バルブが半開で呼吸ができない
※本記事はDAN JAPANの公式ブログ「Divers Helping Divers」2019年2月26日の投稿からの転載です
バルブが半開だったため、水中でダイバーが呼吸できなくなった
バディのオクトパスを使用し、エアの供給を受けながら浮上しなければならなかった
報告されたケース
水深21.3mへのボートダイビング計画に、ダイバーがグループで参加しました。水温は8℃、透明度は12m程度という水中環境です。
ダイビング開始から約10分後、バディから3mほど離れて潜っていた男性ダイバーが、トラブルの合図を出しました。この合図からは、エア切れか、エアが少ないのかは分かりませんでしたが、2人のダイバーがアシストに泳いでいきました。
トラブルの合図を出したダイバーは、ハンドシグナルでタンクバルブに問題があると示しました。確認したところ、タンクバルブは完全に開いており、残圧計は十分な残圧があると表示されていましたが、エアを吸うことが出来ませんでした。そこで、バディがダイバーの近くに泳いでいき、オクトパスで空気供給を開始しました。その他のダイバーは、2人が落ち着いてコントロールされた浮上ができるか、しばらくの間近くで確認し、2人が浮上後、最後まで計画通りダイビングしました。
ボートに戻った後、トラブルダイバーは器材準備の際にタンクバルブを完全に開けづらかった、と認めました。タンクバルブが完全に開いているかどうか分からずに器材を装着したのです。しかも、バディにもそのことを言わずにいました。バルブが半開だと、水深が深くなり環境圧が増加するにつれて、ファーストステージに十分な流量が供給されないことがあるのです。
専門家からのコメント
この状況は、さまざまな問題を提起します。毎ダイビング前に、器材が適切に作動するか確認するのは、各ダイバーの責任です。このダイバーは自分のタンクバルブに問題があることを知っていたのに、ダイビングすることを選択しました。これは最悪な結果に繋がる可能性がありました。不調が予想される器材で潜るのは、慎重なダイバーとは言えません。
バディにトラブルを言わない、という選択も問題でした。調子が悪い器材によってトラブルが発生した場合、一緒に潜っている人達はトラブルに対応せざるを得ず、その人たちのダイビングにも影響を与えて迷惑をかけます。
自分の選択は、自分だけに影響を与える訳ではありません。もしバディと今回の状況を潜る前に話し合っていれば、ダイビングをしないという選択をしたかもしれません。少なくとも、トラブルになるかもしれないと予想し、バディは近くで潜るようにしたでしょう。目視できる近いところにいても、緊急時には遠すぎることがあるのです。実際、今回のトラブルで最初に助けに来たのは、バディ以外のダイバー達でした。
もしかしたら、対処したダイバー達は単に泳ぎが速かったのかもしれません。しかし、バディに手が届くところにいることは大切です。ほぼ40%のダイビング死亡事故で、バディが離ればなれだったと報告されています。
器材は、すべてを点検・メンテナンスするよう心がけてください。器材が1つでも調子が悪いのであれば、ダイビングしないのが得策です。少なくとも、ダイビングするかどうかを決定する時、バディに相談してください。
また、透明度がよい海でのダイビングでは、自分とバディの距離が開きがちになります。しかし、単純なトラブルがあっという間に緊急事態に悪化するかもしれないので、物理的に近くにいるようしてください。そうすれば、トラブルに対処するまでの時間を短くできますし、トラブルが悪化しないよう事前に予防することが可能です。
– Marty McCafferty, EMT-P, DMT, EMD-A
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