兵庫県明石市の海で見られるマダコの産卵!生命のドラマと海洋ごみの現実
マダコの漁獲量日本一とされる兵庫県明石市の海。ここでは、マダコの産卵やハッチアウト(卵から稚ダコが孵化する様子)がダイビングでも観測できる場所として、ダイバーも注目する場所だ。命を懸けたタコの子育てが繰り広げられる一方で、実は深刻な海洋ごみ問題も存在しているのをご存知だろうか。
命を懸けたマダコのハッチアウト
明石市周辺の海は、マダコにとって住みやすい環境が整っている。この地域は漁業が盛んで、漁師たちが使った蛸壺や隠れ家となる岩場が点在し、タコの天敵となるウツボなどの生物が少ないことが特徴だ。そのため、タコの産卵やハッチアウトが頻繁に観察できるのだ。
毎年初夏から秋ごろ、産卵を終えたマダコの母親は飲まず食わずで約1ヶ月にわたり卵を守り続ける。孵化の瞬間、稚ダコたちが海へと旅立つ姿は感動的だが、その後、母ダコは力尽きて命を落とす。この生命のドラマを一目見ようと、フォト派ダイバーらが足を運んでいる。
明石沖で問題化する海洋ごみ
その一方で、解決すべき課題もある。それが海洋ごみ問題だ。特にタコ釣りの擬似絵は深刻で、兵庫県の明石市漁業組合連合会が4年前から毎年1万個程を回収している(参照:神戸新聞NEXT)。この疑似餌は、約10cmのプラスチック製のものが多く、海底で分解されることはほとんどない。鉛の重りや鋭い針が付いているため、釣り上げる時にその釣り針が海底や障害物に引っかかり、糸が切れてそのまま海に沈み残されたものとみられる。この問題に対応するため、漁師たちは回収活動に取り組み、釣り具メーカーにも根掛かりしにくい擬似絵や環境負荷を軽減する製品の開発を進めている。
マダコの産卵やハッチアウトが織りなす生命の営みは、明石の海が持つ豊かな自然の象徴だ。しかし、その美しさを守るには、環境問題にも目を向けることが必須。豊かな生物多様性を誇る明石の海を、次世代にも美しい姿で引き継ぐために、私たちも日頃からごみを拾ったり、削減したり、少しの心掛けから始めていこう。