辺野古・大浦湾のアオサンゴ群集を映像作品の舞台に!~マーメイドが紡ぐジュゴンの記憶~

生物多様性の宝庫でジュゴンの北限の生息地でもある辺野古・大浦湾は、米軍の新基地建設に向けた埋め立て工事や軟弱地盤の改良工事が進み、環境悪化が懸念されています。今回は、世界的に貴重な辺野古・大浦湾のアオサンゴ大群集でマーメイドスイムの映像製作を行った草地ゆき氏・長谷川潤氏のグループの活動について、長谷川さん自身にレポートしていただきました。

① 「A Tale of Blue Coral:紡がれる命の記憶」~「人魚」の視点から見た辺野古の新基地建設問題

まずは、こちらのショートムービーをご覧ください。

辺野古・大浦湾はジュゴン生息地の北限と言われています。この作品は、ジュゴンのメタファーである「人魚」たちが、世界最大級と言われるアオサンゴ群集で織りなす物語です。アオサンゴを愛でながら大浦湾で幸せに暮らしてきた人魚たちが、ある日聞きなれない「音」を耳にします。「なんだろう?」と思って人魚は海面へと浮上して行くのですが、そこで彼女が目にしたものは……。

この動画は、フリーダイビングおよびマーメイドスイムのインストラクターでもある草地ゆき氏が、3人のマーメイドスイマーをモデルとして2025年11月に辺野古・大浦湾のアオサンゴ群集で撮影を行い、製作したショートムービーです。

以下の章では、草地氏や僕がこのショートムービー企画を立ち上げた経緯や撮影の様子、そしてこのムービーを作ったことをきっかけにして今後やっていきたいことについて書かせていただきます。

② 映像の「舞台」としてのアオサンゴ群集

大浦湾「チリビシ」のアオサンゴ大群集。(撮影:長谷川潤)

大浦湾「チリビシ」のアオサンゴ大群集。(撮影:長谷川潤)

ぼくはこれまでライターとして、このオーシャナで辺野古・大浦湾の自然や生き物について紹介してきましたが、大浦湾に通い続けるうちに、アオサンゴ群集は映像や写真の「舞台」としても魅力的なのではないか、ということに気づきました。

折しも、一緒に環境保護や環境啓発の活動をしている草地ゆき氏がPADIマーメイドインストラクターの資格を取得し、世界的な人気アクティビティとなりつつある「マーメイドスイム」で環境啓発活動ができないだろうかと模索しているところでした。

アオサンゴ群集を舞台にしたマーメイドスイムのショートムービーは、「生物への興味」という文脈では大浦湾の自然に興味を持ってくれない人にも訴求できるかもしれない、と考え、2025年9月に草地氏にこのプランを相談したところ、「ぜひやろう!」ということになり、立ち上げたのがこの「アオサンゴ群集・マーメイドスイム」ムービー企画なのです。

③ マーメイドたちと、いざ、辺野古・大浦湾へ!

大浦湾・汀間漁港にて。2列目でカメラを持っているのが長谷川。2列目右端が草地氏。1列目のマーメイドスイマーは、左からYukari Sato、めめ 海んちゅマーメイド、haru。(撮影・提供:琉球新報 玉寄光太氏)

大浦湾・汀間漁港にて。2列目でカメラを持っているのが長谷川。2列目右端が草地氏。1列目のマーメイドスイマーは、左からYukari Sato、めめ 海んちゅマーメイド、haru。(撮影・提供:琉球新報 玉寄光太氏)

開口部が南に面している大浦湾は、風が北寄りになる冬季に最も海況が安定して透視度が良くなるため、ダイビングのベストシーズンは11月から4月くらいと言われています。しかしマーメイドスイムはウエットスーツを着用せず、保温性のないマーメイドコスチュームで泳ぐため、真冬の水温で泳ぐのはかなり厳しい面があります。そこで、水温がまだ下がる前で、海況・透視度が上がってくる11月下旬を撮影日に定め、参加者を募りました。

とは言えアイデアが湧いたのは9月。でも年内にやらなければ次は1年後…とてもそれまで待つことはできません。準備期間が短く不安もありましたが、結果的には3人のマーメイドスイマーが呼びかけに応えてくれました。

ちなみに、この「3」という数は、2000年代に入ってから沖縄本島に残っていたとされるジュゴンの頭数とちょうど同じ。マーメイドはジュゴンのメタファーとしての意味合いがあるので、何か運命的なものを感じました。
また、「貴重なアオサンゴを見てみたい!」というスキンダイバーも呼びかけに応えてくれ、不安は杞憂に終わりました(上の写真は、取材にいらした琉球新報の記者さんからいただきました)。

アオサンゴ群集で泳ぐマーメイド。(撮影:長谷川潤)

アオサンゴ群集で泳ぐマーメイド。(撮影:長谷川潤)

アオサンゴ群集での撮影は、11月22日午後と23日午前の2回にわたって実施しました。幸いなことに、撮影を行った2日間は海況も天気も良く、燦々と降り注ぐ太陽の下で華麗に泳ぐマーメイドの映像をたくさん撮ることができました。

3人並んで泳ぐマーメイドたち。(撮影:草地ゆき)

3人並んで泳ぐマーメイドたち。(撮影:草地ゆき)

水温は25~26℃と、水着程度の保温性しかないマーメイドコスチュームで長時間海の中にいるのは辛い状況です。それでもスイマーの3人は、寒さに震えながらも交代でサポート役をやるなど、皆で協力し合いながら華麗な泳ぎを披露してくれました。優雅に見えるマーメイドスイムですが、やっていることは実はわりと体育会系なのです(笑)。

手を取り合って泳ぐマーメイドたち。(撮影:草地ゆき)

手を取り合って泳ぐマーメイドたち。(撮影:草地ゆき)

映像の撮影は草地氏が担当。やっていくうちに、マーメイドたちからも「こんなシーンを入れたらどうか?」などの具体的な提案が出てきて、皆のアイデアを取り入れながら撮影が進みました。

バブルリングをくぐるマーメイド。(撮影:長谷川潤)
バブルリングをくぐるマーメイド。(撮影:長谷川潤)
バブルリングをくぐるマーメイド。(撮影:長谷川潤)

バブルリングをくぐるマーメイド。(撮影:長谷川潤)

バブルリングをくぐるマーメイド。(撮影:長谷川潤)
バブルリングをくぐるマーメイド。(撮影:長谷川潤)

上の写真は、ショートムービー本編では使わなかったものですが、マーメイドの皆さんから出たアイデアの一つです。「人間」に戻ったスイマーが吐いたバブルリングをマーメイドがくぐる、というアクティビティに挑戦し、見事成功しました。遅い午後の柔らかな陽光の中で繰り広げられる、人魚と人間の美しき連携プレイに、しばし見とれるひとときでした。

砂紋が美しい砂地。(撮影:長谷川潤)

砂紋が美しい砂地。(撮影:長谷川潤)

23日のアオサンゴでの撮影が終わった後は、美しい砂地でのスイムも行いました。初日である11月22日にグラスボートで汀間漁港からアオサンゴ群集へ向かう途中、砂紋が美しい真っ白な砂地の海を発見し、「明日はここで潜ってみたいよね!」と盛り上がり、翌23日のラストに泳ぐことができました。

砂地で泳ぐマーメイドたち。(撮影:草地ゆき)

砂地で泳ぐマーメイドたち。(撮影:草地ゆき)

30m以上はあろうかという透視度の中、真っ白な砂地がどこまでも広がっている風景の中で泳ぐマーメイドたち。アオサンゴ群集で撮影した写真も素敵ですが、こちらもまた清楚で美しい印象でした。そんなこんなで、いろいろ大変なこともありましたが、2日間にわたったマーメイドの撮影は無事終了しました。

④ まとめ:今後の展望について

辺野古の新基地建設現場を眺めるマーメイド。(撮影:草地ゆき)

辺野古の新基地建設現場を眺めるマーメイド。(撮影:草地ゆき)

今回は初めての試みとして、一般のマーメイドスイマーやスキンダイバーのゲストをお連れして、辺野古・大浦湾の海をご案内し、撮影を行いました。大浦湾の自然の素晴らしさと、そこに迫っている脅威についてご自身の目で見て感じていただいた上で、この希有で貴重な海を一緒に守っていく仲間を作りたい、というのが一つ目の目的でした。

今回参加してくださった6名のゲストは、沖縄在住のお一人を除けば、辺野古・大浦湾を初めて訪れた方々でした。普通はニュースでしか見ることがないこの地の現状を直接見ていただいたことで、皆さんと「この海を守っていきたい」という気持ちを共有し、ショートムービーという形にできたのは嬉しい成果でした。

二つ目の目的は、完成したショートムービーを多くの方に見ていただき、これまで辺野古・大浦湾の自然の情報が届かなかった層に「関心の輪」を広げていくことでした。これについては、今回の撮影ツアーを沖縄の新聞「琉球新報」に取材していただき、2025年12月16日の朝刊およびデジタル版にショートムービーのリンク付きで掲載していただく、という成果が得られました。今後もSNSやメディアを通じて、このショートムービーを広めていきたいと思います。

陽の光が降り注ぐアオサンゴ群集とマーメイド。(撮影:草地ゆき)

陽の光が降り注ぐアオサンゴ群集とマーメイド。(撮影:草地ゆき)

そして三つ目の目的は、大浦湾のアオサンゴ群集が映像作品の舞台としても非常に魅力的である、という事実を広く世に知ってもらうことでした。海外の方にも関心を持っていただけるよう、ショートムービーの英語版「A Tale of Blue Coral:Woven Memories of Life」も製作しました。

国内外のマーメイドスイマーやフリーダイバーがパフォーマーとなり、映像作家がアオサンゴ群集を舞台にした映像製作に取り組むようになれば、その映像の力により、これまで辺野古・大浦湾の自然や新基地建設の問題に関心がなかった人たちにも関心の輪が広まるのではないかと考えています。そして、主旨に賛同していただけるマーメイドスイマーやフリーダイバー、映像作家が現れたら、今年の秋にアオサンゴ群集で共に撮影を行い、新たな映像作品を作れたら良いなと夢見ています。

一つ前の記事「辺野古・大浦湾を潜る。大浦湾の多様な環境とサンゴの白化」の「まとめ」にも書かせていただいたように、辺野古・大浦湾のサンゴの被度は過去最低となり、この海の環境悪化は予断を許さない状況になりつつあります。希有な価値と魅力を持つ辺野古・大浦湾の自然を守るためにできることを、思考停止することなく考え続けていきたいと思います。

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PROFILE

海の美しさ・楽しさ、そして環境問題を映像や写真で発信することがライフワーク。
1992年に小笠原でスキューバダイビングとスキンダイビングを初体験して以来、海の魅力にどっぷりはまる。1997年からは御蔵島のドルフィンスイムに通い始め、イルカの魅力に取り憑かれる。2022年末に長年勤めていた科学館を退職し、ダイビングガイドの道に入る。
また2016年に、ドルフィンスイムガイドの草地ゆきと共に「御蔵島のオオミズナギドリを守りたい有志の会」を立ち上げ、鳥を捕食する御蔵島の野生化ネコを捕獲・譲渡する活動を行っている。

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