スキューバダイビング殺人事件

こんなことを考えたことはないだろうか?

もし、ダイビングで人を殺すなら……。

ドラマやニュースで簡単に尻尾をつかませる(ように見える)殺人事件を見ると、
つい考えてしまう。
雨の日は物的証拠が残りづらいというが、水中だったらと……。

こうしてにわか三文シナリオライターになったダイバーは、
殺人の方法として真っ先にこう考えるはずだ。

タンクのバルブを閉める。

2人きりで潜ることを提案し、後ろからタンクのバルブを閉めて羽交い締め。
死んだところでバルブを元に戻す。

少し気の効いたシナリオライターならもう少し味付けするだろう。
あらかじめウエイトを隠しておいた根のそばで、
相手に「タンクが外れたから」とまずは嘘をつき、
背後からタンクをなおすフリをしていウエイトをつける。
こうして浮き上がれないようにしてからバルブを閉め、
ぐったり横たわったところで、ウエイトを回収。バルブを元通りに……。

もちろん、考えるだけで本当に人を殺す人はいない……と思ったら、
さすがは欧米(?)。本当にやった(と疑われている)ダイバーがいる。

■ハネムーン殺人事件として報道 (英語検索「スキューバダイビング 殺人」でトップ)
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/us_and_americas/article4182003.ece

ざっくりとした和訳は以下 (※私の英語力の範囲です……)

■11日間のグレートバリアリーフのスキューバダイビング旅行中、
ダニエル・ワトソン(バーミンガム、アラバマ州)は、
彼の花嫁であるクリスティーナ・メイ・ワトソンを溺れさせたとして、
殺人罪で起訴された。
■ワトソン(バーミンガム、アラバマ州)は、彼の妻は、ダイビング中、
数分パニックの状態だったと警察のインタビューの中で主張。
彼女はバタバタもがき、彼のマスクをつかんだり押したりした。
彼女は目を見開き、彼に手を伸ばしながら水底へ沈んでいった、と。
■ワトソンはレスキューコースの認定を受けたダイバーで、
初心者の妻のバディであった。
彼は経験豊富なダイバーであるにもかかわらず、
彼女をレスキューするより、助けを求めに行くことを決めた。
ダイビングツアーのリーダーの一人が、彼女を水面に引き上げ、
蘇生を試みるも失敗。
■他のグループのダイバーが、彼のバディを撮ったときの写真に、
たまたまその時の様子が写っていた。
写真の背景には、水底に横たわる彼女と、
彼女に向かって駆け寄るダイブマスターの様子が写っている。

■ワトソンが彼女のエア供給を断ち(バルブを閉め)、彼女が死ぬか、
それに近い状態になったところで、
水底に沈め、バルブを元に戻したと、警察は見立てている。
■クイーンズランド州の法廷で数カ月の調査の結果、
死に疑わしい状況があるとしたが、
彼の弁護士は「彼には動機がない」と主張した。
■しかし、彼女の父親トーマスは、結婚前に、ワトソンが生命保険の増額と受取人を
彼一人にする変更を彼女に求めたことを聞いたと主張。
そして、「彼女は(実際には変更しなかったものの)彼に変更したと
嘘を言うことに決めた」とトーマスは言う。
■警察は長引く法廷バトルの第一歩として彼に対する令状を準備。
■当初、事故だと考えた警察も、供述の詳細をいくつか変えた時に不振に思った。
■検視官は、彼女の死を裏付ける健康的な問題を見つけることはできなかった。
また、テストの結果、彼女の器材に問題はなかった。
■クイーンズランド州のグラスゴウ検死官は、正確な状況はわからないが、
殺人を立証するに足る十分な証拠があるとの所見を示した。
■ワトソンは殺人容疑で正式に起訴され、検察は、
アメリカにワトソンの身柄引き渡しの申請を行なった
(※ワトソンはアメリカ人で、事件が起こったのはオーストラリア)。
■アメリカのアラバマ州に住む彼女の家族たちはひと安心。


(その後)

事件は2003年。
2008年にクイーンズランド州で殺人により告発されたワトソンは、
2009年により少ない過失致死の容疑で罪を認め、
クイーンズランド刑務所で18カ月の刑期を2010年11月に完了。

裁判で有罪を認めたワトソン氏に対して18カ月というきわめて寛容な判決を言い渡したが、
ワトソン氏の故郷である米アラバマ当局はこれを不服としており、
ワトソン氏が米に到着次第、殺人及び誘拐罪で起訴するとみられている。
しかしアラバマ州では死刑が認められていることから、
オーストラリア政府は米政府に極刑にはしないよう要請しこれが受け入れられる。

2010年11月25日木曜日。
ロサンゼルスへ到着したことで、そこで彼は拘留される。
金銭上の利益のための誘拐と極刑に値する殺人として、
大陪審によって告発された模様。

■その時のニュース

http://www.youtube.com/watch?v=uvgiTjJn6PI
※0:22:彼女が沈んでいく様子
※0:55:殺人を再現して検証している様子

それにしても、本当に計画殺人だとしたら、稚拙極まりない。
私と同じように、そこそこダイビングを長くやってきた人なら、
「もっと、うまくやれるプランはあるのに……」と水中での殺人プランが浮かぶはずだ。
転じて、実は人知れず完遂した水中殺人もあるのでは……。

あなたのバディは信頼できますか?

【余談】
日本の検索サイトで「スキューバダイビング 殺人」で調べると、
名探偵コナンがトップ。そしてズラリ。日本は平和(笑)。
※興味がある方はどうぞ。

■前編①
http://www.youtube.com/watch?v=M2NltmdO_ps
■前編②
http://www.youtube.com/watch?v=CedBouQt_J4&feature=related
■後編①
http://www.youtube.com/watch?v=u8aspeELc_Y&feature=related
■後編②
http://www.youtube.com/watch?v=1cTPJ-1j98I&feature=related

 

 

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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