久々の危ういダイビング
和尚がレポートした沈船「エモンズ」。
http://diving-commu.jp/divingspirit/item_4538.html
中身の僕は、結論を言えば危うくパニックになりかけた。
8月になり沖縄の夜に読んでいるのが『国民の遺書』。
この本は先の大戦で散った「英霊の言乃葉」の選集だが、
そこにはフィリピンやパラオなどダイバーにお馴染みのエリアに加えて、
当前、沖縄で戦死した方々の言葉も多数おさめられている。
GWに潜りに行ったレイテ島から今いる沖縄へ、という流れ。
まさに、フィリピンから沖縄へと移った特攻作戦とかぶる。
なんて思っていたところに、実現した沈船「エモンズ」へのダイビング。
そして、潜る日は終戦日直後。偶然だが、偶然な気がしない。
「エモンズ」は特攻隊に大破させられた掃海船。
読んでいた本が本なだけに、刻んだ言葉を胸に、
彼らの心情に思いを馳せつつ潜るのにいい機会を得たと思っていた。
しかし、それはエモンズへ特攻した特定の方々ではなくあくまで英霊の思い。
などと思っていたら、まさに終戦日の8月15日のニュースで、
エモンズに突入した飛行隊まで特定したすごいダイバーの存在を知る。
エモンズを調査している「沖縄潜水科学技術研究所 No Limit」のブログでは、
特定した飛行隊の搭乗員26名の名前を公表しているが、
こうなると俄然リアリティが増す。
さらに、調べていくと搭乗員26人のうち4名の
顔写真と共に綴られた最期の言葉にいきつく。
森知澄命 http://sidenkai21.cocot.jp/m240.html
岡部三郎命 http://sidenkai21.cocot.jp/m223.html
小林敏男命http://sidenkai21.cocot.jp/m217.html
小屋哲郎命http://sidenkai21.cocot.jp/m230.html
もちろん、26名のうち特攻したのは5名だが、
上記4名が全員特攻した可能性だって0ではない。
彼ら5人の顔をまじまじと見たあと彼らの言葉を胸に刻み、
次の日に、彼らがまさに特攻したエモンズに潜ることになるとは。
仕事であり、ダイビングであるので、つとめて冷静を装いつつ潜ったが、
流れに逆らって泳いだことや周囲に人がいないということもあったのだろうか。
船体の大きな風穴、つまり、突撃の跡(でないかもしれないが)を見ながら
辞世の句などを思い返していたら、感情が爆発した。
恐怖なのか感動なのか何なのか。
いずれにせよ気持ちが昂り、呼吸が速くなり、体がビクン。
マズイと思い、着底して呼吸を整えようとも思ったが、
水底は40mオーバーなうえ、ダイビングは後半。
人がいるところまではかなり逆潮を泳がねばならない。
■独り(はぐれる心配がない油断)
■逆潮を泳ぐ(予定のないことを行けると思った油断)
■深くて透明度はあまりよくない(より保守的にすべきを油断)
油断、油断、油断。
3つの油断に、〝死のイメージ〟が引き金となりパニックの扉が開きかけた。
まさにそんなときにガイドの土門さんが様子を見にきてくれて事なきを得た。
※この件があったからいうわけではないが、
土門さんは本当にプロフェッショナルなガイドさん。
「人生の死は只一つ 南海の空に我死なん」(森知澄)
大義のために散った方々の前で、ただ油断して死んでは洒落にならない……。