目が覚めたら闇の中 @江ノ島BBQ
寒い……。痛い……。気持ち悪い……。
目が覚めると闇の中に横たわっている自分。
手と足は血だらけで、寒さで震えが止まらない。
そして、すぐ横にはもんじゃ焼きが2人前。
ここはどこ? 私は……まあ、寺山だけど、何が起こったの?
次第に慣れてきた目で見渡すと、どうやらここは江ノ島の「女性センター」。
その駐車場の隅っこのコンクリの上にいるようだ。横には排水溝。
そうだ。俺は今日、江の島で楽しくバーベキューをしていたはずだ!
とりあえずBBQをやっていた海岸に向かおうと、
施設の柵を乗り越えようと……痛っ。
錆びた柵は鈍く鋭く剥き出しになっている。
そうか、入ってくるときもこれにやられて血だらけになったのか……。
闇の中をふらふらとBBQ会場に到着。……誰もいない。
携帯を見ると、いろんな人から着信履歴が18件。
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あの野郎……。どこ行った……。迷惑な……。
そろそろBBQをお開きにしようと思ったまこ社長。
せっかくだから皆で集合写真を撮ろうと声をかけて気がつく。
あれはどこ? はて、テラがいないがどこ行ったのだろう?
皆で周囲を探すも見つからない。
もしや海に落ちた? ってか、死んだ? と探索の網は海岸線まで拡大。
テトラポットの隙間、水面。とりあえずドザエモンは見つからない。
もういいや。
こと相棒のことに関してはスイッチの切り替えが早いまこ社長。
あれは最初からいなかったことにして、
心配する優しい人たちにも「大丈夫、大丈夫」「いいから、いいから」と。
とりあえず集合写真を撮り解散。
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あれ……。今の……。寺山さん?
BBQに旦那と参加していたAちゃん。
解散後、行方知らずになった寺山さんを心配しつつ駅へ向かって歩いている途中、
ふと、茂みの中に獣の気配を感じ、立ち止まる。
「犯される」
ただならぬ気配に思わず旦那の陰に隠れつつ、
茂みを凝視すると、黒光りする巨大な手負いの獣が!!!
やや前掲で歩く、そのちぢれた毛の獣……寺山さん?
ってか、どう見てもぐったりしている寺山さん?
「お〜い」と声をかけてみると手負いの獣は振り向き、
目が合うと、目をカッと見開き、ウホウホウホホホホと走って逃亡。
「今の寺山さんだったよね?」と旦那と目を合わせてキョトンとするAちゃん。
とりあえず、知らせておこうと、寺山さんの同居人に電話をいれ、
「茂みの中で寺山さんらしき物体を見たが、声をかけたら逃亡した」と報告。
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後片付けをしている、まこ社長の携帯が鳴る。
電話の相手はテラの同居人。
「なんかさー、Aちゃんがテラらしき人を茂みの中で見たらしいけど、
目が合ったら逃げたみたい」。
とりあえず生きているらしいから、よし。後は知らん。
その後のまこ社長の行動は早く、とっとと撤収。
自宅へ帰り、ロイヤルウエディングを見ながら何人かで飲み直すことに。
「迎えに来て」とか言われたら面倒くさいので携帯はもちろん切る。
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とにかく寒い……。水着だし……。雪駄だし……。無一文だし……。
「とりあえず施設のコンクリに戻ろう」。
コンクリの下に何があるが知らないが、寝ていたコンクリはなぜか温かい。
そうか、俺はこの温もりのためコンクリにたどり着いたのか。
コンクリに腰を降ろし、まずは記憶をたどってみる。
血だらけとコンクリの謎が溶けたおかげで、全部思い出した。
まず、海岸から公園のトイレに行って、気持ち悪くなったので、
とりあえず休憩しようとして……。
柵を乗り越えて女性センターに侵入し、
トイレで切り傷だらけになった足と手を洗い、
ついでにちょっと休憩をしようとトイレの便座に腰をおろしたら落ちてしまい……。
ドンドンドンとトイレの扉を叩く音で目を覚まし、外に出てみると、
身構える守衛さんに「も、もうそろそろ閉館の5時」と追い出され、
「戻らなくっちゃ」と外に出て……。
ふらふらと施設の敷地を歩いていると、
解散して帰る途中のAちゃんに柵の外から「お〜い!」と声をかけられ、
「おう!」と手を振るも、吐きそうになったので、
慌てて建物の死角で外から見えない駐車場にダッシュ。
コンクリの横の排水溝にオエ〜っと一発かまし、
「なんか、ここあったか〜い」とそのまま熟睡。冒頭の場面に戻る。
もんじゃ焼きの正体は……オエ〜。
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マジか……。仕方ない……。あのバカ……。
Hちゃんは電車に揺られ、すでに江ノ島から遠く離れた都内にいた。
手には同期テラのバック。
行方不明になったテラのバッグ、なぜか「持っておいて」と渡され、
深く考えずに持って帰ってきたが、どうしたものか。
何度かけてもテラは電話に出ないし、まあ、あとで送ればいいか。
そんなとき、着信。テラからだ。
「あ、Hちゃん、俺のバッグ持っているって聞いたけど?」
「うん、持っているよ。なぜか。後で送るよ」
「……俺、今、無一文で、まこっちゃんとも連絡とれなくて……」
「……じゃあ、今からバック、持っていってあげようか?」
「え!(明るい声) いやいやそんなの悪いよ〜(悪いと思っていない声)」
「でも、そうしないとどうにもならんでしょ?」
「いやいやいや〜悪いよ悪いよ〜(とってつけた声)」
「……まあ、行ってあげるから、駅で待って……」
ブチ。プッープッープッー。
あ、切りやがった。仕方ねーなー。もう。
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無一文で水着姿。唯一の頼みである携帯も充電が残りわずか。
とりあえずまこ社長に電話をかけるもつながらない。
まこ社長宅へタクシーで行って後払いしようかと考えるも、
電話にもでないし、いないのかも……。歩くと1時間はかかるしなぁ。
120円あれば駅までは戻れるので、自動販売機の下を探そうか迷ったがやめた。
とりあえず何人かに電話をかけると、なぜか僕のバッグを持っているのが、
同期のHちゃんと判明。
電話をかけると「なぜか俺が持っているんだよ」と。
で、自分が無一文でどうしようもない状況