外国人ダイバーから見た震災と復興〜三陸ボランティアダイバーズ その1〜

三陸ボランティアダイバーズと筆者(ボニー・ウェイコット)

海外の人が驚いた日本人の精神性

2011年3月11日の東日本大震災は 思いがけない事でした。
海外の人にとっても、地震直後のガレキの様子や津波の映像は衝撃的なものでした。

特にイギリス等のメディアはドラマチックな報道ばかりで、見ている人も「信じられない悲惨な風景だ、日本で一体何が起きているのだろう、今後どうなるのだろう」と驚きと不安でいっぱいだったと思います。

「日本では地震がよくあるのに、人々はこれほどの規模を全く予期していなかったのが非常に最悪」、「自然の力はいつでもどこでも起こるので3月11日はすべての人々にとって恐ろしい日だ」など、様々な声が上がってきましたが、そんな状況の中、海外の人が最も感動し、驚いたのは日本人の精神性でした。

日本人はあまりにも冷静で、海外の人からは、「怒鳴り合いもけんかもない」「こうした対応ができるのは本当に強い国でないと」と称賛する声を聞きました。
日本人が当たり前にやっていることを、世界の人が驚いたのです。

その精神性とは、いざというときにはやるという事、そして何が起きても冷静に秩序を乱さずに行動する事。
海外の人はそれを見て「こっちで同じ状況になった場合、日本のようにはいかないな〜」「厳しい状況下で見せた思いやりの心や冷静を見習うべき」等と意見を述べました。

そして震災から11ヶ月。
被災地の復興の様子がイギリスのニュースサイトにて写真と共に紹介されていました。
まだまだ道のりは長いけど、必ず復興できる、そう確信できる写真群でした。
記事はこちらからご覧ください。

三陸ボランティアダイバーズでのボランティア経験

三陸ボランティアダイバーズと筆者(ボニー・ウェイコット)

多くの人が復興活動のため東北へ向かう中、2011年1月にダイビングを始めたばかりの私も、ダイバーとして海や港関連の支援活動ができないかとネットで探していたところ、 三陸ボランティアダイバーズを見つけ、2011年11月に東北へ行く事になりました。

池袋を出発した夜行バスは、ゆっくりと陸前高田へ向かって行きました。
到着前、窓から見た光景は恐ろしいものでした。
私は荒廃を目にする心構えが出来ていなく、その光景を見た瞬間、東日本大震災の恐怖や混乱をすぐにまた思い出しました。

現地には、 大学生、社会人、漁師と様々な参加者がいました。
被災地に対し、「何かをしたい」という気持ちは全員に共通するものでした。
こんな参加者達が自然と一つのチームになっていくのは、復興支援ボランティア活動ならではのものかもしれません。

数日間にわたって、港で軽作業を行いました。
作業内容はダイバー達が海から取り出していたガレキを運び、陸上で整理し、港周辺のゴミ拾いや片付けでした。
ダイバーとペアを組み、ダイバーが 上がって来たら一緒にガレキを水から放り出しました。

潜るには最低レスキューの資格が必要で、それがなかった私は、ダイバーが水中のガレキに結ぶロープの準備をしたり、スノボーやバッグ等の物に水を流してきれいにしたり、木等大きな物は船から機械を使って取り出していたので船での軽作業にも関わったりしました。

皆で軽くお昼を食べた後、午後も同じ作業に入りました。

三陸ボランティアダイバーズと筆者(ボニー・ウェイコット)

私にとって東北の惨状は、単なる物理的なものだけでなく、東北のある美しさをはっきり表しているのだと思いました。
その美しさとは、人々の精神がしっかりしていて希望が湧き出している事。

目の前の惨状に対して、礼儀正しさを示し頑張って作業している事。
それ自体が非常に美しく、そんな態度に対して心から敬意を表します。

東北の人々は、何が復興のスタートで何がゴールなのかは分からないです。
先がまったく見えない状況だからこそ精神的に前向きに行動する事が最も大事で、そんな様子を活動中よく目にする事ができました。

ボランティア達の間には、悲しみを忘れて東北の物理的な美しさも楽しもうという気持ちがいっぱいでした。
作業後ドライブに行き、その途中で見た紅葉の様子や川に戻って来ている大きな鮭、暖かい自然な温泉等は一生忘れません。

また、夕方は皆で料理をして、海の幸を食べながらおしゃべりして大笑いしたのもとても感動的でした。
ダイビングが大好きで海のために役に立ちたい。
復興の様子を多くの人に伝えたい。その強い意志は印象的でした。

また、皆さんの心の中には震災があったけど、それでも東北は綺麗な楽しい所ですよ、今回は来てくれてありがとうというメッセージがこめられていたと思います。

ボランティアは私の他に外国人はいませんでしたが、それにも関わらず皆さんは私を同じ仲間として受け入れてくれて、それについてはもう一度改めて「ありがとう」と言いたいです。

いうまでもなく、このボランティア活動の経験は、東北の物理的な美しさと人々の心の美しさの意味を教えてくれたと思います。

私のブログRising Bubblesには、英語でボランティア活動の経験をまとめました。是非ご覧ください。

三陸ボランティアダイバーズと筆者(ボニー・ウェイコット)三陸ボランティアダイバーズと筆者(ボニー・ウェイコット)

ブログへの反応

東京在住の多くの外国人はPeace Boatや Red Cross等の大きな団体を通してボランティア活動をしていたそうです。
これらの団体の情報は簡単に手に入れる事ができて、日本語が話せないけど貢献したいと思っている外国人には最適です。

私のブログを読んだ人は「自分の趣味を通してボランティア活動をした事はとてもいい」「通常の活動とはちょっと違った様子を描いている」「東北の人とすごく密接に活動して距離感がなかったようですね」「鮭が川に戻っているのも復興のサインですね」などとFacebookでコメントしてくれました。

被災地ではまだまだ人の力が必要です。
私も再度東北へ行ける日を楽しみにしています。

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PROFILE
イギリス生まれ、8歳から13歳まで日本で育ったイギリス人と日本人のハーフ。

2006年に再度来日し、ナレーター、翻訳者、ライターとしてNHKテレビ、ラジオ、日本駐在外国人向けのウェブサイトなどで活躍。
2010年ニューカレドニアで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、2011年以降定期的に日本で潜っている。

日本の海の魅力、多様な生物や地形等に感動し、海外であまり知られていない日本のダイビングを紹介する目的で、2011年にブログ(Rising Bubbles)を立ち上げた。

外国人向けのサイトや海外のダイビングサイトで日本のダイビングスポットを定期的に紹介しており、スコットランドのセントアンドリューズ大学で水産養殖も勉強中。

「ダイビングをきっかけに、日本の海がどれだけ魅力的なのかをすごく実感しました。この連載では、たくさんの情報を届けていきながら、海外からのトピックを取り上げ、日本と海外の違いや海外の視点等をシェアするのを楽しみにしております」
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