8割以上のダイバーが感じたことがある”えも言われぬ不安”の正体
経験の積み重ねで克服できる!?
先日行ったアンケート「えも言われぬ不安を感じたことがありますか?」
なんと、8割以上ものダイバーが経験があることがわかりました。
“なんと”などと書いたのは、僕の周囲には「そんなの一度も感じたことがない」というダイバーさんも結構いて、感触的には半分もいないと思っていたからです。
ただ、”感じたことがある”というおよそ4割の方は、感じたことがあるけど、”今は感じない”という文脈が読み取れます。
この種のストレスは、経験を積むことによって、克服することができるのでしょうか。
想定外の出来事や、想定外のことが起こるかもしれないという想像によるストレスは、経験を積むことによって”想定の範囲を広げる”ことになりますから、確かに、経験を積むことは、根本的な克服法かもしれません。
ですから、えも言われぬ不安感を克服するには、スキルや経験によって”ストレス許容の範囲を広げ”、”その範囲内で潜り”、良い記憶を体に染み付かせていく積み重ねが大事なことは間違いないように思います。
過去と現在を含めて、えも言われぬ不安を感じたことがある人が8割いるのに対して、現在でも感じる人が45%なのは、そうした経験の積み重ねが関係しているのではないでしょうか。
ガイドさんでも感じる!? えも言われぬ不安
ただ、どんなに経験を積んだダイバーでも、えも言われぬ恐怖心に襲われることがあるようです。
一線で活躍する熟練のガイドさんから「レギュレーター呼吸が息苦しくなって」とか 「えもいわれぬ不安に襲われる」という告白を聞いたことがありますし、20年以上キャリアのあるプロカメラマンが、「最近になって海が怖くなってきた」とも言っていました。
これは、先述したような”範囲外”のケース、つまり、穏やかで自分の庭のような海を潜っていたガイドさんが、海外の超ドリフトスポットというあまり経験のない海でストレスを感じたのかもしれませんが、逆に海やダイビングのリスクを知れば知るほど感じることもあるのでしょうし、やはり、性格やその時の心理状況も大きいのかもしれません。
初心者で無茶に潜ってもへっちゃら人はへっちゃらですし、まずまずの経験を積んでいる自分は今でもエグジットしたくなるほどのストレスを感じることがたまにあります。
個人的には、感じたことがないという15%のダイバーは、自分とは人種が違うとさえ思います(笑)。
心理的な要因はいろいろ考えられますが、例えば、熟練ダイバーが初心者と潜っているときに、なかなか「怖いんですけど」とも言いにくいとか……。
こうした心理的なストレスに関しては、ストレスを感じていることを告白してしまうだけでも楽になるのかもしれません。
実際、とあるガイドさんは、「俺、深場が怖い」とゲストの前でも平気で言い、30mより深いところには絶対に行きません。
ガイドなのに?と思う人もいるかもしれませんが、僕は逆にすごいな~と思います。
パニックの”スイッチ持ち”の潜り方
また、えも言われぬ不安を感じる人が今でも45%もいることも個人的には驚きです。
僕はこれらのダイバーを勝手に”スイッチ持ち”と呼んでいます。
自分もその一員ですが、えも言われぬ不安を”克服”ではなく”封じ込めている”状態。つまり、発症してないだけのパニックのキャリア。
僕のように強度のストレスやパニックになったことがある人は、パニックの「スイッチ」を抱えて潜っており、何かのきっかけでスイッチがポチッとな~。
そうならないよう、気をつけて潜っていますが、経験を積むと、スイッチが入りそうな感触がわかるようになってきます。
そして、「これはマズイぞ」と思ったら、定番の「止まって、目を閉じて、プラスのことを考えながら大きく深呼吸」といった基本的な対処でリカバリーできるようになってきます。
冗談に聞こえるかもしれませんが、深呼吸しながら、エッチな想像をすると割と動悸がおさまったりします。
では、経験を積まなければダメかといえばそうでもありません。
以前、一緒に潜った経験豊富とはいえないダイバーさんが、水中で突然スイッチが入ってしまいました。
呼吸も動きもおかしかったのですが、そのダイバーさんは初めての経験にも関わらず、きちんと着底して深呼吸をしてリカバリーに成功。
他のグループ員の目が気にしてなかなか行動に移せない人が多い中、覚えた知識を、基本に忠実に行なったそのダイバーさんはとても立派だと思いました。
また、水中での不安は、陸上での不安を引きずった結果ということも少なくありません。
焦った状態でエントリーすると、スイッチオンの可能性は飛躍的にアップ。
潜る前のゆったりした行動、リラックスした心理状況は当たり前のようで本当に大事です。
まとめ
スイッチ持ちのダイバーは、まず、根本的には知識とスキルを充実させスイッチが押されないような蓋を作る。
そして、潜る前の情報収集やゆったりした行動でリラックスしてエントリー。
蓋にしっかり鍵をしてスイッチを守ります。
それでも、もし鍵が壊れ、蓋がパカッと開いてしまったら、深呼吸やイメージで対処。スイッチが押されないよう、最後は手で必死に隠しましょう。