西日本初!? ダンゴウオの抱卵
(C)SATO NAGAAKI
水温の下がる季節でも、どうしても潜って会いたいのがダンゴウオ。
そんなスーパーアイドル、ダンゴウオのスペシャリストといえば、
南三陸町・志津川「グラントスカルピン」の佐藤長明氏。
最近では世界初のダンゴウオをテーマにした写真集が話題を集めておる。
(河出書房新社・刊/佐藤長明・著)
津波でお店が壊滅してしまった佐藤殿に「香住ダイビングサービス」が声をかけ、
期間限定で「グラントスカルピン香住店」がオープン。
ダンゴウオをフォーカスしたダイビングを開催するということで、兵庫県・香住へ突撃取材!
■和尚の潜り歩き @香住
「スキルアップ寺子屋」にコメントをいただくためメールでのやりとりはしておったが、
実際にお会いするのは、震災後はじめて。
早速、ダンゴウオ・ダイビングのスタート。
まずは、簡単なレクチャーから。
そして、ビーチへ行って、皆、壁にへばりついてスパイダーマン・ダイビング。
佐藤殿が指さす、一見なんの変哲もない穴の中をのぞくも、
ん????????
よ〜く、穴の中に目を凝らすも、やっぱり、????????
そこで、目を凝らさず、目の焦点を変えてみると、!!!!!!!
な、な、なんと、ダンゴウオの抱卵!!!!! ぬお〜〜〜〜
って、感動と写真がまったく釣り合っていないので(笑)、
佐藤殿が志津川で撮った写真を紹介。
(C)SATO NAGAAKI
でかい。とにかくでかくて、まん丸と肥えている。
穴の中にちょこんとダンゴウオがいるイメージで見ていたので、
立派な背ビレを目一杯広げるオスが、からだ全体を使って穴を塞ぐ様子に目がなれず、
なかなか状況が理解できなかったというわけじゃ。
これまでも日本海の海でも抱卵はあちこちで営まれていたはずじゃが、
こうしていとも簡単に見つけてしまうのは、
長年、志津川でダンゴウオとじっくり向き合ってきた佐藤殿の”目”がなせる技。
ダイビング後、佐藤殿によるダンゴウオ・スペシャリティ。
基本的なことから、生態、撮影のコツ、探すコツまで目からウロコのことばかり。
常識、定説を覆す話もあって驚きと感動の連続。
一例を挙げてみよう。
■定説
「水温が高くなるとダンゴウオは深場へ移動する。夏場はダンゴウオは見られない」
■佐藤殿
「移動しないと思います。そもそも移動しているところを見たの?って思います(笑)。
ダンゴウオの遊泳力や私の観察では、行動範囲はかなり狭い。
水温上昇や抱卵で体が弱り、食べられてしまう確率が高まるので数は減ると思いますが、
間違いなく1年中見られるはずです」
他にもわしが2〜3年と思っておった寿命が1年だったり
(自然環境の場合。寿命の定義にもよるが)、おもしろい話がいっぱい。
これ以上は営業妨害になるので、後は実際にスペシャリティを受けて、な。
ということで、目からウロコどころか目玉ごとポロリな1日となったのじゃ。
この日は、「NORIS」のイントラが集結。佐藤殿のスキルを引き継いだ
彼らのダンゴウオスペシャリティもまた内容が濃いじゃろう。
【SPECIAL】
「香住ダイビングサービス」の今井学氏に聞く、
「グランドスカルピン・香住店」オープンのわけ。
Q.佐藤さんとの関わりは?
A. 香住の海でもダンゴウオが見られるので、
以前からもっとしっかりと勉強したいと思っていました。
そこで、去年、ダンゴウオのスペシャリストである佐藤さんに会いに、
志津川に行く予定だったんですが、震災であのようなことになって……。
Q. どういう経緯で香住店をオープンすることに?
A. 以前から面識はあったし、
共通の知人から「まだ営業を再開していない」と聞いていたので、
佐藤さんの何かのきっかけになれば、また、香住の海を
佐藤さんの目で見ていただきたいと思ってお声がけさせていただきました。
Q. 実際、一緒に潜ってどうでしたか?
A. 驚きのひと言です。
長年潜っていて一度も見られなかったダンゴウオの抱卵を見つけたときは鳥肌モノ。
いろいろ教えていただき、大変勉強になりました。
Q. 今後、この体験がどう活きると思いますか?
A. これからのダイビングのキーワードは「生態観察」だと思うんです。
ただレアモノを見て終わりではなく、通年の変化を感じたり、
生物たちの営みに興味をもっていただければダイビングの幅も広がると思います。
今回の企画自体やダンゴウオの抱卵も、
ゲストが刺激を受けるきっかけになればいいなと思っています。
★「佐藤長明さんインタビュー“ダイバーにできること”」に続く、