生命(いのち)と希望に溢れた場所

屋久島の永田浜は北太平洋最大のアカウミガメの産卵地で、4月下旬頃から始まる産卵シーズンは8月上旬くらいまで続く。
この時期は水中でも普段はあまり出会う事のないアカウミガメを頻繁に見かけ、産卵場の砂浜から近いダイビング・ポイントではのんびり寝ているアカウミガメにもよく出会う。
産卵は主に夜間に行われるのだが、日中はこうした休憩場所で寝ている。
休憩場所はだいたい決まっていて、あるポイントでは20-30m四方の狭いエリアに12-13頭くらいのアカウミガメが所狭しと寝ていたりする。
僕のホームグラウンドの一湊の浜でも永田浜ほどではないが、毎年数頭が上陸して産卵しており、ここで産卵したアカウミガメは人気ポイントの「ゼロ戦」を休憩場所にしている。
このゼロ戦は約60年ほど前の太平洋戦争末期に生還の可能性の無い体当たり攻撃を実行するために鹿児島の知覧基地を飛び出した特攻隊のうちの1機で、途中、恐れを為し意図的に屋久島に墜落したものとも言われている。(ゼロ戦を操縦していた青年は岸まで泳ぎ見事生還)
自らの命を繋ぐためにこの場所に墜落したゼロ戦と、今まさに新しい命を繋ごうとしている母ガメ。
ゼロ戦は日々朽ちていこうとも、ここは生命(いのち)と希望に溢れた場所であるに違いない。

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