オニダルマオコゼ◆前編
ダイビング歴45年・やどかり仙人のアップアップ相談室。
テラ和尚はまだ沖縄、極楽行脚の途中。
それでも、旅先から注文のメールを送ってくる。
うるさいぞと暑さボケのヤドカリ爺はのっそりと起き上がって、
パソコン開くと、案の定オニダルマオコゼの話を書けということだ。
ヤドカリ爺はその種のテーマは苦手であるだけでなく、どうも気が進まない。
その理由の1つが数年来使っているハンドルネームがなぜか“だるまおこぜ”なので、
遠い親戚がとんでもないことをしでかしたと、妙に申し訳ない気分であります。
こんなことはさておいて……。
その理由の第2は、この種の海の生物の刺傷とか刺胞の話は、
話はセンセーショナルなのですが、その対策とか応急手当というのは、
かなり諸説があって、これぞというダイバー向けの文献資料があまりないのであります。
例えば、カツオノエボシの応急手当。
オシッコをひっかけるから、65度以上のお湯で淡白毒を不活性化しろ、
いや駄目だ、酢で洗え、果ては何もするなまで。
とまあ、いろいろございます。いやどれも手元の資料にございます。
それぞれにそれなりのご意見があるようで、医者ならぬ、ましてや毒物の化学なぞの、
知識のないヤドカリ隠居は、恐れ入ってしまうばかりでありますが、
われらがダイバーにとっては、あまり軽視できない問題という心持にされましたぞ。
とまー。長い前フリになりましたが、
今回の衝撃的なオニダルマオコゼの事故から入ってみましょうか。
ダイビング講習中のダイビングインストラクターの事故!?
われらがダイバー仲間にとって、ダイビング講習中というので、
余計ギクッとさせられました。
しかし、沖縄情報では、講習後、
近くの浅瀬にあるボートに歩いて近づいたときに刺されたというか踏んだものらしい。
ダイビングブーツを履いていたか、素足だったかはっきりしませんが、
どちらにしても、毒棘を踏み抜いたに違いありません。
ダイビング事故というより海辺の事故だったというべきかもしれません。
オニダルマオコゼの毒は非常に強いことは知られていますが
(海の毒としては抽出しやすく、世界各国でマリントキシンのモデルさん的存在のようです)、
それでも毒そのもので死亡することは、少ないようです。
今回のケースはアナフィラキシーによる過剰反応が原因でないかとも伝えられていますが、
とすると、少しアナフィラキシーを知っておいたほうがよいがも知れません。
アナフィラキシーショックとは?
人体は体内に異物や外敵が入り込むと、
それに対抗する抗体ができて対抗しようとしますが、これを免疫というようです。
ところがこの抗体が過剰反応を起すことによるショックを
アナフィラキシーというようです。免疫の反対の反応であります。
今回のオニダルマオコゼのケース(断定できませんが)が
アナフィラキシーショックが原因とすると、
過去にオニダルマオコゼに刺されたことがあって、抗体ができていて、
激しいアレルギー反応が起きたということになります。
養蜂関係者など、スズメバチがいるところで働く人が
対ショックに対応するためのアドレナリンの注射を常時携行するとかで話題になります。
年間30人もの人がハチのアナフィラキシーショックで亡くなるといわれております。マムシに咬まれた人の治療の際は、
まず過去に咬まれたことがあるかの確認が問題になるようです。
培養した毒からつくった血清などを使う際に、
このアナフィラキシーが起きる可能性があるわけですな。
アレルギー反応である以上は、
オコゼでもクラゲでも他の動物でも起きる可能性があるわけです。
このアナフィラキシーショックは、動物だけでなく、食物でも、
ダイバーになじみのあるスーツの材料のラテックスなどでも起きるようです。
当然、この反応には個人差があります。
幸いなことにクラゲ、つまり刺胞動物によるアナフィラキーショックは少ない
なんてことも、どこかに書かれておりました。
しかし、少ないであって、まったくないわけではなさそうでございます。
アナフィラキシーショックについては、ぜひインターネットでも調べてください。
怖いのは、非常に強い食腕は、呼吸停止、血液循環不全、心停止といった、
一瞬を争う待ったなしのトラブルになるわけで、
私たちのように病院や施設から遠く離れたところにいるダイバーには、
起きればちょっと手に余る事態です。
まして水中で起きたら思うのは、ヤドカリ爺は心配しすぎでしょうかな。
明日の後編では、対処法・応急法を探ってみたいと思います。