「鼻が悪いから耳が抜けない」も「耳管が細いから耳が抜けない」も都市伝説!?~続・耳抜き不良は治ります!~

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前回は、耳抜き不良の診断についてお話ししました。

今回は、耳管機能検査で耳抜き不良があると診断された場合の治療の流れをお話しします。

フローチャートの図をご覧になって下さい。
当院過去16年間に耳抜き不良で受診されたダイバー約6000人のうち、最後まで治療を完結できた5670人の統計です。

■耳抜き不良治療のフローチャート

耳抜きのフローチャート

耳管機能検査をして「へたっぴ」だった人は全体の約97%で、オトベントで訓練すれば、実に約96%がそれだけで耳抜きができるようになってしまいます。

また、滅多にいないのですが、嚥下法(つばを飲む方法)で抜けなくて、バルサルバ法はとっても上手にやっているのに、耳抜きができない人もいます。
あるいは、オトベントを用いてバルサルバ法を訓練して、理想的な耳抜き方法を習得したのに抜けない人もいます。

そういう人は、慢性鼻炎であるアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の検査・治療をします。

オトベントで理想的なバルサルバ法の耳抜きを習得したがそれでも耳抜きができない人、あるいは耳管機能検査ではじめからバルサルバ法が上手だったけれど耳抜きができなかった人は、全体の4.1%です。

この人達だけが、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の治療を必要とし、治療によって耳が抜けるようになるのです。
ですから、「鼻が悪いから耳が抜けない」というのは、ほとんどのケースで都市伝説と言えるのです。

これらの人は、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の重症度と比例しないのが不思議です。
とても軽症の人でも耳抜き不良の原因にもなるし、逆にかなり重症の副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎でも、耳抜きがとてもよくできる人もいます。

逆に言えば、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がいくらひどかろうが、耳がよく抜けていれば(日常に支障がなければ)どうでもいいことで、放置してもよいわけです。
ですから、鼻の治療を検討するよりも先に、オトベントで耳抜きの訓練をするのです。

まとめると、以下のようになります。

  • 耳抜き不良の人のほとんどが、バルサルバ法のやり方が下手
  • 嚥下法は訓練が困難だが、バルサルバ法はオトベントで訓練が可能
  • 耳抜き不良の人にオトベントを使って訓練すると、約96%の人の耳抜きが治る
  • 鼻が悪いから耳が抜けない人は、たった4%しかいない

注意したいことは、耳鼻科でよく鼻から耳へ風を通す「耳管通気治療」は、耳抜き不良を治す効果はまったくないことです。
これは、機械によって耳管を通気するのですが、それによって耳管が広がることはありません。
人にやってもらう受動的耳抜きと、自分が行う能動的耳抜きは別物です。

また、耳管が細いから耳抜きが悪いと思っているダイバーや耳鼻科医が多いのですが、太さもまったく関係ありません。

ほとんど耳管が詰まっているような人は、大人になるまでのあいだに、慢性中耳炎になっています。
現在、鼓膜が正常の人は、必ず耳抜き不良は治るのです。
耳管の太さではなく、耳管機能が問題になるのです。

次回は、オトベントの具体的な使用方法についてお話しします。

フロリダのケーブダイビング(三保仁)

フロリダのケーブは、スクーターとマルチステージを必要とする長いものがある。耳抜きが悪いと、入り口に帰って来られない(モデル:三保仁)

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PROFILE
医大生時代にダイビングと出会いのめり込み、ダイビングのために時間とお金を捻出するために、他の趣味をどんどんやめてしまう。
クリニック開業後、好きが高じてダイビングインストラクターになり、現在は、テクニカルダイバーとして、ケーブダイビング、リブリーザーダイビング(rEvo)、大深度ダイビング(-100m越え)などの潜水を行なっている。
また、全国から潜水医学の講演依頼があり、ダイバーおよび耳鼻咽喉科医へ正しい潜水医学の普及をすべく活動。
その後、58才で耳鼻科開業医を引退し、第2の人生でメキシコ移住。メキシコセノーテを潜り三昧の日々を送る。
 
潜水歴30年、潜水本数約3000本。
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