気になるドライスーツを試してみました。~ガイドが愛するゼロ(ZERO)のラジアルスーツ~
気になる“プロっぽい”ドライスーツ
1年中ドライスーツを愛用する方も、衣替えする方も、とにもかくにもドライスーツのシーズンがやってきました。
いろんな海で潜る機会のある僕が気になっていたドライスーツ。
ゼロ(ZERO)のラジアルスーツです。
なぜ、気になっていたのかといえば、単純に取材先のガイドさんが最近やたらと着ているということと、デザインがプロっぽくてカッチョイイ、そして、フロントにある2本のファスナーを操り、一人で脱ぎ着している姿がカッチョイイから。
“プロっぽい”とか“カッチョイイ”と言うと、ちょっとアホっぽいですが(笑)、器材にしてもフィンにしてもカメラにしても、長年ダイビングを続けていると、その経験から蓄積された絶妙な共通認識みたいなものが生まれてきます。
何か“共感できるスタイルが内在し、同時に格好よく表面化した機能美”とでも言ったらいいのでしょうか、その感覚は意外とバカにできないのです。
ということで、昨日(2012年10月27日)「川奈日和」で開催されたモニター会に参加してきました。
ラジアルって何? “高価”だけど“効果”あり
当日はあいにく川奈がクローズのため、八幡野日和。
自分を含め4人のダイバーがモニターすることになりました。
自分が試したのは、生地厚2ミリのラジアルスーツ「LEGEND(レジェンド)」。
そもそも、“ラジアル”スーツとはなんでしょうか?
素材だと思っている人も多いようですが、素材というよりその製法自体のことを言います。
ごくごく簡単に言えば、一般的なジャージのドライスーツの上にラジアルコーティング剤を4回塗ることによって、保温性、耐久性を高めたスーツ。
その分、高価になりますが、その効果を感じたガイドやカメラマン、そして作業ダイバーに支持を受けているのです。
通常のドライスーツは厚さが3ミリ以上が一般的ですが、2ミリにできるのもラジアルだからこそなのです。
今までファスナーが後ろにあった理由を知っていますか?
「なんで、ファスナーは後ろにあるんだろう?」
そう思ったことのあるダイバーは少なくないはず。
フロントならでは着づらさは想像できるものの、何より「一人で開け閉めできる」ことのメリットは説明するまでもありません。
その大きな理由は、ファスナー(チャック)の強度。
背中側に比べて可動域の大きい前側。
上半身の運動によって、曲がったり伸びたりするので、ほぼ一文字状態のバックに比べてフロントはファスナーへの負担が大きいのです。
金属製のファスナーは、柔軟性や加工の難しさから、可動域の大きいフロントにつけると、バックより圧倒的に壊れやすく、これまでなかなか実現しませんでした。
フロントに付けるとしても、斜めに入れるなどして、ファスナーの強度というより、ファスナーへの負担を減らす工夫をするしかありませんでした。
しかし、ゼロでは、樹脂によるファスナーの加工が可能になり、根本的な問題がクリア。
フロントファスナーが実現したのです。
さらに、Wファスナーという、2重にファスナーを付けることによって、より確実な防水と強度を保てるような仕組みを開発し、特許となっています。
柔軟性のある樹脂加工のファスナーだとこんなに曲げても大丈夫(左)。
一方、金属ファスナーはあまり曲げすぎるとポッキリ折れてしまう(右)。
気になる、フロントファスナーをチェック!
ゼロのドライスーツで一番気になっていたフロントファスナー。
着づらそう&手順がややこしそうなイメージがありますが、さて、実際にやってみましょう。
腰まで履くのはバックファスナーと一緒。
↓
手首を入れるところも一緒。
↓
ここからちょっと違いが。まずは片肩までしっかり入れる。
↓
もう一方の腕は、まずはヒジを差し込んでから、
↓
手首を返して、指先から手首を通します。
はい。両腕まで通りました♪
ファスナー部を両手でつかみ、アゴを引いてスーツ内に頭を入れます。
↓
ここからはバックファスナーと同じ。ネックシールに頭を通します。
↓
ネックシールを内側に折りこみます。
そして、ファスナーを閉める手順。
まずは内側のファスナーから閉めます。
内側ファスナー(黄色)と外側ファスナー(青色)をそれぞれ指でひっかけます。
↓
胸を張りながら、内側ファスナーを閉めていきます。
外側ファスナーはストッパー役。
外側に引っ張ったままにして、内側ファスナーが締まりやすいよう固定します。
↓
ファスナー部をつまんで、最後まできっちり締まっているかチェック。
↓
内側のファスナーのヒモがぶらぶらしないようにしまって、左右にある外側のファスナーをそれぞれ閉めます。
右を閉め、
↓
左も閉めれば完成。外側のファスナーは防水というより、ヒモの収納庫、内側のファスナーの保護といった役割です。
着られました! う~ん、プロっぽい。
初めてフロントファスナーのドライスーツを着てみましたが、バックファスナーと比べて個人的にはまったくストレスなし。
頭とヒジを通す際に、若干の窮屈さがありますが、さほど問題は感じません。
また、ファスナーを閉める手順に対して「頭がこんがらがった」という参加者もいましたが、これは難しさというより、いつもと違う手順へのとまどいと理解の問題。
“なぜ、そういう手順になるのか”を一度だけ理解してしまえば、慣れるのも早いでしょう。
僕は最初の1回だけとまどいましたが、2回目以降はまったく問題なし。
バックファスナーの着やすさが10だとしたら、フロントファスナーは9。
ただ、この差は、一人で着られることのメリットに比べれば取るに足りない差だと感じます。
★ちなみに、脱ぐときは?
脱ぐときも、着る時と同じように、ネックシールに首を通す時とヒジを抜くときが若干窮屈。
特に首は、窮屈な状態からネックシールを持ち上げる動作なので、着るとき以上にバックファスナーとの差があるかもしれません。
女性参加者の一人は「脱ぎにくい」と言っていました。
持ち上げる。
ヒジを抜く(桜吹雪を見せる動作)。
↓
バックファスナーの脱ぎやすさが10だとしたら、フロントファスナーは8といった感じでしょうか。
非力な女性はやや気になる差かもしれませんが、少なくも男性の場合は問題ないのではないでしょうか。
ラジアルのウリである保温性と耐久性をチェック!
ラジアルといえば、保温性と耐久性が最大のウリ。
加えて、薄い生地のおかげで向上した機能性を海でチェック!
試してみた感想は……わかりません!(キッパリ)
モニターしといてわからないというのもどうかと思うのですが、この日は水温が23度で陸上もポッカポカ。
確かに温かいのは間違いないのですが、もっと水温が低い時期や長時間潜った時など、連続したモニターでなければ意味がないのかもしれません。耐久性も同じ。
そこで、かれこれ3年間、ゼロのドライスーツを愛用し、スナック「ZERO」にもよく通っているという「川奈日和」の八木さんに聞いてみました。
Q.なぜ、ゼロのドライスーツを選んだのでしょうか?
A.まずは、見た目がプロっぽくてカッコイイな~という単純な理由だったのですが、もちろん、前から評判は聞いていたので使ってみたんです。
Q.実際、使ってみてどうですか?
A.僕らガイドは潜る本数が普通とは違うので、月におよそ70本潜っていると、ピンホールが開いたり、水没したりと、何かと不具合が起きてこれまでのドライスーツは1シーズンもちませんでした。
でも、ゼロのドライスーツは3年使っていますが、まったく問題ないですね。
特に僕らのようなフォト派の場合、着底することが多いので、ヒザの部分やテンションのかかる股の部分のヘタリが早いんですよ。
でも、その辺りも気になりませんね。
保温に関しても、ゲストと潜る以外にも、写真を撮るために長時間潜ることもありますが、水中での保温性が高いのはもちろん、陸上が寒い時に風を遮断してくれるのもありがたいですね。
Q.デメリットはありますか?
A.高い(笑)。
でも、長く快適にダイビングを続けようと思っているなら、質の高いドライスーツを選んだほうが長期的にはお得で“高い”という見方も変わってくると思いますよ。
特に撮影が好きな方にはオススメです。
あとは、女性の方でデザインが地味という声もありますね。
僕らからしたらカッコイイんですが、この辺は、男女の違いやダイビングの経験年数なんかが関係するのかもしれませんね。
※
耐久性や保温性。
長期間、高頻度で使っているだけあって、説得力があります。
機能性に関しては、インナーを着こんでしまったせいか2ミリという薄さはあまり実感できなかったのですが、着るときや、折りたたんでパッキングするときなどに、「おお、薄いな~」という実感がありました。
特筆すべきは、足首回りの快適さ。
通常、足首が固定され、長靴を履いているような感覚のあるドライスーツですが、ブーツ周りの素材が薄いためか、歩きやすく泳ぎやすい印象。
特に水中では足首を伸ばすことが標準になりますので、足首周りの柔軟性は重要です。
その他、腕にのみついた排気バルブ。
実際に使ってみて、手の上げ下げだけでエア調整が可能で、肩口よりエアが集めやすいので、快適に潜ることができました。
まとめ
耐久性や保温性など、ドライスーツとしての根本的な機能に優れたドライスーツなので、海と深く付き合うガイドやカメラマン、そして作業ダイバーが愛用するのも納得。
個人的には、自分のタイミングで「一人で脱ぐ着できる」ということに、とてもメリットを感じました。
脱ぎ着の部分でのバックファスナーとの違いは、気になる人は実際に体験してみてみることをオススメします。
あとは予算との兼ね合いですが、潜れば潜るほどその特徴が活かされるお得なスーツ。
海が好き、写真が好きで、海と深く付き合っていきたいダイバーにこそオススメしたいスーツです。