加圧トレとダイビング
昨年流行し、今や定番のフィットネス、加圧トレーニング。
これはちょっと違う……。
さて、ダイバーが日ごろ体を鍛えるために有効なのだろうか?
また、反対にダイビング後は圧力がかかるので
減圧症のリスクを高めるという疑問も……。
そこで、『マリンダイビング』連載
「事故を起こさないための新・潜水医学」でお馴染みの
大岩弘典先生にお聞きしたところ、以下のような返答。
■トレーニングとして有効ですか?
「加圧筋トレは、ひと昔前に流行ったMild HBO(エアチャンバーによる加圧療法)と同じく、
医学的には効果なしか、医学的エビデンスはないと考えています。
今月号の私の連載で紹介していますように、運動時のエネルギー消費は、
最初に細胞のミトコンドリアのADP代謝により、次いで筋グリコーゲンの代謝、
定常状態に入ると呼吸循環系の有酸素運動によるのです。
局所加圧筋トレで筋肉細胞のミトコンドリアが増えるか? そう思いません。
筋肉のミトコンドリアの増殖、筋細胞の増加は、筋肉増強剤に服用効果がありように、
骨格筋運動で増強するのは良く分かっています。
局所の加圧筋トレで血流増加が増えるのは事実でしょうが、
血流増加が筋肉増強に即つながらりまぜん!」
つまり、筋肉を増強するという意味では、
医学的根拠はないということのようだ。
では、どんな運動がいいのだろうか?
「エネルギー、たんぱく質摂取の増加、
全身的な筋肉増強(肺呼吸による有酸素運動を伴った)が決めてになります。
ちなみに、今回のオリンピックから選手はMild HBOは禁止行為になっています。
理由はエステと同じ効果なし、
有害といえるというオリンピックスポーツ委員会の結論によります。
加圧筋トレは、エステ産業の一種ですね。
全身の有酸素運動の継続が、スタミナの増強になり、
事故を減らす唯一の策でしょう」
定期的に水泳をやったほうがよっぽどいいようだ。
水慣れにも有効だし。
■ダイビング後の加圧トレは減圧症のリスクを高める?
大岩先生によれば「血流が増加することは確か」ということなので、
やめておいた方がいいだろう。
というのも、減圧症の一因に〝運動〟がある。
これは、ダイビング後に血流が増すと気泡形成を誘発し、
減圧症の引き金となるからで、
まさに血流の増加を促す加圧トレーニングはひかえた方がいいだろう。
そもそも、ダイビング後は運動自体おさえた方がいいので、
まったりと散歩程度に。
テラ(和尚)