お上の思惑 #3 芋づるパワーで思惑をフォロー!
前回はテックダイバーの姿勢と思考をテーマにお話したが、今回もその延長。
しかし、その展開の裏側に、一般のダイビングにも応用可能な”芋づる思考”の紹介という企みを紛れ込ませてみたい。
最初は前回の質問、「テックダイブでは、ライトが重要なサイン用の器材。音によるサインはほとんど使われない。その決定的な理由となる2つの特性は?」に対する回答から。
前提はライトの光が存在感を発揮できるナイトダイビングのような環境だ。
で、回答その1は、ライトサインは発信源の正確な特定ができない音のサインと違って、誰が誰に対して発したサインかが明確という点。
特定の相手をご指名して速やかにコンタクトを取りたい時や緊急時、これは重要なポイントだ。
その2は、ライトは平和そうに点灯しているだけで、すでに、持ち主がそこにいて、問題のない状態であることサインとなり、逆に見えなくなったり消えたりすれば、それがまた自動的に異常のサインとなる点。
ライトは無口でいながらとても雄弁な器材なのだ。
音でアピールするという方法は、騒々しい割りに、はぐれたり、トラブルで音を出せない状態では頼りがいナシ。
よって、ライトが有効な環境では、音がよ〜く聞こえても、ライトをサインとして使う、というのはお利口な作戦、ということになる。
さて、こんなふーにライトサインの有効性を確認したら次はそれをベースとした“実用&実践重視”がモットーの、テックダイバー的な芋づる思考を紹介したい。
ライトサインの特性を理解したテックダイバーは、その特性をフルに生かさなくては損、と考えるのだ。
最初はサインの出し方。
サインは、ライトの持ち主ではなく、持ち主がライトを当てている所に出す。
持ち主の注意力はライトを当てている先に注がれているからだ。
一般にバディ・グループは、同じ方向に向いている状態が多いから、この手を使えば姿勢を大きく変えることなくコンタクトが開始できる。
OKサインの確認も、アテンションも、最も速やかな対応が期待できる方法だ。
また、後方のバディの様子を探りたい時も、自分のライトヘッドを手でカバーして後方ダイバーのライトの光とその状態を確認すれば、姿勢を変えることなく後方確認が可能というわけ。
無駄な動作を省くことができて、めでたい、でしょ!?
一方、ライトサインを重視するなら、それにまつわる要注意ポイントにも思いを巡らせるべき、とテックダイバーは考える。
ライトサインの有効性を生かすためには、バディ、グループ間のライトの明るさが大きく違わないことが大切。
誰かのライトが誰かのライトにかき消されてしまえば、コミュニケーション・ブレイク・ダウンだ。
さらに、ビデオライトのような、照射角が広すぎるライトも問題。
光を当てている位置や、動きが分かりにくいと、一流のサインは送れない。
また、ライトをサインと決めた以上、勝手なリタイヤは混乱の元。
万一メインのライトが故障しても、継続的にライトサインの世界にとどまるためのバックアップライトは、必須アイテムとなる。
バックアップライトは出番がない間は邪魔にならないコンパクトなものが望ましいが、ただし、EXまで連続点灯可能な持久性と、アピール性で、メインライトにコッパされない存在感(スポットライト的な照射角が広すぎない配光)が必要。
また、ダイビングスタートの時点で正常作動を確認しておくことも忘れちゃダメ。
メインライトユーザーに対してサインを出す時は、ライトの当たっている部分の最も明るい中心部分を外したちょい暗エリアを狙えば存在感をアピールし易い。
万一バディがバックアップのライトを使う状況となった時は、必ずバディを自分より前の側に。
グループの場合は、バックアップライトユーザーの後方に、メインライトユーザーを配置して、光の面での弱者を、目視しやすい位置にキープしておくことが大切だ。
こうしておけば、グループで潜っている時も、バックアップライトダイバーに異常があれば、その後方のダイバーが先頭ダイバーにライトサインでそれを伝えることが可能になる。
テックダイブの場合は、さらに状況に応じて考えていかなくてはならない色々な項目があるが、いかがでしょう、こんなふーに考えを発展させてゆけば、レクリエーショナルダイビングのセーフティレベルも、もっと高くしてゆけるのでは、と、私は思う。