「Honda」がビーチクリーン活動を通して目指す未来。“素足で歩ける砂浜を次世代へ”

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誰もがその名を聞いたことがあるであろう、日本が世界に誇るモノづくり企業「本田技研工業株式会社(以下、Honda)」。そのHondaが地球環境保全活動の一環として、ビーチクリーナーと名付けられた全地形対応車を用いて行うHondaビーチクリーン活動が15周年を迎えた。今回、Hondaの社会貢献推進室の田中真二氏と新谷俊明氏にビーチクリーン活動だけでなく、地球環境保全活動の根底にある想いについて伺った。

15周年を迎えたHondaビーチクリーン活動

15周年を迎えたHondaビーチクリーン活動

「“人”と“技術”で世の中に役立つモノをつくりたい」、地球環境保全活動の根底にある想い

地球環境保全活動に力を入れるようになったのは、Hondaが創立50周年を迎えた1998年。当時、時代とともに地球環境の保全の必要性が見直されはじめ、企業市民であるHondaにとっても、全ての企業活動は地球と共生していく必要があるという考えが発せられるようになった。

「日本各地にあるHondaの事業所や工場では、1998年よりも前から週末に社員や近隣住民と一緒に清掃活動をしていました。この活動を単発的なものではなく、継続的に行っていくためにも、会社としても社会貢献活動の理念を改めて定めることに。それが『地球的視野に立ち「商品・技術」を通じて社会に貢献する』、『良き企業市民として地域に根付き、社会的責任を果たす』、『次世代のために心豊かで活力のある人と社会作りに努める』というものです」。

「今私たちは、環境負荷を減らすために2つの方向性を考えています。1つ目は、“事業として商品で環境負荷を減らすこと”。移動の手段として便利なクルマやバイクは、少なからず環境に負荷を与えているという事実があります。そこでHondaは環境への配慮もできるようにEV車の開発にも積極的に努めています。2つ目は“従業員の気持ちを育むこと”。全社をあげて環境保全に取り組むことで従業員自身も道端にごみが落ちていたら拾うという意識を持つようになってくれると考えています」。

Hondaは「豊かな自然を次世代に」という想いと、創業者である本田宗一郎氏から受け継がれてきた「“人”と“技術”で世の中に役立つモノをつくりたい」という信念で地球的視野に立ち森林保全活動、里地里山保全活動、Hondaビーチクリーン活動を積極的に推進している。

2006年に開始したATVを用いたビーチクリーン活動

Hondaがビーチクリーンを始めたワケ

きっかけは1999年のある日。全地形対応車「ATV(All-Terrain Vehicle)の走行テストを行うため砂浜を訪れたHondaの技術者が目にしたのは、ごみが散乱する衝撃的な光景。そのとき、技術者の胸にはある想いが湧き上がってきた。「Hondaのモノをつくりだす『技術力』と独創的なアイデアを持つ『人』の力で、何かできないだろうか」。そこから砂浜をきれいにするチャレンジが始まった。

ごみ回収用の機材を開発する中で、幾度となく立ちはだかる壁。走行テストで1mも進まなかったこともあったが、2006年、ついに開発が実を結びHonda従業員やOBなどわずか15人の「ビーチクリーンキャラバン隊」として活動を始動した。現在では、全国のHondaの自動車販売店やグループ会社、地域住民へ協力の輪が広がり、これまで全国200ヵ所以上で実施し、7,000人が参加、回収したごみの総量は490トンにもおよぶ。

クルマやバイクをつくるのも、汚れた砂浜をきれいにするのも、常に「“人”と“技術”で世の中に役立つモノをつくりたい」という想いがHondaの従業員の心の中にあるのだ。

「Hondaビーチクリーナー」とは

砂浜も走れるATVを使って、独自開発した機材(クリーナー)を牽引し、ごみを回収するHondaオリジナルのシステムが「Hondaビーチクリーナー」だ。ATVは低圧タイヤを使用し、砂浜の生き物などにも配慮。体重60kgの人が立った時の荷重とそれほど変わらず、砂浜への負荷をかけないように配慮されている。

「牽引する機材にはごみをかき集める熊手の役目を持つ『サンドレーキ』や砂とごみを分けるふるいの役目を持つ『振動式スクリーン(通称:バタバタ)』などがあります。サンドレーキには砂の中を掻く10cmのピンがついていますが、この長さは砂浜に埋まるウミガメの卵に影響しない長さにしています」。

振動式スクリーン

振動式スクリーン

まずは手拾いから始まるビーチクリーンの活動内容

Hondaが行うビーチクリーンは、いきなり大型のバギーで砂浜を駆け巡り、ごみを回収していくのではなく、“人の手”による手拾いから始まる。

「自分の手でごみを拾うことで『ごみを捨てない、見つけたら拾う』という意識をみんなに持ってほしいからです。手広いが済んだエリアでいよいよビーチクリーナーが稼働します。人の手では拾いきれない砂に埋もれたごみを効率よく回収していき、最終的には自治体のルールに従ってごみを分別します」。

まずは手拾いから

まずは手拾いから

未来を生きる子どもたちへ、安心して素足で駆け回ることができる砂浜と、ごみを捨てないで見つけたら進んで拾おうとする心。そのためにHondaは楽しみながら環境について考える授業も地域の子どもたちへ提供している。

地域の子どもたちとの環境授業

地域の子どもたちとの環境授業

 障がい者も一緒に!「Hondaビーチクリーン・ユニバーサルプロジェクト」

大分県にあるHondaの特例子会社「ホンダ太陽」。ここは「障がいに関係なく、誰もが活躍できる社会にしたい」というHonda創業者の強い想いから誕生し、多くの従業員が生き生きと働いている場だ。昨年、ホンダ太陽が40周年を迎えたことをきっかけに、Hondaビーチクリーン活動とタッグを組み、「Hondaビーチクリーン・ユニバーサルプロジェクト」を計画していた。砂浜にビーチマットを用意し、車イス利用者も砂浜に入ってレクリエーションやビーチクリーン活動ができるようにするというものだ。

車椅子を使用する障がい者にとって、砂浜を移動することはそう簡単ではないが、もしそれが実現できたら喜んでくれるのだろうか?前例のないこの取り組みを開催することを誰もが心待ちにしていたが、コロナによる影響で昨年予定していたイベントは延期に。今年こそは、なんとか開催したいと田中氏らは語る。

目標は「ビーチクリーン活動をやらなくて良い世界」

現在のビーチクリーナーは全国200ヵ所以上の砂浜の清掃活動を支えている。しかしそうなった今でも、Hondaにとって変わらないのは、「ビーチクリーン活動をすべて機械任せにすべきではない」という想い。機械はあくまでサポート役で、参加者一人ひとりが自分の手でごみを拾うことがなにより大切であり、そうすることで「砂浜をきれいに使おう」という気持ちが育まれると考えているからだ。“人”の力をHondaの“技術”が助けるこの活動は、今後も進化を続けていく。

昨年15周年を迎えたHondaビーチクリーン活動。ここまで続けてこられたのは、多岐にわたる関係者の協力と、そして徹底した安全管理を行ってきたからこそであることも忘れてはいけない。日本が世界に誇るモノづくり企業に根付く「“人”と“技術”で世の中に役立つモノをつくりたい」という想いに今後も期待し、ごみの無い砂浜を全ての人と一緒に目指していきたい。

協力:本田技研工業株式会社
Hondaのビーチクリーン活動|Honda公式サイト
※今後のビーチクリーン開催予定については現在調整中。4月以降に発表予定。
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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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