人気者のマンタだけじゃない! ダイビングで会える注目のエイ12選を徹底紹介

海底で暮らす平べったい魚、エイ。その独特のフォルムはユニークで、中層を泳ぐ姿は美しい。でも、世界最大のエイであるマンタ(ナンヨウマントとオニイトマキエイ)以外は、ダイバーの間ではイマイチ注目度が低いのが残念です。そこで今回はマンタ以外に注目したい、ダイビングで見られるエイを紹介!
エイの体を探ってみよう
平たいボディが目印

円盤状の平たいボディと細長い尾が典型的なエイのイメージ
ダイバーに人気の高いサメと同様、エイは軟骨魚類というグループに属しています。体中の骨格が弾力に富んだ軟骨でできており、5対の鰓孔(さいこう)をもつという共通の特徴があります。
外見からの大きな違いは、ほとんどのサメのボディは太い流線型で、エイはプレスしたように平たいボディの種類が多いという点でしょう。円盤状のボディから、細い尾が伸びるのも多くのエイの特徴です。
腹側に「顔」がある⁉

腹側から見たエイ。口に見える部分は口で合っているが、目に見える部分は鼻孔。左右に5対ある小さい裂け目はエラ(鰓孔)
水族館で水槽のガラスに沿って腹部を見せながら泳ぐエイを見たことはありませんか? そこには不気味な、「顔」のようなものがあります。まるで化け物のようで、大航海時代(15~17世)には、エイの死体を乾燥・加工したものが「海の怪物標本」として取り扱われたこともありました。
腹部にはエイとサメを見分けるためのポイントがあります。それは鰓孔の有無。エイの腹部には5対の鰓孔がありますが、サメにはありません。サメの鰓孔は体側にあるからです。カスザメという平べったいサメは一見エイのようですが、腹部に鰓孔はありません。胸ビレの前(つまり体側)に開口するので、サメの仲間とわかります。
目の横にある穴のヒミツ

エイの仲間の多くはよく発達した噴水孔をもつ

砂中に潜むエイを探すには、噴水孔(→)に注目するとよい
魚類は一般に口から水を取り入れ、鰓孔から排出することで呼吸をしています。しかし、エイの口は腹側に開口しているため、口から海水を取り入れることはできませんよね。そこで利用しているのが眼の後ろにある噴水孔。エイはこの穴から水を出し入れすることができるのです。
噴水孔は同じ軟骨魚類であるサメにも存在しますが、底生生活をする種類以外では退化傾向にあります。海底を離れて自由に泳ぎまわる生活ならば、噴水孔は特に必要ないからとの理由が考えられます。
オスとメスの見分け方
メスの腹ビレ

1対の腹ビレには、特に目立った突起物はない
オスの腹ビレ

左右の腹ビレから棒状の交接器が伸びている
軟骨魚類は、私たち哺乳類と同じようにオスとメスが交尾をして子孫をつくります。つまり体内受精ですね。
そのため、成熟したオスには精子をメスの体内に送り込むためのクラスパーと呼ばれる棒状の交接器があるのですが、哺乳類のペニスとは異なり2本もあります。というのも、クラスパーは腹ビレ(左右に1対)が変形して生じたものなので、自動的に2本となってしまうのです。
ダイビングで会えるエイたち
「サメ」という名のエイ
サカタザメの仲間は、「~サメ」という名前がついていますが、実はいずれもエイの仲間です。下半身が太く、尾の先端に立派な尾ビレがあるため、サメにも見えます。トンガリサカタザメやシノノメサカタザメなど3m近くにもなる大型種もいますが、ダイビングで出会うことはごく稀です。また、ウチワザメという名前がついた、エイの仲間もいます。
①サカタザメ

サカタザメの仲間の中では比較的出会うチャンスが高く、伊豆半島などでも見られる。やや深い砂地や砂泥を好み、砂中に潜っていることが多い。大きさ60~80cm。分布/南日本の太平洋岸、伊豆諸島、琉球列島;南シナ海、アラビア海(写真/堀口和重)
「触るな、危険!」なエイ①~毒棘
アカエイ科の仲間の特徴のひとつは、尾に1~3本の毒棘(画像下参照)をもつことです。積極的に攻撃してくることはありませんが、砂中に潜っているアカエイの仲間に気づかず踏みつけたり、釣りや漁の最中にうっかり刺されたりする事故はしばしば発生しています。
かなり強い神経毒で、刺されると吐き気やけいれん、呼吸困難などの症状が見られ、死亡例もあります。かつて南太平洋の島では、この毒棘を漁や狩りに利用したという話も残っています。
もし刺されたら、患部を40~50度の熱めの湯に浸けましょう。ただし、あくまで応急処置なので速やかに医療機関へ!
②ブルースポット・スティングレイ

青い斑紋が美しい熱帯性のアカエイの仲間。昼間は岩陰やテーブルサンゴの下に潜むか、砂中に隠れていることが多い。浅場を好み、水深数mのところでも見られる。大きさは50~70cm。リーフ・スティングレイ、“アオマダラエイ”とも呼ばれる。分布/インド-西太平洋、中部太平洋の熱帯海域
③アカエイ

南日本の浅い砂地の普通種で、体が黄色で縁取られているように見える。よく似た種にアリアケアカエイがいるが、目視による識別は困難。大きさ40~60cm。分布/南日本、黄海、東シナ海、南シナ海
④ヤッコエイの仲間

背中に青や青白の斑があり、尾の先端に黒白の模様が見られる。写真は東南アジアで見られる青い斑紋が強い種だが、日本で見られるヤッコエイは斑紋が淡く、全体にちょっと地味。大きさ30~50cm
⑤マダラエイ

大きさ1~1.5mになる大型のアカエイの仲間。サンゴ礁やその周辺の砂泥で見られ、大きな黒斑が特徴。やや気が荒く、毒棘のある尾を上げて威嚇することも。分布/南日本、伊豆諸島、琉球列島;インド-西太平洋
⑥サザン・スティングレイ

浅い砂地に生息する、大きさ2mに達する大型種。ケイマン諸島の「スティングレイ・シティ」というポイントでは餌付けされていたため、今でも多数の個体と遭遇する。分布/西大西洋の熱帯海域
「触るな、危険!」なエイ②~感電
世界には「発電する魚」がたくさんいます。強い発電能力をもつ魚としては、デンキナマズやデンキウナギの仲間が有名ですね。いずれも淡水魚で、獲物を痺れさせて捕らえることが知られています。
海水魚で強力な発電能力をもつのは、その名もシビレエイの仲間。頭部付近に左右1対のソラマメ状の発電器官があり、世界の暖かい海に60種ほど知られています。アメリカ産の種では、一般家庭用コンセントの約半分にあたる50ボルトを起電したことが知られています。
⑦シビレエイ

体は丸っこく、ツルリとした見た目。砂地や砂泥を好み、砂中に潜んでいることが多いので、うっかり踏んだりしないよう注意が必要。伊豆半島では大瀬崎、伊豆海洋公園などでたまに見られる。大きさ20~40cm。分布/南日本、琉球列島、;東シナ海、南シナ海
その他の日本で見られるエイ3種
名前にサメがつくエイや危険なエイのほか、日本のダイビングではこんなエイにも会えます!
⑧トビエイ

突き出た頭部が特徴。海底で休んでいるときは寄りやすい。初夏、伊豆半島の安良里や川奈では群れで見られることも。大きさ50~100cm。分布/南日本の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島;全世界の温帯・熱帯海域
⑨ヒラタエイ

南日本沿岸の砂底で見られ、大きさ20~30cm程度の小型種。一見特徴はないようだが、尾の先端に丸いヒレがあることで他のエイとの識別は容易。分布/南日本、伊豆諸島、琉球列島;東シナ海
⑩ツバクロエイ

横に幅が広い胸ビレと短い尾が特徴で、英語圏ではButterfly ray(蝶のようなエイ)と呼ばれる。通常は砂地に潜み、紀伊半島・串本では冬場によく出会うという。成長すると体の幅が1.8mにもなる大型種だが、ダイビングで出会うのは40~60cmほどのことが多いようだ。分布/日本海側は新潟県以南、太平洋岸は茨城県以南から九州にかけて;東シナ海、南シナ海、黄海など(写真/堀口和重)
海外で会える「飛ぶ」エイたち
日本で見られる「飛ぶ」エイといえば、まず4~5月の伊豆半島。この時期、トビエイ(前述)が群れで中層を泳ぐようになります。また、小笠原の父島南西部では、秋から年末にかけてウシバナトビエイの大群がボニンブルーの水中をまさに飛ぶように泳ぐ姿が見られます。
海外で見られる「飛ぶ」エイといえば、こちらですね!
⑪マダラトビエイ

特徴である長い尾と背中の美しい斑紋が美しい

腹部は白い。とがった頭部はトビエイの仲間の特徴
藍色にも見える濃い褐色地に白い斑紋が散在する美しい模様だが、腹側から見上げると突き出た頭部が少々ユーモラス。海底にいることは少なく、しばしば大群で中層を飛ぶように泳ぐ。体幅2mに達する大型種。分布/南日本の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島;全世界の温・熱帯海域
⑫モブラの仲間

しばしば数百、数千という非常に大きな群れをつくることが知られている

ジャンプする理由は、求愛行動や寄生虫の除去などが考えられている
メキシコのバハ・カリフォルニアなど東部太平洋沿岸のダイビングポイントでは、モブラと呼ばれるエイの大群が見られる。しばしば海面から飛び出てジャンプする姿が見られ、まさに比喩ではなく「飛ぶ」エイだろう。
なお、モブラとはMobula(イトマキエイ属)のこと。マンタ(ナンヨウマンタとオニイトマキエイ)も同じ属だが、「飛ぶエイ」として知られるモブラの仲間はマンタよりかなり小さく、スレンダーなイメージ。
まとめ
マンタやサメと比べると地味なイメージのエイですが、こうして見ると面白いですね。次回のダイビングでは、ぜひエイの仲間にも注目してみてください。


