西表島のビッグスポット・オガン!
Iriomote / 西表島
中村卓哉の心を動かした超ビッグスポット!
Iriomote / 西表島
中村卓哉の心を動かした超ビッグスポット!
- Photo&Text
- 中村卓哉
- Special Thanks
- ダイビングチームうなりざき西表
- Design
- 中村孝子
静と動のコントラスト。オガンの2つの顔
時に根にしがみつき激流に流されるのをこらえながら、回遊魚の群れを待つ。
そんなドリフトダイビングのスタイルはオガンの象徴的なイメージとして周知されている。
真横に流れるダイバーの吐くエアー、鯉のぼり状態でガイドロープにつかまるダイバー達、静寂をかき消すように目の前に現れる大迫力のイソマグロやカスミアジの群れ。
うなりざきだけが案内出来るという「三ノ根」というポイントでは、時にカスミアジの1000匹の壁に遭遇出来るという。
残念ながら今回の取材ではその10分の1にも満たない数のシルエットを確認出来たくらいであったが、ここでは2m超のイソマグロの群れに遭遇するなど明らかに唯一無二の可能性を感じるポイントであった。
このように、オガン=動という印象は潜ったことの無い方でも写真を見ていただければ直ぐに伝わるだろう。
しかし、オガン=静というもうひとつの顔があることは案外知られていない様に思う。
静かなオガンのイメージを楽しめる場所のひとつ「西のスポット」というエリアがある。
2本潜った後のお昼時、風よけで停泊しながらお弁当を食べる浅場のポイントだが、私はこの場所がもの凄く気に入った。
晴天の日に潜ると、真っ白な砂紋に自分の影が映し出され思わずそのまま漂っていたくなる。
ぽっかりと脱力して海とひとつになる感覚、真上にぽっかりと浮いていく呼吸、ここにはまさにオガンのもうひとつの優しい顔が存在する。
そして水深5mほどの浅場のアーチをくぐって行くと、美しい洞窟まで存在する。
「光の宮殿」と名付けられたこの洞窟の中にはその名の通り、神々しくもある美しい光のシャワーが燦々と降り注いでいる。
静と動のコントラストは、オガンを唯一無二の聖域とまで感じさせる大きなファクターなのかもしれない。
山の栄養が育むサンゴの森と小さな命
西表島の海は実にバリエーションが豊富だ。
サンゴ、藻場、砂地、地形、大物ポイント…etc ダイビングで楽しめる様々な環境要素を集約した海なのである。
広大な熱帯雨林が造り出す栄養分はいくつもの川を通してダイレクトに海に注ぎ込まれ、多種多様な生態環境を造り出しているのである。
とりわけ崎山の「シークレットガーデン」のサンゴ礁の美しさは奇跡と言っても過言ではない。
青や黄色に色づくエダサンゴの森は、無限に続くハンモックの様に、デバスズメダイやネッタイスズメダイなどの魚達を優しく包み込む。
このスケールのサンゴ礁を見る事の出来る場所は、世界的にもいまや殆ど存在しないのではないだろうか。
エダサンゴの森とガレ場の境界線がハッキリと分かれた場所も存在し、サンゴの隙間に暮らすデバスズメダイ達の産卵場ともなっている。
サンゴは死んでからもガレ場や砂地といった新たな環境を生み出す事で、普遍的に命を育んでいるのである。
また、内湾性のハゼや甲殻類などマクロ生物が豊富な「T’s エリア」は、汽水域という特異な環境によって希少種達が数多く棲み分けしている。
沖縄本島では辺野古周辺でしか見る事の出来なくなってしまったネオンテンジクダイもここでは数多く生息し、口内保育のシーンにも出会う事が出来た。
昨今、沖縄全域を見ると沿岸部は都市化などにより、マングローブ、干潟などの生き物達の大切な生育場が失われつつある。
ここ西表島の広大なジャングルの恵みはそんな世の中の流れとは完全に逆行し、今や島全体が生き物達のオアシスとなっている。
じっくりと撮影をするなら「外離南」もお勧めだ。
このポイントはワイドもマクロもどちらも素晴らしい。
浅場のエダサンゴにはノコギリダイとアカヒメジが塊で群れ実にフォトジェニックだ。
オーバーハング状の崖を下るとニチリンダテハゼ、ハナヒゲウツボの幼魚、ナミスズメダイの産卵シーンなども見る事ができた。
このポイントは時間がいくらあっても足りないので、今回の取材では数回訪れた。