日本人に馴染みある“醤油”が、まさかのプラごみによる海洋汚染解決の手段になる!?

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プラスチックごみによる海洋汚染が深刻化する中、微生物などの働きによって最終的に水と二酸化炭素に分解される「生分解性プラスチック」が注目を集めている。この生分解性プラスチックとして活用が期待される成分が、なんと日本を代表する調味料であるあの「醤油」を醸造する際の副産物から発見された。醤油を消費することがサステナブルな暮らしにつながるなんて、想像もしてなかったことが近いうちにやってくるかもしれない。

普段は廃棄されてしまう「しょうゆ油」を活用

「しょうゆ油」とは醤油の醸造過程で、原材料を圧搾する際に発生するもので、通常は使用されること無く、普段はそのまま廃棄されてしまう油である。総合食品メーカーのヤマモリ株式会社では1889年の創業時から醤油醸造を行っており、しょうゆ油を廃棄することなく活用している。同社では、現在しょうゆ油を工業用せっけんの原料および燃料として使用しているが、一方でこの副産物を未利用資源ととらえ、さらに付加価値のある活用(アップサイクル)ができないかという視点で長年検討してきた。

醤油醸造で得られる「しょうゆ油」

同社は岩手大学と東京農業大学との産学共同研究にて、醤油の醸造過程で発生する「しょうゆ油」より「poly(3-hydroxybutyrate)」という成分を合成できることを発見し、日本農芸化学会(※)で発表。この成分が海洋生分解性プラスチックとして活用が期待されている成分だ。

しょうゆ油を原料とした炭素循環サイクル(出典:岩手大学 応用微生物学研究室 HPより一部改変)

※農芸化学分野の基礎及び応用研究の進歩を図り、それを通じて科学、技術、文化の発展に寄与することにより人類の福祉の向上に資することを目的とする学術団体

誰でも貢献できる持続可能な社会の実現へ

日本醤油協会の調査(※2)によると、醤油の製造工程で発生するしょうゆ油の量は、全国で年間4600t(2006年実績)に及ぶと試算されている。この研究技術により、しょうゆ油の有効活用が産業廃棄物と海洋プラスチックによる環境汚染の削減につながると期待されている。

2050年には「海洋プラスチックゴミの総重量が海にいる魚の総重量を上回る」(※3)と言われているが、約30年後プラスチックであふれた海でのダイビングを想像するだけで恐ろしすぎる。

ダイバーなら誰しもきれいな海で今後も潜りたいと思うだろう。この研究によって、醤油の消費が海洋生分解性プラスチックの生成につながるのであれば、気軽にプラスチック削減に貢献できる持続可能な社会が実現できるだろう。今後のしょうゆ油の新たな利用用途の可能性に期待したい。

※2 平成19年度環境自主行動計画についての調査票/日本醤油協会
※3 エレン・マッカーサー財団が世界経済フォーラムと協力し作成した調査書

ヤマモリ株式会社

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