震災から3年。テレビ撮影で東北の海へ~外国人ダイバーから見た震災と復興 後編~

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岩手のダイビング(撮影:寺山英樹)

岩手の海(撮影:寺山英樹)

前回の記事で東日本大震災が起きた時のお話をしましたが(外国人ダイバーから見た震災と復興〜三陸ボランティアダイバーズ 前編)、震災から3年以上経った先日、東北へ行く機会がありました。
今回はボランティア活動ではなく、 NHKで放送されている番組「Journeys in Japan」の撮影チームと一緒に旅番組制作のためでした 。

「Journeys in Japan」とは、外国人リポーターが日本各地を訪ね、外国人の視点から日本の魅力を発見し、紹介していく番組です。
アウトドアの旅や、日本文化に触れる旅等様々なテーマがあります。

この番組に関わることになったのは、渋谷でアメリカ人の同僚デボラさんとたまたまばったり会った日の事でした。
20年以上ディレクターとして活躍してきた彼女は、Journeys in Japanの制作チームとの打ち合わせを終えたばかりで、つい2日前に見た私のダイビングブログや水中写真をはっきり覚えていて一緒にお仕事をしないかという話になったのです。

そこから ダイビング関連のシリーズに基づいた様々なアイディアを話し合い、最初の目的地は東北に決めました。

東北のボランティアダイビング(ボニー・ウェイコット)

なぜ東北を選んだかというと、単に日本の綺麗な面を紹介するだけでなく、もっと印象深い番組を制作したかったからです。

三陸ボランティアダイバーズとの活動は私に大きな印象を与え、大好きなダイビングを通して復興に貢献できる非常に貴重な経験でした。
Journeys in Japanは海外の方にそれを紹介する絶好のチャンスで、日本人の精神性と人と人の温かいつながりや関係も番組に表すことができればと思っていました。


久し振りの東北に到着して、復興はどこまで進んだのだろうと気になっていました。
しかし、港に到着して、そこに戻って来た漁船、そして水揚げされた貴重な海の幸とそこで働く人たちの姿は何よりも美しい光景でした。
周りには何もない所もありましたが、港は少しずつ活発に動いていました。

1日目はボランティア達の器材準備を撮影し、くまさんと皆と船に乗り込み、港付近でガレキを水の中から放り出し、新鮮なホタテやウニの様子も撮影しました。

東北のボランティアダイビング(ボニー・ウェイコット)

港には、くまさん、漁師さん達とボランティア達が中心となり、震災と向き合い3年間活動を続けて養殖してきた、ホタテ、ウニ、貝類、収集した被災物、掃除された船、網類等いろいろありました。

そのひとつひとつから震災前の生活が浮き彫りになり、港周辺にも震災前の人生があって、皆でそれを取り戻そうとしているのだなと改めて思いました。

撮影の次の目当ては、三陸獲りたて新鮮ピッチピチのホタテやウニでした。 本当に驚きの美味しさと肉厚なもので、「この味を伝えたい!」「どうか一回食べてみて!」と、そんな気持ちが番組を通して伝わっていけばと思います。

三陸や港エリアは3年前と比べて復興しており、撮影中、皆さんの嬉しい気持ちが非常に伝わってきました。

東北のボランティアダイビング(ボニー・ウェイコット)

海の中の景色が変わっていて生き物もいっぱい戻ったそうで、くまさんは、ダイバーは水中写真や動画をとるのが好きなので、美味しそうなホタテの様子等の写真をとってもらい、情報発信して、まだ残っているガレキを皆さんで清掃できればと、今後の目標を語ってくれました。

また、仮設から出て復興住宅であれ、自分で家を建てて少しずつ復興へ向かう地元の人々の様子を見てから、今度は観光で東北へ来たいとお話してくれたボランティアの方も非常に印象的でした。

番組では、海だけでなく内陸の様子も撮影したかったので、「及源鋳造株式会社」の方々に南部鉄器を紹介してもらい、歴史公園「えさし藤原の郷」で十二単を試着し、シェフ伊藤勝康さんの手による、岩手の食材にこだわった素材を生かした料理を味わいました。

東北の着物を着たボニーウェイコット

伊藤さんなりにいきついた調理法とは、南部鉄器を使うことで、南部鉄器で肉を焼く手法も、限られた時間や道具でおいしい料理を提供する必要があって生まれたそうです。

今回のJourneys in Japanは、海の復興と内陸の美味しい料理や伝統的な工芸が混ざった、震災から3年後の東北を描いています。

今でも、被災した方々や多くの犠牲者、放射能や津波で被害に遭った地域の悲惨な光景等を思い出しますが、また思い出すべきことの1つが、 日本人の冷静で秩序ある振る舞いだと思います。

このような日本の特色を大切にするためにも、3.11は忘れてはいけないと思います。

撮影中、最も感動したのは、復興への道がまだまだ長いにもかかわらず、地元の人は海の幸、伝統的な工芸、独特な料理等を生かして、その魅力をシェアし、前向きに考えながら頑張っている様子でした。

また、海や空の青色、山や畑にあった様々な緑の色調、東方の色は見た事もない程はっきりしていて鮮やかでした。

東北を旅して、自分の中の様々な気持ちを改めて思い出しました。
それと同時に、東北の人に出会って、沢山おいしいものも食べ、また訪れたい! という気持ちにもなりました。

東北のボランティアダイビング(ボニー・ウェイコット)

※Journeys in Japan東北は、2014年8月6日(水)午前3時から3時30分(5日火曜日深夜)にNHK BS1で放送されます。
ネットでも下記のリンクでご覧いただけます。
正式なタイトル等詳しい詳細が入りましたらまたお知らせ致します。

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PROFILE
イギリス生まれ、8歳から13歳まで日本で育ったイギリス人と日本人のハーフ。

2006年に再度来日し、ナレーター、翻訳者、ライターとしてNHKテレビ、ラジオ、日本駐在外国人向けのウェブサイトなどで活躍。
2010年ニューカレドニアで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、2011年以降定期的に日本で潜っている。

日本の海の魅力、多様な生物や地形等に感動し、海外であまり知られていない日本のダイビングを紹介する目的で、2011年にブログ(Rising Bubbles)を立ち上げた。

外国人向けのサイトや海外のダイビングサイトで日本のダイビングスポットを定期的に紹介しており、スコットランドのセントアンドリューズ大学で水産養殖も勉強中。

「ダイビングをきっかけに、日本の海がどれだけ魅力的なのかをすごく実感しました。この連載では、たくさんの情報を届けていきながら、海外からのトピックを取り上げ、日本と海外の違いや海外の視点等をシェアするのを楽しみにしております」
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