熱海の土石流災害後、捜索を行うダイバーたち。UWSUAの活動と想いとは

2021年7月3日、熱海市伊豆山地区で長時間にわたる豪雨によって発生した土石流。行方不明者の捜索は8月17日現在も継続して行われているのが現状だ。

そして、海での捜索には、現地のダイバーも参加している。捜索に加わったダイバーたちは「認定NPO法人アンダーウオータースキルアップアカデミー(以下、UWSUA)」のメンバー。災害発生の当日、伊豆山港にて心肺停止者2名を発見した公益社団法人日本水難救済会 静岡地区水難救済会より、UWSUA事務局長の苅部徹さんが応援要請を受け、翌日にはメンバー10名、その翌日には8名で捜索活動を行なった。

熱海土石流捜索活動

安否不明者の発見には至らなかったものの、またいつ起こるかわからない災害や水難事故に備え、日々訓練を行なっているUWSUAとはどういった団体なのか。その活動や想いに迫る。

迅速に、確実に、救助活動を行うためにUWSUAを発足

アンダーウオータースキルアップアカデミー

UWSUAは、水難事故発生時に訓練された民間ダイバーが救援・救助活動に参加することで地域の安全と安心に貢献することを主な目的とし、2009年4月に静岡県伊東市で設立された。同年7月にはNPO法人として認証され、2014年には静岡県知事から県では第1号の認定NPO法人としても認定を受け、2016年には静岡県内の水難救済会救難所としては初のダイバーによる救難所「静岡広域DRS救難所」の役割を担うことに。

アンダーウオータースキルアップアカデミー救助訓練

団体の活動は、理事長である村田清臣さんが、30年ほど前から地元のインストラクターたちと行っていた、ダイバーや釣り人の行方不明者の捜索活動から始まっている。団体設立前は、緊急時に急遽集まったメンバーで救助や捜索活動を行なっていたため、インストラクターとはいえ水中捜索の経験やスキルが統一されておらず、スムーズに活動を行えないことがあったそう。実際に「ちゃんと捜索しているのか?」とクレームが発生することも。そこで、同じ内容の訓練をきちんと受けたメンバーが集まるグループを作ろうと、団体を発足したのだ。

関係機関と連携しながら広がっていくUWSUAの活動

アンダーウオータースキルアップアカデミー救助訓練

現在、潜水士資格を持つダイビング指導者を中心に、74名の会員が所属する団体となったUWSUA。彼らの活動は水難救助活動やそれに向けた定期的な訓練のみにとどまらず、ダイビング事故発生に備え地域の消防や順天堂大学医学部附属静岡病院静岡県東部ドクターヘリとも連携した合同勉強会の継続的な開催や、潜水事故防止のためのダイビング指導員や潜水士向け安全講習会の開催なども行っている。

アンダーウオータースキルアップアカデミー救助訓練

昨年は緊急事態宣言明けの6月以降はダイビング関連の事故が多く、活動期間が通常より短かったにも関わらず事故の件数が例年並みとなったこともあり、関係機関との意見交換に加え、事故現場での対応についての反省会も行われた。

また、伊東地区や東伊豆町地区など活動地域での消防・警察・海上保安部・自治体・漁協との水難事故対策会議にて、水難事故発生時の各機関の動きやここ数年の管内の水難事故発生状況の確認も定期的に行なっている。こういった日々の活動や連携が関係機関と持てていることもあり、伊豆山地区での捜索活動もスムーズに行えたのだろう。

アンダーウオータースキルアップアカデミー会議

その他、2011年の東日本大震災後は、被害を受けた現地の漁協からの依頼で、水中の瓦礫撤去をはじめ、復興支援活動も継続的に行なっている。加えて、次世代により良い自然環境を残すための海底・湖底の清掃活動も。

アンダーウオータースキルアップアカデミー清掃活動

磐石で持続可能な体制作りを目指して

水難事故が発生した場合、どのような流れで救助に向かうのか。第一報が警察や消防、海上保安庁に入り、その後UWSUAのメンバー3名に事故状況がメールや電話で伝えられ、他のメンバーへLINE。そのメッセージを見て、事故現場の近くにいるメンバーが現場へ向かう。

現在、体制が整っているのは伊東市と東伊豆町で、救助活動も富戸、八幡野、川奈といったダイビングエリア周辺が中心となる。しかし、各機関からの要望もあり、今後はメンバーやエリアを拡大していきたいという。具体的には、伊豆半島の各エリアに核となる人を作り、そこからすぐに出動できる体制作りを進めている。

アンダーウオータースキルアップアカデミー

また、東日本大震災後の復興で培ってきたノウハウを、今後予測される南海トラフ大地震などの大規模災害が万が一発生した際には活かせるようにしていきたいとも。

そんなUWSUAの今後の活動について、事務局長の苅部さんへその想いを伺った。

苅部さん

水難事故や災害は起こらないことが一番ですが、万が一発生した場合でも、私たちダイバーは日頃から海を職場としているので、すぐに駆け付けることができる可能性が高いです。ですので、その時に速やかに活動できるような体制を、ここ東伊豆だけでなく、他の地域にも広げていきたいと思っています。そのためにはUWSUAのメンバーを増やしながら、メンバー全員に定期的な訓練に参加してもらうことで、二次災害が起こらないようにしていきたいです。

苅部さんも言うように、水難事故や災害は起こらないことが一番であることは間違いない。しかし予想できないような自然災害も発生する昨今は万が一に備え、水辺の安全のためにダイバーならではの活動ができるよう、日頃から合同訓練の開催など、関係機関と顔の見える関係作りが重要となる。継続してそのような活動を行なっているUWSUAの今後の活動にますます注目をしていきたい。

取材協力:認定NPO法人アンダーウオータースキルアップアカデミー

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PROFILE
IT企業でSaaS営業、導入コンサル、マーケティングのキャリアを積む。その一方、趣味だったダイビングの楽しみ方を広げる仕組みが作れないかと、オーシャナに自己PR文を送り付けたところ、現社長と当時の編集長からお声がけいただき、2018年に異業種から華麗に転職。
営業として全国を飛び回り、現在は自身で執筆も行う。2020年6月より地域おこし企業人として沖縄県・恩納村役場へ駐在。環境に優しいダイビングの国際基準「Green Fins」の導入推進を担当している。休みの日もスキューバダイビングやスキンダイビングに時間を費やす海狂い。