【速報】アースデイに救われた命。沖縄本島北部の海で絶滅危惧種アカウミガメをダイバーが救出

2025年4月22日、沖縄北部・今帰仁村


今日は地球環境を考える「アースデイ」。

その日にふさわしい、ひとつの命が救われた出来事が、沖縄本島北部・今帰仁の海で起きた。

舞台は、ダイビングボート「大神丸」。元インストラクターで現役漁師の大神さんが舵を握る船に乗り、筆者である私は後輩を連れてダイビングトレーニングに出かけた。この周辺には、過酷な白化を生き抜いた美しいサンゴ礁が広がっていることもあり、定期的にその記録を続けている。

沖縄北部、今帰仁のサンゴ礁

沖縄北部、今帰仁のサンゴ礁

南は那覇市から、北谷町、読谷村、名護市そして地元の今帰仁村から、5人のガイドインストラクターがゲストを連れてこの素晴らしい海を潜りに来ていた。

1本目のダイビングを終えた後、読谷村のダイビングショップ「CHABAGUA」の小林さんが、海面のブイに何かが絡まっているのを発見。この周辺に多いアオウミガメかと思われたが、見つかったのは体長1メートルを超える絶滅危惧種のアカウミガメ。その巨体が漁業用のブイに絡まり、もがいていたのだ。

漁具にひっかかったアカウミガメ

漁具にひっかかったアカウミガメ

「ア、アカウミガメか…」

鋭い口元といかつい顔つきに一瞬たじろぎながらも、私たち5人は救出に向けて動いた。最初は2人のガイドがナイフやハサミを持ってエントリーしたが、なんと絡まっていたのは切断困難な金属ワイヤー。救出は一度断念せざるを得なかった。

大きく口をあけたアカウミガメ

大きく口をあけたアカウミガメ

その後、ペンチを準備し、再び全員でエントリー。ワイヤーにはブイが付いており、水底に固定されている状態。これ以上暴れるとウミガメの体にワイヤーが巻き付いて、呼吸ができなくなってしまう。そこで北谷町のダイビングショップ「サニーデイズ」の那須田さんが水中に潜ってロープの部分を切断し、ウミガメはようやく息継ぎができるように。

アカウミガメは、水面に顔を出し、プハーッと大きな呼吸をした。

「ダイバーが一人増えたかと思った」と大神船長が冗談交じりに言うほど、その姿は大きく、堂々としていた。

4人のダイバーでアカウミガメの救出

4人のダイバーでアカウミガメの救出

そして再度、全員でワイヤーを外しに潜降。懸命の作業が続く。なかなか切断できない中、那覇市のダイビングショップ「R-mates」の林さんが、ヒレに刺さっていた釣り針を取り外すことに成功。

アカウミガメは力強く深い海へと泳いでいった。

無事にウミガメから漁具が外れた

無事にウミガメから漁具が外れた

その険しい顔を見て「ありがとうと言っているようには見えないね」と笑いながら、私たちは、いつも通りまた次の海へ、2本目のダイビングに向かった。

私たちの胸には確かに、海からの感謝が届いていた。

 

スピーディーな対応が求められる状況の中、それぞれが自らの役割を考えて行動し、素晴らしいチームワークで救助に成功したことに感動した。

普段からこの海を案内している今帰仁村のダイビングボート「大神丸」と、同じく今帰仁村にあるダイビングショップ「リトルバード」は、地元のサンゴ礁を保護・保全しながら潜り、村外から訪れるダイビングショップとも“ワンチーム”の関係を築いている。船長の大神さんとガイドの渡会さんの人柄は、多くのダイバーを惹きつけてやまない。

アカウミガメを救出したガイドダイバーたち

アカウミガメを救出したガイドダイバーたち

 

地球環境への意識を高める「アースデイ」に、偶然出会った絶滅危惧種のウミガメ。私たちが生きていくうえで漁業は欠かせず、地球上から危険な漁具を完全になくすことは現実的ではない。

しかし、誤って海中に投棄された「ゴーストネット」を回収し、不運にも絡まってしまった生き物を救うことは、私たちにできることだ。

 

世界中のダイバーの手で、海の保護と保全がさらに広がっていくことを願っている。

ウミガメにひっかかっていた漁具

ウミガメにひっかかっていた漁具

 

マグロなどの大型魚を釣るための大きな針

マグロなどの大型魚を釣るための大きな針

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PROFILE
福岡県出身。18歳からスキューバダイビングを始め、翌年にプロ資格を取得。
22歳でPADIマスターインストラクターとなり、宮古島・沖縄本島・東京都内と拠点を変えつつダイビングスクールで15年間働いた後に観光業専門の広告代理店として独立。

現在はWebサイトのディレクション、Web広告運用、SNSの運用サポートなどデジタルマーケティングを主な生業としている。

オーシャナでは、取材時の写真撮影を担当。
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