中高齢者向けのダイビング講習・ガイドを行っているショップはどれぐらいか

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石垣島でダイバーデビュー(撮影:岡田裕介)

こんにちは。高野です。

今回は、インストラクターを対象に、中高齢者(定義:40歳以上)に関する質問として、「中高齢者向けの(他の年齢層と分けた)講習およびガイドをおこなっていますか?」という質問をさせていただいた結果についてお話しします。

中高齢者向け講習実施状況

中高齢者向け講習実施状況 n=134

中高齢者向けガイド実施状況

中高齢者向けガイド実施状況 n=134

結果は、中高齢者向け講習、ガイド共に、「おこなっている」「おこなっていない」は、ほぼ半分半分という回答でした。

また、「中高齢者ゲストの機能特性(身体・生理・心理・感覚)を考慮した講習およびガイド」について、4段階(重視している⇔重視していない)での回答結果は、「4(重視している)」は54%、「3」を含めると85%のインストラクターが、ほぼ重視していると回答しています。

中高齢者ゲストの機能特性を考慮した講習・ガイド

中高齢者ゲストの機能特性を考慮した講習・ガイド n=134

これらの結果を見ると、近年、中高齢者におけるスクーバ・ダイビング事故発生時の死亡率が高いことを認識していながらも、約半数のインストラクターが中高齢者向け講習・ガイドをおこなっていない、またはおこなえていないのが現状のようです。

では何故、おこなっていない、またはおこなえていないのでしょうか?
要因の一つとしては、「リスク」と「労力」と「報酬」の不均衡があるように思います。

  • 事故に対するリスク(ダイビング自体がリスクを内包していますが・・・)
  • 年齢層別に分けることによる労力(新たなスタッフの雇用検討や繁忙期のスケジューリングなど)
  • 上記に見合うだけの報酬が得られない可能性がある(価格を上げた場合の顧客減少への懸念)

単純に考えれば、インストラクターは労力に見合うだけの講習費やガイド料の値上げをし、新たなスタッフを雇用すれば、リスクも軽減出来る(講習やガイドのサポートにつけるなど)可能性があり、不均衡も解消できるかもしれません。

しかし現実を考えると、値上げをすれば顧客は減少する可能性が考えられ、またスタッフの雇用に関しても、雇うだけの金銭的余裕のあるインストラクターはおそらく少ないのではないでしょうか。

もし、中高齢者におけるスクーバ・ダイビング事故発生時の死亡率を低くするために、年令層別の講習・ガイドが必要であると考えた場合、どうしたら実施できるのでしょう?

そこには、ダイバー一人ひとりが事故の現状を把握し、本人の中高齢者である自覚と、中高齢者向けカリキュラムへの理解(内容や日数増加、金銭面など)が必要と思われます。

今後、我が国においては一層の高齢化が進み、中高齢者によるダイビング活動へのさらなる参加拡大が予測される中、中高齢者の機能特性(身体的機能・生理的機能・心理的機能・感覚的機能など)を理解し配慮した、更なる具体的な指導体系が必要かもしれませんね。

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PROFILE
大学にて法学を学び、卒業後、某一部上場企業にて人事採用・研修を担当していたが、「人は自然と共に生きていくことが本来の姿である」と思ってしまい…退職。

都市型ダイビングショップを経験後、静岡県の熱海を専門に水中ガイド、コースディレクターとしてインストラクター養成などを行う。
また、潜水士として、海洋調査・水中撮影・ナマコ潜水漁・潜水捜索救難などでも活動している。
 
ある時、業界の発展、健全性の確立を考えるようになり、大学院へ進学してスポーツマネジメントについて学ぶ(学位:体育学修士)。
現在は、教育・指導の観点から、ダイビングのマネジメントについて研究している。
 
■「筑波大学 大学院」 体育系研究員 高度競技マネジメント研究室(山口香研究室)
■「文部科学省所管 財団法人社会スポーツセンター」マリンスポーツ振興事業部 専門職員
■「NPO熱海・自然の学校」理事 安全対策委員長
■「NPOユニバーサルダイビングネットワーク」理事 潜水捜索救難協会トレーニングディレクター
■「Office 海心(うみこころ)」代表
 
【学会発表・論文】
■「SCUBAダイビングにおける裁判事例から見た事故分析」
■「SCUBAダイビングにおけるヒヤリ・ハット調査から見た事故分析 -ハインリッヒの法則に基づいた観点から-」
■ 「SCUBAダイビング指導者育成における教育課程に関する研究 -中高齢者事故予防の観点から-」
他
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