耳抜き不良を治すための道具・オトヴェントとは

スギ花粉症の時期は、耳鼻科外来がものすごく混雑してしまい、診療以外ほとんど何も出来なくなってしまいます。
例年、マリンダイビングフェアも行くことが出来ずに残念です。

そんなわけで、耳抜き治療の連載原稿がすっかり遅れてしまいましたことをお詫び致します。

さて、前回までは、耳抜き不良ダイバーの約97%がオトヴェントで訓練するだけで耳抜きが治ってしまう、というお話をしました。

でも、オトヴェントを使ったことがあるけれど、耳抜きは治らないという方を診療中に時々お見かけします。
そこで、今回からはオトヴェントついてを2回に分けてお話しします。

オトヴェントの由来

オトヴェントは、スウェーデンのスタンガープ博士が考案した自己通気用の医療器具で、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎(滲出性中耳炎 – Wikipedia)の子供達が在宅で自己通気をして治療をする事を目的として開発された、各国で医療特許を取っている医療器具です。

オトヴェントの強さは、外リンパ瘻などの耳への障害が起こらない強さで、なおかつ耳抜きが十分に出来る強さ、言い換えれば耳抜きに必要な強さに設計されている、片鼻で膨らませる風船です。

注意:オトヴェントに類似したもので代用しない

オトヴェントよりも強い風船は、耳に有害です。
内耳を痛めてダイビングが出来なくなる「外リンパ瘻」になる可能性があり危険です。

また、オトヴェントよりも弱い風船は、耳を抜くために不十分な強さです。
ですから、市販の玩具として売られている風船を、オトヴェントと同じように鼻で膨らませることはやめて下さい。

耳抜き練習のためのオトヴェント 耳抜き練習のためのオトヴェント

このオトヴェントは、株式会社名優という医療機器輸入販売会社が日本での販売権を持っており、発売後まもなく、私が初めて大学病院でこの医療器具を見て体験したときに、「これはダイバーの耳抜き治療に最適!」と考えてすぐに耳抜き治療に導入しました。

その数年後、当時のフリーダイビングでの最大水深の世界記録保持者が、世界中のフリーダイバーを集めて講習会を開いたときに、このオトベントを紹介していたそうです。
考えつくことは一緒なんですね!

2年前にスタンガープ博士が来日なさった折、耳鼻科の学会の同じセッションで発表をしたことがありました。
その時に、このオトヴェントをダイバーの耳抜き治療に使用して大変役になっていることをお伝えしたところ、大変ご興味を持って頂けました。
今では、オトヴェントの製造販売会社では、ダイバーに対しての効果が認識されてきております。

通販でも買えるようになったものの…

当院の統計で、約97%の耳抜き不良ダイバーは、オトヴェントを使って訓練すれば耳抜きが治ってしまうことが分かったので、耳管機能検査はしなくてもいきなりオトヴェントで訓練をして、その結果耳抜きが治らなかった人だけ、潜水医学に詳しい耳鼻科へ受診すれば済むという結論に達した訳ですから、通販でオトヴェントを販売できないものかどうかを名優さんと話し合いました。

そして今では、通販で簡単に手に入るようになりました。

ですが、冒頭でお話しした様に、通販やダイビングショップで購入はしたものの、全く効果がないという方がたくさんクリニックに来るようになったのです。
その方達の耳管機能検査をしてみると、残念なことに、オトベントの訓練による「バルサルバ法のやり方」を全く習得できていないのです。

簡単に言えば、オトヴェントは単に風船を鼻で膨らませているだけで、耳が抜けるようになる「治療器具」だと勘違いしているのです。
あくまでも、最良の強さで耳抜きを行うことが出来る様になる「訓練用具」だということにご注意下さい。

次回の連載では、具体的なオトヴェントの使用方法についてお話しましょう。

フロリダのケーブダイビング

上下幅が小さいために、ケーブダイビングにはうってつけのリブリーザー、rEvo。rEvoシリーズ最小軽量コンパクトのrEvo microが私の愛用機種(モデル:筆者)

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PROFILE
医大生時代にダイビングと出会いのめり込み、ダイビングのために時間とお金を捻出するために、他の趣味をどんどんやめてしまう。
クリニック開業後、好きが高じてダイビングインストラクターになり、現在は、テクニカルダイバーとして、ケーブダイビング、リブリーザーダイビング(rEvo)、大深度ダイビング(-100m越え)などの潜水を行なっている。
また、全国から潜水医学の講演依頼があり、ダイバーおよび耳鼻咽喉科医へ正しい潜水医学の普及をすべく活動。
その後、58才で耳鼻科開業医を引退し、第2の人生でメキシコ移住。メキシコセノーテを潜り三昧の日々を送る。
 
潜水歴30年、潜水本数約3000本。
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