おススメしないショップ体験談・後半

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■序章
http://diving-commu.jp/divingspirit/item_3086.html
■前半
http://diving-commu.jp/divingspirit/item_3087.html

○器材購入拒否で変わる雰囲気
そして、セレブでないゲストたち

…..後日。

二回目のプール講習後、
ペーパーテストのために店へ行くと
スタッフの態度が微妙に変わっていることに気づいた。

大声で私を取り囲んでのワイワイがない。スーツの大声上司が近づいてこない。
ポツンと席でひとりぼっちである。
私のようにハッキリ断る客はもう無理だと思われたのかどうかはわからないが
まあわかりやすい豹変ぷりである。

でもこちとら身一つで仕事してる一匹狼。
一人で席にいたって全然平気なのだよ。
逆に静かな分店内が見渡せて、ほかの客などをシゲシゲ観察できるようになったのだ。

そして他の客が少しもリッチでもセレブでもないことに気づくのである。

この店に来る客はなぜか圧倒的に若者が多い。
大学生。二十歳そこそこの社会人。
そして共通点はどの人もみな大人しくあまり自己主張をしないタイプだった。

私の目の前にいる色白で無口な女の子が
3人の男性スタッフに囲まれオリエンテーションを受けている。
どうやらスタッフの知り合い、
または友人からの勧めで来店したらしく本人はあまり乗り気でないらしい。

ワアワアワアワア高いテンションで
私の初来店時と同じように海の素晴らしさを語るスタッフ。

「まずはプール講習だけ受けてみなって!」、「世界変わるから!」
なんとか彼女の来店スケジュールを決めようと必死である。
そこへスーツ上司の登場。彼女の色白な肌を大声で褒めまくる。

大声の男性4人に囲まれる彼女は
今年北海道から上京してきたばかりの看護実習生だという。
服装も持ち物も年齢に相応して慎ましやかである。
決してどこぞの社長令嬢というカンジではない。
趣味はカラオケと飲み会。どこにでもいる普通のお嬢さんだ。

オリエンテーションは上級クラスへのステップアップの説明に入っている。
具体的な数字は一切言わないが
「毎月カラオケや飲み会のお金をダイビングに使えば別世界が手に入る」
と説得している。

おいおいちょっと待て。まだ学生の彼女に何十万円をどうやって支払わせる気なんだ?
クレジットカードだって限度額がある。
学生の彼女の限度額なんてある程度決まっている。

「うちの信販があるから。60回まで組めるから」

これだ。これが最終的な狙いだったのだ。
私は職業柄ローンを組まない主義だとハッキリ断言したので勧められなかったが、
ここには信販があったのだ。

おとなしい学生やピカピカの社会人一年生を店に呼んでは
何時間も軟禁状態にして巨額の信販ローンを組ませていたのだ。
この金利が驚くなかれ、年18%である。
まったくどこの闇金ウシジマ君である。

上京したばかりの彼女からカラオケや飲み会を奪い、
この店の人間関係でガチガチに縛る。

当然彼女は店に依存する。したがってスタッフの言うままに器材のローンも組む。
ローンを60回、5年間も支払うのである。

彼女の多くはない給料から毎月引き落とされる金額を考えるとゾッとする。
その支払いに追われてダイビングツアーどころじゃないだろう。
もちろんカラオケも飲み会も行けない。途切れる人間関係。ホコリをかぶる器材。
輝く未来が待っている彼女から大切な20代前半の5年間を奪うのである。

この罪の重さを自覚しているスタッフは一人もいない。
なぜなら彼らも同じようにローンを組んでいるから。


○ゲストもローン、スタッフもローンの
負のローン・スパイラル

年利18%の信販ローン。
これを上京したての看護実習生に組ませようとするスタッフたち。
実は彼らも同じように信販ローンを組んでいる。

私が店に通っていたころ、
ちょうど今年入社する社員の研修が頻繁に行われていた。
店の規模から考えると随分大量に採用するんだなあ……と驚いたものだ。

その全員が上級クラスまでのCカード講習を受けフル器材を購入するのだという。
それが全部信販ローンで給料から天引きされるらしい。
そして1年以内にほとんどが辞め、3分の1残ればいい方だという。
もちろん辞めたってローンは残る。
ここに一度入社した以上は完済するまで支払い続けるのだ。

あの……それってなんて新卒商法??

自分たちも組んでいるから大丈夫。
だから安心してあなたもやりなよ、信販ローン。
そうやって看護実習生の女の子に話している。
その目には相手を騙そうとか引っかけてやろうという意思は見えない。
なぜなら自分がすでに引っかかっているから
である。
入社=○○○万円のローンがセットになっている
いかがわしさに気がついてないからである。

別な席では地味でおとなしそうな男の子を
カワイイギャル系スタッフが3人でワアワアキャアキャア取り囲んでいる。

「次はいよいよ海だね〜っ」、「マイ器材だから安心だよ〜〜っ」、
「○○君来週初海で〜す!ハクシューッ!」パチパチパチパチ、
みんなで拍手している。男の子はひたすら照れている。

おそらくもうフル器材を長期ローンで購入しているのだろう。
女の子の手前、勧められれば断れないはずである。どこのキャバクラかよ状態だ。

「うちは定価のモノを定価で販売しているだけ。何も問題はないわけ。
もしそれ買うのがイヤなら、
講習終わったらさっさとうちの店から出ていってねってことになるから」
別な席ではプール講習を終えたばかりの女の子に
高圧的な態度の男性イントラが器材販売をしている。
おいおい、客に対する言葉かそれは? ホストのオラオラ営業か??

どの客もみな上級クラスまでの講習を契約しているため
最低2カ月以上はこの店のスタッフや担当イントラと濃密に関わらなければいけない。
ここで断ったら嫌われるんじゃないか、無視されるんじゃないか、
一人で講習受ける時にひどいレンタル品を渡されたらどうしよう。
なんたってスクーバダイビングという行為は自分の命がかかっているのである。

心細い講習の中、頼れる存在には徹底的に頼りたい。依存したい。
誰もが持つ感情
である。

その断ち切れない人間関係をエサに、
ときには高圧的に、ときにはチヤホヤして自尊心を刺激して、
講習費+フル器材購入で総額○×○万円の信販ローンを組ませる。
これがこの店の最終目的だったのだ。

○決別を決意

この日、帰宅後に初めてネットで店の名前を検索してみた。
私の担当イントラに聞いてもなかなか店名を教えないはずである。
「○○被害者の会」、「○○の実態」……続々である。

おそらく来店確実になるまで店名はハッキリ言うなとでもマニュアルにあるのだろう。
でも中には「○○で人生変わりました!」
「○○を通じてたくさんの仲間と知り合えました!」な

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writer
PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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