オクトパス・ヴァージン
昨年末、伊豆・八幡野の《ダイビングショップ海好き》で潜ったときのこと。
一緒に潜っていたまこ社長が被写体に夢中になり、
残圧チェック時に自分の残圧を見てびっくり。
エグジットまで足りるはずのない残圧しかなく、
ガイドの福ちゃん(福田航平)にオクトパスをもらってしばらく泳ぐことに。
仕事でギリギリのダイビングをすることも少なくなく、
こうした状況に慣れ過ぎている僕らは、
エグジット後「も〜、ダメダメじゃ〜ん」、「すまん、すまん」と、
さほど深刻に受け止めていなかった。
そんな会話をしている横で何だか福ちゃんが元気ない。
明らかに落胆の様子なので、「どうしたの?福ちゃん」と聞くと、
「お店オープンして以来、オクトパス渡したの初めてで。ごめんね〜」と。
な、なぬ! 5年間でオクトを渡したのが初めて!!
ガイドさんがゲストにオクトパスを渡しているシーンはちょくちょく見るし、
僕らも「ちょいと吸わせてくださいな」ってなことはたまにあるが、
福ちゃんのところでは、残圧が足りなくなるなんてことはあり得ないというマインド。
自分を顧みると、心のどこかで「最終的にはもらえば大丈夫」と
思っている自分がいることは否定できないし、
オクトを渡すことをさほど深刻と受け止めないガイドさんも多いのではないだろうか。
それは、経験からくる余裕とも言えなくもないが、
余裕と慢心は表裏一体ということなのだろう。
ゲストではなくお願いして潜らせてもらっている僕らの慢心で、
福ちゃんに「オクトパスを渡してしまった」経験をさせてしまって何だか申しわけない。
そもそも自己責任で潜っている僕らのエアを福ちゃんが管理する言われもない。
慣れてくると「残圧0のときに陸上にいればいいや」くらいになってしまいがちだが、
残圧30以上(状況で異なるが)でエグジットすることが基本なんだと再確認する出来事だった。
「もうほとんどエアがないから器材ごとチェンジしろ」と
僕の器材を水中で奪い取ったKカメラマンに聞かせてあげたい出来事でもある(笑)。
※まあ、カメラマンがゼロまで潜る選択はありだと思うが。