世界初、減圧症を予防する「M値警告機能」搭載のダイブコンピュータ・DC Solar IQ1202
TUSAから発売されているダイブコンピュータ・DC Solar IQ1202。
前回のレビューでは、1週間続けて使ってもらった稲取マリンスポーツセンターの樋口さんに、主に陸上での使い心地、水中での使い心地、さらにはソーラー充電の実感を書いてもらいました。
今回の後編では、ダイブコンピュータには世界で初めて搭載された「M値警告機能」を中心にレビューをしてもらいます。
それでは樋口さん、お願いします!
減圧症予防に効果的、世界で初めて搭載された「M値警告機能」
今回一番気になっていたのが、この「M値警告機能」です。
ダイブサイトによってはダイブコンピュータの装備が義務付けられている場所もありますし、初級ダイビングスクールでもダイブコンピュータの使用を前提に指導しているスクールも多くなってきました。
にもかかわらず、ダイブコンピュータを使用されている方の中に、決して多いとは言えませんが、きちんと本来の使用目的を把握していないのではないか?と感じる事があります。
そもそも、DC Solar IQ1202などのダイブコンピュータを装着するのは、減圧症を防ぐためです。
脅かすわけではありませんが、マスクなどのソフトギアを含めてすべてのダイビング器材は、水中での生命維持のために必要だと考えています。
特にダイブコンピュータは、生命維持に直結するギアといえます。
減圧症を防ぐことの重要性は理解されていると思いますが、そのため(減圧症を防ぐため)にどの表示を気にかけておく必要があるのかを理解していないといけません。
無減圧潜水時間表示を常に気にしていないといけないのですよね。
無減圧潜水で潜ることの重要性
ダイブコンピュータなしで潜水を繰り返す、長時間のダイビングやディープダイビングをしてしまうなど、絶対に行ってはいけないダイビングをされた方もいらっしゃるかもしれません。
現実的にm実際のダイビングで減圧症にならないためには、「無減圧潜水」で潜ること。
オープンウォーター講習で習ったはずです。
ダイブコンピュータは、水中で常に「無減圧潜水できる残り時間」、もっと簡単に言うと「その水深にいてもいい残り時間」を表示してくれるものです。
この数字自体にも安全マージンは換算されていますが、今回世界で初めてDC Solar IQ1202に搭載された「M値警告機能」はこの安全性をさらに向上させてくれる機能と言えます。
M値警告機能がないダイブコンピュータの場合、水中撮影に没頭してしまって無減圧潜水の範囲を過ぎてしまうと、そのまま、水面に直接浮上してはいけない「減圧潜水」表示に切り替わります。
私も経験がありますが、カメラマンさんとの取材撮影中、気がついたら減圧潜水になる直前でドキドキしたことがあります。
通常のダイバーの方であれば、気がつかないで減圧潜水表示に切り替わると、ダイブコンピュータ故障した?とかバッテリー切れ?などと勘違いされるかもしれません。
ダイバーがレジャーの範囲で潜る際に自身の体と生活を守るためには、無減圧潜水は基本中の基本です。
DC Solar IQ1202のM値警告機能を体感してみての感想
IQ1202 DC Solarに搭載された「M値警告機能」は、減圧潜水に切り替わる少し前に警告を促してくれる機能です。
通常の設定であれば水深20mで無減圧潜水の残り時間が7~8分になったところでアラームが鳴り、画面に表示されるバーグラフが点滅、画面上にはM-OVという表示が現れます。
また、水深15mでは残り時間が12~13分でM値警告が出ます。
ギリギリを超える少し前で警告を発してくれる機能です。
この警告機能により減圧潜水を回避し、安全マージンを一層増やすことが可能になります。
日本国内の減圧症罹患者の過半数が無減圧潜水時間を守っているというデータもあります。
無減圧潜水時間は浅い水深になるほどメーカーの違いなどによって誤差が大きくなるので、より多くの安全マージンを取る必要があるのです。
※参考:ダイブコンピュータが示す無減圧潜水時間の危険性 | 株式会社タバタ開発・企画制作部 製品広報課
今回、ダイブコンピュータを合計3台用意し、このM値警告を表示してみました。
私も自分の体は守りたいので、このIQ1202 DC Solarで設定できる一番厳しい設定(M値の80%)にして、他のダイブコンピュータの設定を甘くし無減圧範囲内での潜水をしつつ、サポートダイバーに待機してもらい、実施しました。
減圧潜水をしないことが前提でつくられているダイブコンピュータで最もしてはいけないことは、減圧潜水になってしまうことです。
減圧潜水になった場合に必要な浮上時間などは表示されるまでわかりませんから、残圧が総浮上時間に必要なだけ残っているとは限らないからです。
DC Solar IQ1202は、気づけば無減圧潜水の範囲を超えてしまったという事態を避ける事に大きく役立ってくれると感じました。
無減圧潜水を超える場合は、水深も深いことが予想されます。
窒素酔いの影響も少なからずあると思いますので、ついうっかりも多くなるかもしれません。
これまでの無減圧潜水時間の表示だけでなくM値警告機能があることで、はっきりと「そろそろ浮上体勢に移りなさい」とIQ1202 DC Solarが教えてくれるため、意識を浮上に切り替えることができました。
教えてくれてありがとう、優しいなぁと感じつつ、ダイビングの終わりが無減圧潜水内で終えられることを確認し、落ち着いてエキジットポイントへの移動ができました。
ダイブコンピュータは、個人個人の体の状態まで把握はしてくれません。
同じ環境にいても風邪をひく人、ひかない人がいるように、守っていれば絶対安全という保証はありません。
その点でも、M値警告機能で少しでも安全マージンを稼いでおくことは、重要ではないでしょうか。
DC Solar IQ1202をモニターしてみてのまとめ?と気がついた点
今回は一週間という短い間のモニターでしたが、陸上でのトラブルは一切発生しませんでした。
ダイビング中に問題点もなかったです。
海況の都合でナイトダイビングをする機会がなく、バックライトを夜の海で試すことができなかったのは残念でした。
バックライトは、腕に装着した状態で顔の方に傾けると自動点灯する機能がついています。
ナイトダイビングの時にバックライトボタンを押したり、ダイブコンピュータの画面を水中ライトで照らしたりする面倒がなくなるのは便利ですよね。
水中では試せていませんが、陸上の暗所では問題なく機能していました。
自動点灯が楽しくて何度も腕を動かしてしまったくらいです(笑)。
加えて、いいところに気がつくなぁと感心してしまった点があります。
ロギングなどの際に、テーブルにダイブコンピュータを置いてログ付けをする場面は多いですよね。
そんな時に、DC Solarはベルトをフラットにすることができます。
ホントささやかなことですが、ここまで配慮されているダイブコンピュータで、ものづくり日本万歳とうれしい気持ちになりました。
気になった点を言えば、私の使用しているシェルドライスーツWaterproof D7の腕部分に装着したかったのですが、長さが足りませんでした。
ですので、一般の方が装着するように手首に装着して使用しました。
ただしこれは、別売りのエクステンションベルト(¥2,000)を購入することで解決できます。
お使いのスーツや装着したい場所の太さによって必要になるオプションです。
試したホワイトカラーですがベルト部分に若干色移り(変色)がありました。
スーツの素材や色によって発生する可能性があるのかもしれません。
今回はかなり海の透明度が悪い中のモニターだったので、海中で目立つホワイトはとてもありがたかったのですが…。
IQ1202 DC Solarの操作性がよいことが前提ですが、取扱説明書もとても丁寧で、取扱説明書を読んでも操作に行き詰まるダイブコンピュータがあることを知っている私としては、非常に好感が持てました。
※編集部注:TUSAの主要取扱説明書は全て以下のTUSAウェブサイトからダウンロードできます。
取扱説明書ダウンロード|TUSA
結論は、大いに「買い」
電池交換不要のソーラー充電機能によるランニングコスト0を達成し、水没のリスクも3年保証を付けるほどの太っ腹、潜水中の安全マージンを向上してくれる「M値警告機能」が日常的に装着できるコンパクトなボディに詰め込まれている、このIQ1202 DC Solar。
信頼の国産製品で、初心者の方からベテランダイバーまでお勧めできるダイブコンピューターであることは間違いありません。
一週間モニターしてみて、大いに「買い」のダイブコンピュータだと感じました。