海だけじゃない!自然写真家・高砂淳二が撮る空のサイパン
サイパン・ロタ・テニアン取材で、自然写真家・高砂淳二さんと同行する機会を得ました。
普段は、写真の通りの大らかで優しい人柄ですが、明らかにオーラが変わる瞬間があります。
「これは!」という被写体を見つけると、ガッと集中し、感情が高ぶるオーラがビンビン伝わってきます。
そんなオーラも、「絵にする」という職人としての集中オーラと、「撮りたくてたまらない」というアーティストとしての喜び全開のオーラと明らかに異なります(と、僕には見えました)。
前者は撮影するときの全てにおいてそうなので、やはり希な後者のオーラを発している姿に出会えるとこちらも嬉しくなります。
喜び全開の瞬間。
それがどんな時なのか、つい注目して見ていると、マリアナでご一緒した時の高砂さんの場合、答えは空にあるようでした。
「そら色の夢」など、空をテーマにした写真集もある高砂さんはいつも空を見つめています。
そして、写真集「夜の虹の向こうへ」など、ハワイをはじめとした南国の虹を追い求めてきた高砂さんの虹センサーには驚かされました。
「ほら!」「あそこ」という指さす方向にはいつも虹。
ロタのコンドミニアムで、早朝、ドアの向こうがガタゴト騒がしかったのでリビングに出ていくと、カメラを持った高砂さんが撮影から帰ってきたところ。
聞けば、虹が出ている気がして目が覚めてしまい、カメラを持って外に飛び出していたんだそう。
「ほら!」とうながされて外に出てみると、海と同じく真っ青なロタの空に、美しい虹が放物線を描いているのでした。
虹ってこんなに頻繁に出ているものなの? あるいは、虹出せるの?
というくらい虹に出会った旅でした。
ダイビングガイドが風や潮から海と対話するように、高砂さんも、湿気や臭い、太陽などなど自然の情報を五感で感じ、空と虹と対話しているのかもしれません。
そんな高砂さんがマリアナで最も強いこだわりと喜びの瞬間を見せたのが、“夜空の火炎樹”。
昼間から常に夜空の撮影場所を探し、気になったところに降り立っては空を見上げ、ホテルでは、毎晩、晴れることを願っています。
やっと晴れると、意気揚々とヘッドライトを頭につけて、カメラを持って森の中を駆けずり回り、「ここは」というポイントに三脚立てて、キラキラした目で空を見つめ続けます。
満天の星のもと、風が木々を揺らす音とスローシャッターの音だけが静かに響きわたります。
火炎樹(フレームツリー)は、その名の通り、炎のようなオレンジ色をしたマリアナを象徴する木。
戦前、日本統治下時代に移り住んだ日本人は、日本を懐かしみ、“南洋桜”と名付け親しんだそうです。
そんな南洋桜をモチーフにした夜空の写真。
マリアナの雄大な自然を現す満天の星と静寂の中、燃える南洋桜。
高砂さんの心象風景が現実になったような、幻想的で印象的な一枚です。
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