ヒトデが立ち上がる!? この夏出会った生き物たちの珍しい繁殖行動を一挙公開

この近年、海の生き物たちの繁殖行動観察が今まで以上に人気となってきている。カメラの性能が良くなり、撮影しやすくなったということもあるが、現地で頑張るガイドさんたちが朝晩問わずに潜り、どのような生き物がどの時間でどんな生態を見せるかのデータをとったり、観察を繰り返したからこそ、ここまで生態観察を重視したダイビングが盛んになってきたのだと思う。今回は、この夏に撮影できた普通種の魚類から、普段なら想像もしないような生き物たちの繁殖行動を紹介していきたい。

よく見る魚たちの普段の姿とは違った繁殖行動

私も繁殖行動の撮影は、昨年から力を入れて取り組んできた。いつもは岩陰に隠れていたり、地味な色をしたりしている生き物たちも、この瞬間は他の色鮮やかな生き物たちよりも際立つのである。

ヤマドリの産卵前の求愛行動@山口県青海島

ヤマドリの産卵前の求愛行動@山口県青海島

さらに繁殖のためにペアで浮上する魚たちや、自分の卵を必死に守る雄の姿に感動してしまう。

浮上しながら放精・放卵を行うヤマドリ@山口県青海島

浮上しながら放精・放卵を行うヤマドリ@山口県青海島

産卵中のスズメダイ@兵庫県竹野

産卵中のスズメダイ@兵庫県竹野

産まれたてのスズメダイの卵@兵庫県竹野

産まれたてのスズメダイの卵@兵庫県竹野

イバラカンザシや二枚貝の一斉産卵に遭遇

魚たちの珍しい瞬間に遭遇することはとても嬉しいことである。私自身、この夏は運に恵まれることが多く、魚たち以外の繁殖行動も数多く写真に収めることができた。

色鮮やかな花が咲き乱れるように見えるのは、イバラカンザシという生物の群生。英名では「クリスマスツリーワーム」と呼ばれる。体長は5〜7センチほどでハマサンゴの仲間に棲管(せいかん)という自分が住むための管を形成し、その中に定住している。

色鮮やかなイバラカンザシ@愛媛県愛南

色鮮やかなイバラカンザシ@愛媛県愛南

そんなイバラカンザシが、この夏に愛媛県の愛南で大潮の夕方に一斉産卵をした。イトヒキベラの撮影をしているとガイドさんが「こっちですごいことが起きてる!」と言わんばかりに呼びに来てくれた。イバラカンザシの群生まで案内されて、到着して見てみると多くの個体が放精をしていて真っ白になっていた。

放精中のイバラカンザシ@愛媛県愛南

放精中のイバラカンザシ@愛媛県愛南

放精をしている個体を数分、撮影していると今度はオレンジの物が糸状に流れてきた。この糸状の物はすぐに卵だということに気がついた。観察してみると、まるでベルトコンベアがぐるぐると周りながら卵を上まで運び放出しているようであった。

産卵中のイバラカンザシ@愛媛県愛南

産卵中のイバラカンザシ@愛媛県愛南

夢中で10分ぐらい撮影していたのだが、ふとあたりを見渡すと、水底から1mに真っ白な世界が広がっていた。またよく見ると、イバラカンザシだけではなく二枚貝やゴカイなどの仲間たちが同じ時間帯で一斉に放精・放卵をしていたようで、それらの様子も確認することができた。

二枚貝の仲間の産卵@愛媛県愛南

二枚貝の仲間の産卵@愛媛県愛南

立ち上がるヒトデの産卵

イバラカンザシや貝の産卵も驚かされたのだが、さらに驚かされた生き物がいた。それがヒトデである。場所は兵庫県の竹野。竹野のビーチでは夕方に数々の生き物が繁殖行動をしている。生き物たちの撮影をしながら移動していると、砂地の真ん中でヒトデが立っていたのだ。

立ち上がるヒトデ@兵庫県竹野

立ち上がるヒトデ@兵庫県竹野

これは産卵しているのか?」と停止してよーくヒトデの体を見てみると、全体から次から次へと卵が溢れ出てくるのである。溢れ出た卵を見ていると、面白いことに潮に乗って流れていくのではなく、その場にこぼれ落ちていった。その卵は数分間で、そのまま砂地に溜まっていたのだ。他の生き物に食べられないのか?浮遊して遠くに種を飛ばさないのか?などと色々な疑問が沸いた瞬間であった。

ヒトデの産卵@兵庫県竹野

ヒトデの産卵@兵庫県竹野

生き物の繁殖行動は、どこの海でも見られる可能性がいくらでもある。普段自分が潜っている場所でも普通種をじっくりと観察してみると意外な発見があるので、是非狙ってみてほしい。

撮影協力:シーアゲインT-styleDIVE愛南

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PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。