夏合宿 器材運び
前の日記の続き。息抜き息抜き〜♪
三宅島に無事到着した僕らは民宿「つむら」さんへ。
車中、三宅島の自然を見ていると普通は胸躍るのだろうが、
普通ではないのでとにかく憂鬱。
あぁ、これから“あれ”が始まるのか……。
そして、いよいよ海へ。
先輩の慣れないマニュアルの運転でカクンカクンしながら、
ボロボロのバンは僕らの重い気持ちを乗せて海へと向かう。
そんなうちらの気持ちを量ってか、
自分の拙い運転から気を反らすためか、
ここで島に来て、はじめての無茶ブリ。
「寺山、なんか大声で歌って」
はじめてのおつかいよりよっぽど大冒険。誰も泣いてくれないし。
もう何度もヤケになっているので、ヤケついでにヤケになって歌う。
あるぅ〜ひんけつぅ!
森のなかんちょおぉ!
熊さんにんにくぅ!
出会ったんそくぅ!
鼻くそ、森の道ぐそ〜〜〜[m:71]
熊さんに〜〜……
大学生の歌う歌ではない。でもヤケだからしかたない。
やがてバンはメインロードをはずれ山を下りていく。
ああ、海が近づいているよ……。
普通はテンション上がるとこだが、普通じゃないのでテンションは下がる。
しばらくすると、
真夏の太陽が降り注ぐ三宅島の紺碧の海が目の前にパァ〜っと広がる。
僕らの気持ちはズ〜ンと落ち込む。
そして、遂にあれが始まる。
そう、法政アクア名物、“器材運び”だ。
その名の通り、1年生がクラブ員全員の器材やタンクを運んで、
所定の位置にきれいに並べるのである。
僕らはこのために、合宿前にミーティングを繰り返し、
いかに早くきれいに並べるかを話し合ってきた。
このときに器材運びにおける目標設定をしてレポートにするのだが、
何度も何度もやり直しをされるうちに先輩たちの求めるものに気が付く。
それは、ただ早くきれいに効率的に並べるのではなく、
団結やら限界への挑戦といった、何やら根性的なものを含んだものだった。
例年ならここで素直にそっちの方向へ向かっていくらしいのだが、
ひねくれ者ばかりだった僕らの代は、
意地でも目標に“団結”の文字は入れず、
“5分以内に終える”など具体的数値にしてみたり、
“後ろ向きな気持ちでもやりきる”など反抗的な目標にしてみたり。
なんて、かわいくない新入生(笑)。
勝ち負けのないダイビング、ただ海を楽しみたいだけで始めたダイビング。
到底、こんな体育会的なことは認められない。
剣道部のときならやってもいいが、僕は女子と海で遊びたいだけなんだってば。
しかし、そこまでの意地も持続力もないのも僕らの代の特徴。
目標を出すたびに怒鳴られやり直しをされる現実がだんだん面倒くさくなり、
遂に誰かが一言。
「なんか、とりあえず“団結”を目標にしとかないと前に進まなくね?」
「上もOBの手前、これやらせないとマズイんだろうしさ」
いつだって新入生や新入社員の指摘は意外と的を得ているのである(笑)
ということで、
気まぐれに一瞬だけ吠えた反骨精神はすぐに面倒くささに変わり、
目標にはしっかり“団結”の文字を入れ、
発表では団結をバディシステムにまでつなげるサービスっぷり。
そして、先輩に「やっと気づいたか」的に褒めてもらい、
ちょっと嬉しかったりする。大学1年生にして、このダメ社員っぷり(笑)。
ま、大学1年生でダメ社員体験をしておいたことは後に大きく生きたけど。
話を三宅島に戻す。
先輩たちが腕組みをして配置につき、
「はじめ!」の合図で器材運びが始まる。
「ファイット〜」
「声出てないよ〜」「それが限界か!」
「おせ〜ぞ」
大久保浜に突如出現する異質軍団に、他のダイバーたちは
びっくりしてみたり、ニヤニヤしてみたり、汚い目でみたり……。
ただ走るのでさえ辛い砂浜で、
猛暑の中、タンクや器材を持って何往復もするのは正気の沙汰ではない。
器材を並べ終わったころには、疲労困憊、テンションは地の底。
中にはケガをする人まで。
しかし、クラブの最大の目標は“安全潜水”。
当時、この人たちは気は確かなのかと思ったものだ。
あぁ、明日も器材運びか……。
しかし、合宿は始まったばかり。
続く。
※おまけ
悪魔の笑顔
クラブでのダイビングは完全ウオッチ制。
ウオッチ班は曳航係、引き上げ係、連絡係、記録係など役割が決まっていて、
潜っている班の泡を追いかけ緊急事態に備えている。
このとき先輩からは、
「海からちょっとでも目を離したら、それが事故につながるんだ!」
と常に言われている。笑みなどとんでもない。
しかし、カメラを向けられた先輩はご覧の通り。
このとき、横にいる若き和尚は心の中で「あ、このヤロ!」と思っているが、先輩とはそういうものなので仕方ないのである(笑)。