詐欺まがいのチャンバービジネス!? “窒素の洗い出し治療”は意味がない

ダイバー人口、総ダイビング回数からすれば、減圧症にかかってしまったときの再圧治療施設すら少ない日本ではあまり聞かれませんが、世界的には、特にプロのインストラクターやガイド、また漁師さんの中には、減圧症の症状がなくても、定期的に再圧治療を受ける人が多いようです。

いわゆる窒素の洗い出しというやつであります。

「頻繁にダイビングを続けると慢性的に窒素の過飽和状態が続く」と信じておられるダイバーが多いということでしょう。

やどかり仙人コラム

ヤドカリ爺がなぜこんなに、地味な話題に興味を持ったかといいますと、facebookのお友達が(インドネシアにおられます)が、定期的に再圧治療をしているという書き込みをなさっており、ホホーン、こんな予防的な対処法もあるのかと、思っておりました。

ところが、ところが、DANウェブマガジンAlert Diverのエキスパートオピニオン(専門家のご意見)のページでは、こんなご意見がのっております。

“慢性的窒素の飽和などなく、治療の根拠など絶対にない。よくて誤解、悪く言えば、ダイバーだまし”

また“一部のチャンバーオペレーターがこの迷信を創作しているようだ”とも言っています。

この言い方は、多くの人が見るDANのサイトではかなりきつい表現であります。
きついどころか、ののしっております。

その理由は、ほとんどのダイバーの残留窒素は、ダイビング後長くて18時間もすれば排出されており、したがって定期的に再圧治療など受ける必要などないというわけであります。

セブ島ボルホーンのビーチ(撮影:越智隆治)

このような、いわば警告で出るということは、騙されて、意味のない、しかもえらく高額なチャンバー治療をさせられている、我らが仲間たちがいるということであります。

窒素がスムースに排出されないで、慢性的に残っている、言ってみれば窒素ガスの便秘状態という都市伝説がこの詐欺まがいのチャンバービジネスの背景であります。

ヤドカリ爺のfacebookお友達もDANのアジアパシフィックに問い合わせたら、同じ返事だったそうで、「やめました」とのメールをいただきました。

何となくそんなものかと思わせるお話であります。
世の中悪い奴がいるものであります。

※ただ付け加えておきますと、沖縄などのインストラクターやガイドさんがオフシーズンに、減圧障害の診断に専門医の先生を訪れるというのは、よく聞くお話であります。
それが再圧治療なのか、高酸素治療が有効なのかは、素人のヤドカリには分かりかねます。

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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