ふるさと納税で屋久島の海をきれいに! ダイバーたちが世界遺産の海を次世代に繋ぐ

映画「もののけ姫」のモチーフにもなった原生林、樹齢千年を超えると言われる屋久杉、木々の間を流れる川…豊かな自然あふれる屋久島は、1993年に日本で初めてユネスコ世界自然遺産に登録され、今年で30周年を迎える。そんな屋久島で昨年の10月と11月に川原・海岸・海中の清掃が行われた。屋久島スキューバダイビング事業者組合に所属する事業者と地元漁師及び船主会(ダイビング事業協力会)が協力し、合計3日間の清掃で1㎥のトン袋6袋分のごみを回収した。人件費やごみ処理費などの活動費用には、ふるさと納税で集まった屋久島町への寄付金が充てられている。山に注目がいきがちな屋久島だが、なぜ今回屋久島町として水辺の環境保全を実施したのか。その背景や清掃活動の様子に迫る。

ふるさと納税で海をきれいに
清掃活動の背景

屋久島は山や森の存在感が大きいが、実は海も大きな見どころの一つだ。黒潮が当たる場所に位置しているため、島の周辺には豊穣な海が広がっている。日本で10ヶ所しかないユネスコエコパーク(※)にも登録されており、中でも唯一海域が含まれているのは屋久島だけ。その海の魅力は徐々に広がり、ダイビングやシュノーケリングを楽しむ方も増え、海を目的に屋久島に来るという方も。

※ユネスコエコパーク:豊かな生態系を有し、地域の自然資源を活用した持続可能な経済活動を進めるモデル地域。自然保護と地域の人々の生活とが両立した持続的な発展を目指すもので、2022年6月現在134か国738地域、うち国内は10地域が認定されている。

一方で、これまでは環境保全に関する行政の予算は山や森の保全を目的としたものが多く、海の環境保全にはなかなか取り組めていない状況だった。しかし、ふるさと納税の寄付金により、海の環境保全として清掃活動が実現できることとなった。屋久島への寄付のほとんどが環境保全を希望するものだったのだ。海岸・海中清掃を実行できる地元のダイビング事業者が増え、協力体制ができてきたことも大きなきっかけとなった。

また、屋久島には世界遺産登録された年に制定された「屋久島憲章」というものがある。

屋久島憲章

  1. 1 わたくしたちは、島づくりの指標として、いつでもどこでもおいしい水が飲め、人々が感動を得られるような、水環境の保全と創造につとめ、そのことによって屋久島の価値を問いつづけます。
  2. 2 わたくしたちは、自然とのかかわりかたを身につけた子供たちが、夢と希望を抱き世界の子供たちにとって憧れであるような豊かな地域社会をつくります。
  3. 3 わたくしたちは、歴史と伝統を大切にし、自然資源と環境の恵みを活かし、その価値を損なうことのない、永続できる島づくりを進めます。
  4. 4 わたくしたちは、自然と人間が共生する豊かで個性的な情報を提供し、全世界の人々と交流を深めます。

第一節に「水の保全と創造」と記されているように、屋久島は「ひと月に35日雨が降る」といわれるほど降水量が多く、水の豊かな島だ。標高1,000mを超える山々に降り注いだ雨は川となり海に流れ、蒸発し雲となりまた雨となる。この山川海の繋がりが豊かな自然をもたらし、観光や漁業、水力発電など人々の生活にも恩恵を与えている。次世代にその豊かさを引き継ぐためには、循環の中にある海と川を守ることは必須なのだ。

清掃活動の様子

海の清掃が行われたエリアは島の北側に位置する一湊(いっそう)漁港の周辺。島の周りにダイビングポイントは点在しているが、中でも一湊漁港は屋久島ダイビングの拠点となっている場所で、多くのダイバーがこの港から船に乗ってダイビングに向かっている。

最初の海岸清掃は10月、八筈嶽(やはずだけ)神社前の海岸で行われた。一湊漁港から船で5分もかからない場所だ。地形的に漂着ごみが溜まりやすい場所だが、陸路からだと車で近くに行けず、ごみの回収が困難だったため、船で海岸に向かい、回収したごみも船に引き揚げられた。

船に繋いだロープ沿いにごみの詰まったトン袋を運搬

船に繋いだロープ沿いにごみの詰まったトン袋を運搬

漁具やペットボトルなど、トン袋3つとメッシュバッグ2つ分のごみが海岸だけで回収された

漁具やペットボトルなど、トン袋3つとメッシュバッグ2つ分のごみが海岸だけで回収された

海中清掃は海岸清掃の翌日と11月に分けて合わせて二日間、ダイビングポイントでもある「お宮前」、「タンク下」、「志戸子(しとこ)」、そして港の堤防周辺の計4ヶ所で行われた。

台風で運ばれてきた木端に混ざりプラスチックごみが

台風で運ばれてきた木端に混ざりプラスチックごみが

サンゴに絡まる釣り糸も多くみられた

サンゴに絡まる釣り糸も多くみられた

エリアによってごみの量や種類に違いが見られた。全体的には漂着ごみと思われるプラスチックごみと漁具が多かったが、堤防周りには島から流出したであろうタイヤやハンドル、一升瓶、釣り糸などが多く見られた。

「お宮前」、「タンク下」周辺で回収されたごみ

「お宮前」、「タンク下」周辺で回収されたごみ

「志戸子」、一湊漁港堤防周辺で回収されたごみ

「志戸子」、一湊漁港堤防周辺で回収されたごみ

10月の海中清掃の後は宮之浦川の川原での清掃が実施された。上流から流れてきたであろう部品のようなものや、衣服やティッシュの箱など訪れた人が忘れていったようなものもいくつかあった。ごみの量は決して多くはなかったが、そのままにしてしまえば海に流れていってしまう。

海中清掃に参加した事業者たちからは「普段清掃をしていないエリアにも意外とごみがあった」、「お客さまから見える海岸や海中もきれいにできて良かった」、「行政と協力して清掃を行うのは初めてなので、これをきっかけに海での活動を広げていけそう」といった声が上がった。

地域、世代、意識を繋ぐきっかけに

海の中はなかなか普段の生活では見えないもの。屋久島町は、今回の海岸・海中清掃の活動を広めることで、ボランティアで今まで清掃を行ってきた人たちだけでなく、島内外問わず多くの人に屋久島の海に興味を持ってもらいたいという。そして、住む人、訪れる人みんなが屋久島の自然を大事に思うだけでなく、守る活動に参画できるような仕組みづくりを行っていくそうだ。

今回取材にあたり、町長はじめ、役場の担当課、屋久島スキューバダイビング事業者組合に属するショップのガイドさん、山・川のガイドさんなど、たくさんの方々にお話を伺った。屋久島で生まれ育った方も移住してきた方も、誰もが屋久島の自然や人のつながり、素晴らしさを語り、そしてそれを次世代に繋げたいと話してくれた。SDGsやサステナブルツーリズムといった言葉は昨今よく耳にするが、屋久島に住む人たちは自然にそういった意識を身につけ、行動しているように思えた。きっとその意識は屋久島の自然と、自然と共に暮らしてきた先人たちから受け継がれてきたのだろう。

山・川・海の繋がりが見える屋久島

世界自然遺産30周年を迎え、島を支える産業の7~8割が観光産業となり、島外からの移住者も多い屋久島。海岸・海中清掃が直接的な海の保全となることはもちろん、地域の人々や観光客を繋げ、屋久島の豊かな自然を未来に繋いでいくきっかけとなるだろう。

\屋久島町にふるさと納税をしよう!/
屋久島町ではふるさと納税の資金を使い、海を含めた水辺の保全活動も行っている。返礼品としては本格芋焼酎「三岳(みたけ)」やおつまみにぴったりのサバ節、屋久杉を使用した工芸品やヤクシカの革小物、地ビールやたんかんなどが用意されているそうだ。潜って楽しい豊かな海を守りながら、屋久島の名産品がもらえる、ふるさと納税「だいすき基金」の詳細は「屋久島町ふるさと納税ウェブサイト」をチェック!

Sponsored by 屋久島町

悠久の流れの中で、自然と共に生きる知恵と多様な集落の文化がとけあい、人々の営みが循環・持続させていくことを「まちづくり基本理念」とする屋久島町。住民・集落と行政がこの基本理念を共有しながら、「対話」と「協働」により、それぞれの役割・責任を分担しあう『屋久島スタイル』のまちづくり形態を創りあげ、新しいまちの姿(将来ビジョン)の実現を目指している。

取材協力:屋久島スキューバダイビング事業者組合(有)屋久島野外活動総合センター・松本毅、GREEN MOUNT・加藤朗史、屋久島公認ガイド・中馬 慎一郎、船主会

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PROFILE
IT企業でSaaS営業、導入コンサル、マーケティングのキャリアを積む。その一方、趣味だったダイビングの楽しみ方を広げる仕組みが作れないかと、オーシャナに自己PR文を送り付けたところ、現社長と当時の編集長からお声がけいただき、2018年に異業種から華麗に転職。
営業として全国を飛び回り、現在は自身で執筆も行う。2020年6月より地域おこし企業人として沖縄県・恩納村役場へ駐在。環境に優しいダイビングの国際基準「Green Fins」の導入推進を担当している。休みの日もスキューバダイビングやスキンダイビングに時間を費やす海狂い。
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