春の青海島でしか見られない!? 深海に棲むキアンコウの赤ちゃんたちが大量発生

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4月の後半から撮影へ向かったのは山口県の青海島。この海では毎年4月上旬~5月上旬に、日本…いや世界的に見ても珍しい生き物が現われる。

それはキアンコウの幼魚や稚魚である。

今回はそのキアンコウの幼魚と稚魚を数個体、青海島のダイビングポイント紫津浦で撮影することに成功したのでご紹介したい。

こちらがキアンコウの幼魚

こちらがキアンコウの幼魚

幼いころは浮遊生活

キアンコウと言えば、深い場所に生息しているイメージがあるが、実は幼魚まではプランクトンとして浮遊生活をしているのだ。

泳ぎはそんなに速くない。背鰭や胸鰭は長く、まるでクラゲに擬態しているようにも見える。私自身もキアンコウを見つけた時は一瞬、クラゲやカメガイかなと勘違いしそうになったことは何度かある。きっと捕食者たちもクラゲの姿に似ているキアンコウの幼魚に、気が付かないのであろう。

まるでクラゲのような姿をしている

まるでクラゲのような姿をしている

なぜか青海島に集まる子どもたち

そんなキアンコウの幼魚だが、私も大瀬崎で2014年に撮影して以来、他の場所では見たことがない。

しかし青海島では、生まれたばかりの仔魚から、やや大きめな幼魚まで毎年コンスタントに幅広く出現する。シーアゲインの笹川さんのお話によると数年前の多い時には、1ダイブで30匹以上みられたということも。キアンコウの出現率の高さを聞きつけ、毎年全国からゲストが集まるだけでなく、海外のカメラマンからも注目されているそう。

数㎜のちいさな稚魚

数㎜のちいさな稚魚

少し大きめな個体、数年前はもっと大きな個体も撮影することができた

少し大きめな個体、数年前はもっと大きな個体も撮影することができた

幼魚だけではなくキアンコウの卵帯も青海島には流れてくることがある。今回は運が良いことにその撮影にも成功。すでにかなり育っていて、はっきりと体も確認できた。卵帯にいる仔魚は中でグルグルと回転しながら動きまわり、数匹はハッチアウトもしていた。

グルグルとまわりハッチアウト寸前の卵帯

グルグルとまわりハッチアウト寸前の卵帯

他では見ることが難しいキアンコウの幼魚。今年はもうシーズンも終わりとなった。青海島でこんなにも多くのキアンコウが見られるのかは、いまだ謎に包まれたまま。産卵場所が近くにあるのか、または違う要因が存在するのか?ただ、潮に乘ってくる生き物なので時期になれば必ず見られるという生き物ではないのは知っておいてもらいたい。

運任せではあるが、来年もまたたくさんの幼魚や稚魚たちに出会えるのを期待したい。

撮影協力:シーアゲイン

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PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。
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