プロダイバーのビジネスリスクを考える「ダイビング事故の法的責任と対策」プロダイバーに先行発売
ダイビングを職業とするプロダイバーのビジネスリスクについて書かれた「ダイビング事故の法的責任と対策」(商品スポーツリスク研究会)が発売されました。
そこで、著者で、本サイトでも連載中の中田誠さんに、この本を出版した動機についてお聞きしました。
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中田さんといえば、消費者(ダイバー)側からダイビング事故にアプローチしてきたという印象がありますが、この本ではプロダイバーに向けて書いているのはなぜでしょうか?
中田
長年、ダイビング事故に関わってきて、私の研究してきた”商品スポーツ”という概念(編注:商品スポーツとは、「スポーツを楽しむ機会とノウハウを、一般消費者向けに販売するサービス」)も徐々に認められるようになってきました。
つまり、「ダイビングは自己責任で潜るべきもの」という一辺倒の考え方では、ダイビングの事故が起きた時に、自分をプロテクトできない現状になってきています。
これまで、プロダイバーやダイビング業界では、ダイビング事故の情報公開は、理解が得られにくい傾向にありました。
ダイビング事故=ネガティブ=ゲストが減るという意識が働き、それを隠ぺいすることになり、結果的にプロの学ぶべき機会が奪われる……という悪循環。
そして、プロダイバーの方は情報が足りないばかりに、ある日突然罪を問われる事態に直面し、人生の計画を変更せざるを得なくなっていました。
だからプロの方々は、ダイビングビジネスの最大のリスクは人身事故であることを認識し、実際にどんな事故が起きているのか、事故の予防には何が必要なのかという情報資源をこの本から手に入れて、安全に、そして安心してビジネスをしていただきたいと思っています。
それは、ひいてはサービスを受ける一般ダイバーの安全にもフィードバックされ、結果として事故が減ることにつながることでしょう。
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ダイビングは、自然を相手にする遊びですから、リスクを理解し、自己責任で遊ぶというのも正論だと思いますが。
中田
考えてみてください。
もし、ご自分の家族や友人が、ダイビング以外の、一般の人向けのサービスを受け、そこで死に至るような最悪の結果になった時のことを。
そのときサービス提供業者から「それは、サービスを受ける側の自己責任だ」と主張されたら、簡単に納得できますか?
PL法(製造物責任法)では「製造物の欠陥により損害が生じた場合、製造業者等の損害賠償責任について定めて」いますが、役務(編注:他人のために行う労務やサービス)に対しても、法的責任が発生するというのが商品スポーツという考え方です。
今や事故発生率の上昇は国も関心を寄せるに至り、商品スポーツというサービスも、より一層、モノとしての製品と同じように、質が管理され、安全が保証されることが当然ということになっていくのではないでしょうか。
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本の制作過程で、こだわった点などありますか?
中田
プロダイバーの方々に、より気楽に読んでいただけるようにと心がけました。
また、付録として付けた「リスク管理ハンドブック」は、プロが日常的に使いやすいよう、より簡潔にまとめています。
ところで本書は、まずはダイビングを職業とするプロダイバーの皆さんに読んでいただきたいとの思いから、プロダイバー限定で先行発売することにしました。
3月中は消費税も5%のままですし、シーズン前のこの機会にぜひ読んでいただけたら幸いです。
「ダイビング事故の法的責任と対策」
(6,500円+税+送料)
先行・一般販売 申し込み先
kenkyu0401@gmail.com
以下の情報をご記入の上、お申し込みをお願いします。
※その後の手続きを返信いたします。
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「ダイビング事故の法的責任と対策」 目次
第1部 ダイビング事故の法的責任と対策
第0章 Q&Aでわかるこの本の概要……16
1. ダイビングの事故は自己責任? ……16
2. 想定外の事態でも業者に責任が? ……17
3. 事故の三つの要因……18
4. いつでも「現場」が悪いのか? ……20
5. 裁判とビジネスの実際……21
第1章 意識と認識……24
1. 「自己責任」に対する認識のズレ……24
2. 「想定外」とリスクコントロール……25
ダイビング業界の死亡事故率は低くない/「想定外」のリスク管理がビジネスのカギ
3. 現実問題のリスト……28
4. プロダイバーと社会の常識の違い…..29
5. 安全なくしてサービスは提供できない……29
6. 統計にみるダイビング事故……30
ハインリッヒの法則と表に出ない事故の現実
7. プロの仕事……33
ダイビングのプロが問われる法的責任「注意義務」/訴訟には刑事と民事がある/裁判のリスクを避けるには?
第2章 ダイビングの事故リスク……37
1. 事故を防ぐ4つのポイント……37
2. 事故の発生……38
(1)ダイビングの事故の特徴……38
(2)救命曲線……39
⒜ドリンカーの救命曲線/⒝カーラーの救命曲線
(3)5秒テストの壁……41
(4)救命曲線が示したデータと事故の実際……42
実例 アドバンス講習死亡事件/⒜事故時の全体の潜水記録
3. ダイビングビジネスにおける消費者規模の推移─伊豆半島の統計から……45
(1)集計データの結果と仮説……46
(2)中高年ダイバーのリスクの実態……48
負の連鎖を防ぐために
(3)再教育の必要性がビジネスチャンスとなる……50
(4)事故の状況について……50
2010年の40歳以上の事故者とは?
(5)「六本木ヒルズ回転ドア事故」から分かること……51
4. ダイビング業界が知っているリスクと事実……53
(1)報告書1 『21世紀・日本のダイビング業界はどうあるべきか』……53
⒜危険の認識/⒝ダイビングのプロのポイント/⒞Cカードビジネスについて
(2)報告書2 『レジャーダイビング ビジネス・ガイドライン』……56
⒜カードビジネスの過大表現や誤解を招くビジネスを禁止する内容/⒝安全性を語って客を集める際の表現方法への注意/⒞講習料を無料とするビジネスと抱き合わせ商法の展開について/⒟ 「報告書2」におけるCカードビジネスについて
(3)通達3 『各関係団体あて スキューバダイビング中の事故防止にかかる安全 対策について』……60
(4)日本語版『The Law and the Diving Professional』……61
⒜認定責任/⒝Cカードビジネスの品質について/⒞指導団体」の認定及びブランドの責任/⒟ まとめ
第3章 法的責任とリスクマネジメント……66
1. 商品ダイビングのリスク……66
(1)ダイビングの商品形態と契約……67
⒜三つの形態/⒝減圧症に関して提供する役務の違い/⒞講習をファンダイビングの中で行うこと/⒟契約変更と免責の否定
(2)「危険の引き受け」……71
2. インストラクターの刑事責任とは……72
(1)アドバンスコース講習生死亡事故……73
■判例解説─常時監視義務とは何か
(2)サバチ洞窟事件……75
■判例解説─潜水計画管理者責任
3. 最近の刑事裁判の判決傾向 ~最高裁判決の浸透~……79
(1)唐津事件……79
■判例解説─安全は効率に優先する
(2)洲本事件 ……82
■判決解説─適切な指導人数とは?
(3)白浜事件……87
■判決解説─初級者講習は1対1しかありえない
(4)沖縄パニックダイバー死亡事件(ファンダイビング)……89
■判決解説─パニックは予見できる
(5)奄美大島事件……92
■判決解説─無責任な「自己責任」論
(6)南城市体験ダイビング死亡事件……96
4. インストラクターの民事責任とは……98
5. 判例に見る民事責任(損害賠償責任)の実際……100
(1)越前沖沈船ダイビング事故……100
■判決解説─司法が示した業者側の注意義務
(2)大瀬・重度後遺障害受傷事故……103
■裁判の解説─低品質サービスの代償は重い
(3)沖根事件……109
■裁判の解説─元請け/下請け間の責任の所在とは
(4)大瀬事件(ファンダイビング)……117
■裁判の解説─これこそがトンデモ裁判(一審の地方裁判所が不適切な証拠によって操られた事例)
(5)他のダイビング事故の判決……120
(6)運輸安全委員会が報告したダイビング事故……121
6. 「ダイビングツアー参加者海洋転落溺死事件」を
ケーススタディとして見る……123
資格認定を出す会社に責任はあるか/考えてみましょう
7. その他のスポーツで、商品スポーツのあり方をふまえた判決……126
─業者の責任が認められた事例から
(1)スカイダイビング落下死亡事故……126
(2)商品スポーツ事故の責任の共通性……129
⒜ ツアー登山事故 1 白馬岳遭難事故/⒝ ツアー登山事故 2 屋久島沢登りツアーで死傷事故/⒞ 熱気球事故 熱気球が急降下着陸
第2部 ダイビングビジネスとリスクマネジメント
第1章 ダイビングビジネスを考える……132
1. ダイビング事故に対するリスクマネジメントの必要性……132
(1)商業スポーツや学校体育との比較……132
(2)危険の引き受け……134
(3)商品スポーツの品質……135
(4)無理な免責の要求はかえってマイナス……135
(5)消費者が商品を買う理由……136
(6)商品スポーツとしてのダイビングビジネスの仕組み……138
(7)商品スポーツの優先事項……138
(8)ダイビングビジネスにおけるリスクマネジメント……139
(9)誘惑の落とし穴……140
「法律を守ろうなんて、気持ち悪い」/安全管理はすべての人の利益となる
(10)法的責任の問われ方の流れ……141
(11)事故と現実……142
内実のある「資格」のために/なぜ保険料は上がり続けているのか/社会と法を知ることでステージを上げる
(12)リスクはリスクを招く……144
(13)リスク情報は教えられるべきか……146
2. 業界外の問題……146
(1)消費者側の問題……146
(2)弁護士や法学者の問題……148
弁護士選びのコツは
3. 願い……149
第2章 データと情報……150
1. 海外における事故……150
(1)海外における水難事故多発の実態……150
海外は日本のようにはいかない/海外に行く客にもアドバイスを/遊泳に関する事故
・2009~2012年の4年間に水難事故が起きた場所
(2)海外における日本人ダイバーの事故……153
・2009(平成21)年~2012(平成24)年
(3)国内の事故……155
■附録:リスク管理ハンドブック……159
知らなければならない、ダイビングビジネスのリスクマネジメント
特集■事故と法的責任
column 01「商品スポーツ」……9
column 02「ハインリッヒの法則から見るダイビング事故のリスク」……32
column 03「ダイビングの『安全』を数値化すると?」……35