全自動コンピューターで潜る日がやってくる!?

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〜やどかり仙人の炬燵話〜

世の中の80-90%がダイビングコンピューターを使っているそうな。
いくらヤドカリ爺がダイブコンピューターはダイブテーブルのチョー楽観論的拡大解釈だなんていっても、
所詮はマイノリティーどころか、単なる異端者といわれかねない情勢であります。
(大瀬崎で午前と午後1回のダイビングをするのは、
2000円のダイブテーブルで十分に用が足りると腹の底では思っておりますが、、、。)

ここまできたそんな情勢にヤドカリ爺一人で立ち向かうわけにもいかず、
ぶつぶつと文句を言わず、減圧理論がどうの、アルゴリズムがどうのなんてことは
見ざる、言わざる、聞かざるに宗旨替え、ダイブコンピューターに
一切合財お任せダイビングもありかなと年頭にあたって妄想したのであります。
(これまでのスタンスと違うと、またお叱りを受けそうでありますが)。

ただし、徹底した全自動ダイブコンピューターがあればという条件つきであります。
浮上スピードが早すぎれば警告。
また減圧停止、シーリング警告なんてのは現在のコンピューターなら当たり前でありますが、
そんなレベルの計器の延長的存在ではなくて、大型のスクリーンに文字や数字で警告が出る。

さらには、コンピューターのスクリーンなんぞモニターしてなくても、
警告音、振動サイン、ライトの点滅なんて手段を使って、
ダイバーを安全領域にとどまらせ、リミットに近づいたら追いたてて浮上させて、
時間を稼がしたり、終了させる、こんな全自動コンピューターが、
そろそろあってもよい頃かと思うのですな。

何のダイブプランもなくダイビングをしても、ある深度での無減圧リミットに近づいたら、
携帯電話のように、呼び出し音が鳴り、反応がなければ次にピカピカと発光し、
さらにマナーモードのようにぶーぶーと振動して、スクリーンを見させる。
ダイバーが反応して対応するまで、コンピューターがわめき続ける。

深度が変われば無減圧リミットを計算し直し、その深度での消費率を計算して、
ある空気残量になったら騒ぎたてる。設定しておけばその深度に到達して、
それ以上深く行こうとするとぶーぶーと文句を言う。

ダイブコンピューターのユーザーの本人だけでなく、
ダイバーがそれぞれのリミットに近づいたときには、
パトカーのルーフライトのようにこれまたちかちかとLEDライトが光って、
隣のダイバーやガイドにも知らせる。

こんな全自動のダイブコンピューター(全自動というのは洗濯機ではずいぶん昔からアリマスな。
あれは構成要素からすれば、たいしたテクノロジーであります)が、
そろそろ登場の気配であります。いやすでにあるやもしれません。

ダイブコンピューターの最大の将来性というのは、かねがね警告機能だと思っておりますが、
液晶スクリーンの量産による大型化、充電式のバッテリーのレベルアップ、
LEDライトといった技術を、現在のダイブコンピューターに組み込めばよいだけのことで、
見方を変えればけっしてハイテクでも、とりわけ難しいことではありますまい。

当然腕にくくりつける時計の親戚のようなものでなく、
大型のスマートフォンかアイパッドのようになるでしょう。
胸の辺りに飛行機のコックピットのようにセットされる、
あるいはヘッドアップディスプレーになるに違いありません。

さらには、水温が低いとか、運動量が多いといったリスク(限りなくありますが要因)への、
安全マージン設定なんてことも、理屈の上では簡単であります。
ダイブコンピューターというと、えらく難しい計算をしていると思われておりますが、
中に入っている計算式、アルゴリズムなど、もともとヤドカリ爺の算数能力(数学にあらず)でも
理解できる程度でありますから、マージン率などの設定など、お茶の子さいさいであります。

とまーここまではヤドカリ爺の妄想ですが、すでに皆さんご存知のように、
リブリーザーは供給するガスの酸素分圧をコンピューターでコントロールしています。
つまり呼吸装置にコンピューターが組みこまれているわけです。

最近はPADIなどが浅い深度域でのリブリーザーの使用を提唱し始めて、
多くのメーカーからリクリエーション専用のリブリーザーが次々に登場しております。
なかには組みこまれているコンピューターをガス供給のコントロールに使うだけでは、
モッタイナイとばかりに、減圧情報を提供するダイブコンピューターの機能を同時に持たせ、
さらには警告機能を充実させた、いわば全自動のリブリーザーが最近の話題になっております。

普通のスクーバーの何倍もの長時間、ガスが持つリブリーザー、
ガスの心配をしないでもよい代わりに、その反対に減圧症のリスクを考えなくてはならず、
どうしても今度は無減圧リミットを守らせる警告システムが必要になるということでしょうか。

ともあれここまでダイブコンピューター依存型のダイビングが主流となれば、
それがコンピューター情報依存型の社会的な傾向と一緒になれば、
当然依存型を通り過ぎて、被支配型のダイビングは考えられるわけでして、
中途半端にダイブコンピューターの情報を応用するよりは、
完全制御されちまえってことは、ひとつの道であります。

ただ残念なことは、ダイブコンピューターが提示し、警告してくれる空気残量などは、
まさにドンぴしゃりでしょうが、減圧に関する情報はあくまでも数学的な情報に過ぎず、
生理的な個人差までは考えてくれるわけではなく、
ダイブコンピューターに丸投げでお任せするには、
このリスクヘッジは結局ダイバー本人の責任ということが前提であります。

もっとも、ダイブテーブルで鉛筆なめなめ計算するのも、
ダイブコンピューターのモニターを見ながら浮上するのも、
全自動のダイブコンピューターの警告サインでダイビングを進行させるのも、
ハードのテクノロジーが変わっただけで、
つまり便利さが変わっても根本の減圧理論の不確かには変わりがなく、
このダイバー本人の責任は永久に変わることがないわけであります。

その意味では、コンピューターの減圧情報をどうとらえて斟酌するかは
ダイバーの知識と理解の問題で、結局どこまで信じるかによるってことでしょうかな。

もうひとつ海の中でこの騒々しいダイブコンピューターに
どれだけ我慢できるかも大きな問題であります。

とはいえ、否応なく全自動ダイブコンピューターの時代は目前であります。

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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