人が仕事のことや海への想いを語りました。
私は、海の環境保護に対しての考えや、それに対してやっていこうと思っている目標についてをスピーチさせていただきました。
スピーチのあとは、改めてネットワーキングの時間が設けられ、参加者たちは思い思いに交流しイベントは終了。
アジア初の「Women4Ocean」のイベントはたくさんの方との出会いをいただき、有意義な時間となりました。
イベントのオーガナイザー、マライケさんに
「Women4Ocean」についてインタビュー
小笠原
「Women4Ocean」とはどんな団体ですか?
マライケさん
スキューバダイバー、研究者、ビジネス、NPO、また仕事でなくても海に関わる全ての女性たちのための団体です。
私たちは海が大好きで、共に調和・共生していきたいと願っています。
男性を排除するということではなく、コアメンバーを女性で構成。
海の環境保護だけでなく、海が好きな人たちのアイデアをシェアし、成長したいと思っています。
小笠原
なるほど。
女性が集まるとパワフルですもんね。
マライケさん
はい。
学会などに参加してもほとんどが男性で、どうしても自信を持てないという場面によく直面します。
でも、女性はすごくいいアイデアを持ち、クリエイティブ。
男性が多い場では言えないような意見などを、出しやすい場を作りたいという団体です。
小笠原
確かに女性がたくさんいるというだけで発言しやすくなったりするものですよね。
どういう思いから設立されたのですか?
マライケさん
海と共生するためには、新しいアイデアがたくさん必要です。
女性はアイデアを持っているけど、大きい声に出しづらい。
今日のイベントは、イギリスから始まり、日本、今後はフィリピンなどでも開催する予定です。
世界中に、海が好きな女性のグループを作りたいと思っています。
小笠原
なるほど。
団体にはどういった方が関わっているのですか?
マライケさん
ダイビングやサーフィンなど海が好きな方から、科学者、NPO、政治家、ビジネス、アクアカルチャー、漁師など本当に色々な方が関わっています。
仕事ではなく、趣味で海に関わっている方も多いので、そんな方たちもウェルカムです。
小笠原
本当にさまざまな方がいらっしゃるんですね。
「Women4Ocean」としての夢や目標はありますか?
マライケさん
世界中の大きなネットワークを作って、その中の素晴らしいアイデアを実現していくことです。
そのために必要な知識や技術、お金、人などのリソースを集めて、繋げ、実際に形にしていくことが私たちの目標です。
小笠原
素敵な目標ですね。
マライケさんご自身はどういう思いで関わられてるのですか?
マライケさん
最初は、なぜ女性だけなのかと思っていましたが、関わっていくことでその意味がわかってきました。
これまで、私のネットワーキングはサメに関わる仕事の人ばかりだったのですが、「Women4Ocean」に関わることで、自分の中にはなかった違う視点から、海についての考え方を知れることが一番嬉しくハッピーです。
小笠原
同じ海好きでも、色々な視点、分野の人たちの意見が合わさることで、思いもよらなかったアイデアが生まれそうですね。
今後の活躍も期待しています。
最後に
「海が好き」という共通の思いを持つ世界の女性たちと触れ合えたことで、海を愛する気持ちに国境はないと感じることができました。
たくさんの人たちが集まることで、お互いに刺激し合い、モチベーションを高め、1人では成し遂げられないことがカタチになっていくエネルギーがうまれていくことでしょう。
海を愛する女性は、ぜひWomen4Oceanの活動をチェック&参加してみてください!