ダイバーなら知っておきたい、6つの耳抜き法

耳の圧外傷(提供:DAN JAPAN)

耳の圧外傷(提供:DAN JAPAN)

以前にもお話ししてきましたが、耳抜き不良が起きると、耳の痛みが起きるだけではなく、鼓膜や鼓膜の内側の中耳腔に出血を起こして、中耳気圧外傷に陥ったり、もっとひどい場合には、外リンパ瘻という一生耳鳴りや難聴の後遺症を残してしまう (生涯ダイビングは望ましくない状態) 可能性があるのです。

ですから、もちろん耳抜きは重要です。
そんな耳抜きの方法にはどんなものがあるのかと時々質問を受けます。

ビギナーの方への知識としてはもちろんのこと、指導員クラスは各種耳抜きの方法を知っていて、エントリーダイバーに対してあらゆる方法を説明できるようになっているべきだと思います。

いろいろと試してもらって、一番あった耳抜きを探してもらうのが良いと思いますので、改めて今回ご紹介したいと思います。

バルサルバ法

鼻をつまんで、声帯を開いた状態で、肺の空気を鼻から息を吐き出そうとする動作を行う方法で、その肺の圧力で耳管を開放させる方法。
ダイバーが汎用する耳抜きのひとつです。
唯一、確実に訓練が可能な耳抜き方法です。

嚥下法

嚥下(飲み込みの動作)によって、口蓋筋の一つである口蓋帆帳筋を収縮させ、耳管を開放する方法。
ダイバーの耳抜きで、バルサルバ法の次に汎用されています。

生まれつき、これで抜ける人と抜けない人がいます。
訓練によってできるようになる場合がありますが、その成果は不確実です。

ダイビングは湿度がほぼ0%の乾燥した空気をタンクから呼吸しているので、慣れないと口が渇くために、頻繁な嚥下動作ができない者もいます。

トゥインビー法

鼻をつまんで嚥下動作を行う方法で、嚥下法に限りなく近い耳抜き方法です。

嚥下動作によって、口蓋帆帳筋を収縮させて耳管を開放させるのと同時に、軟口蓋が挙上する動きで鼻孔から少量流出する空気を、鼻をつまむことによって耳管へ送り出す方法です。

フレンツェル法

鼻をつまんで声帯を閉じ、舌根(舌の奥)を挙上する動作を行うことによって耳管へ空気を送り込む方法。

バルサルバ法を習得したダイバーは、経験を積むに従って自然に習得することができる耳抜き方法で、耳への負担が少なく、最も安全かつ理想的な耳抜き方法です。

口蓋筋群を動かす

あくびをかみ殺す動作、顎を動かす、歯を食いしばるなど。

嚥下を行わないで口蓋帆帳筋を収縮させて耳管を開放する方法であり、頻繁に嚥下動作を行わないためにやりやすいが、一部の者にしかできない方法で、訓練が不可。

オートマチック

何の動作もせずに深度を下げても、自然に中耳腔への圧平衡ができる状態。持って生まれた体質といえる。
やはり訓練は不可。

現在中耳の病気がなくて、鼓膜が正常の者であれば、必ずといって良いほど耳抜きは治せるというのが、私の持論。

バルサルバ法はほぼ全員が抜けるようになる唯一の方法です。

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PROFILE
医大生時代にダイビングと出会いのめり込み、ダイビングのために時間とお金を捻出するために、他の趣味をどんどんやめてしまう。
クリニック開業後、好きが高じてダイビングインストラクターになり、現在は、テクニカルダイバーとして、ケーブダイビング、リブリーザーダイビング(rEvo)、大深度ダイビング(-100m越え)などの潜水を行なっている。
また、全国から潜水医学の講演依頼があり、ダイバーおよび耳鼻咽喉科医へ正しい潜水医学の普及をすべく活動。
その後、58才で耳鼻科開業医を引退し、第2の人生でメキシコ移住。メキシコセノーテを潜り三昧の日々を送る。
 
潜水歴30年、潜水本数約3000本。
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