Cカード協議会って知っていますか?~第1回ダイバー自身の安全対策セミナー~

2012年10月の20日、ヤドカリ爺は痛む腰をさすりながら、恵比寿に出かけました。

やどかり仙人コラム

恵比寿といえばPADIジャパンがございますが、PADIではなく、Cカード協議会のセミナー、「第1回 ダイバー自身の安全対策セミナー」にでかけたのであります。
“海で死なないダイバーになるために”という、ややセンセーショナルのサブタイトルがついております。

といっても、皆さんがダイビング講習を受けた、つまり認定証・Cカードが発行されたトレーニング団体のことはもちろんご存知でしょうが、このCカード協議会という組織についてはあまりなじみがないかもしれません。

日本の国内でダイビングの認定証・Cカードを発行している団体はたくさんございますが、その中での10団体(PADI、.SSI、STARS、JEFF、BSAC、DACS、JCS、Kdjapan、JP、JUDF)がこの協議会に参加しておるようであります。
いわばダイビングの認定制度を支えている団体であります。

Cカード協議会「第1回ダイバー自身の安全対策セミナー」

ダイビングには他のスポーツと違った面があります。
非常に規格化された器材、つまり細部に少々の違いはあっても、ほとんど同じデザインの器材を使い、どの団体のインストラクターもほとんど同じダイビングの手順を教えます。
どこででも、誰とでも一緒にダイビングができるというのがレクリエーションダイビングの大きな特徴です。
あまりに当たり前のことなので、かえって見過ごしてしまいます。

基本的に誰にダイビングを習っても同じようにダイビングできるようにするのが、認定制度の大切な役目であります。
しかしそれを実現するには認定団体が行なっているトレーニングに共通性を持たせることが必要になってきます。
各認定団体がてんでんバラにダイビングを教えていたのでは、危なくてしょうがありません。
そこでトレーニングのミニマムレベルを認定団体が話し合う機会が必要になります。

実際にはダイバーと直接接するのではない団体でありますが、間接的には多くのダイバーとも関係がある団体といえます。

世界的にはレクリエーショナル・スクーバ・トレーニング・カンシル(協議会)などという組織があります。

ほとんどのダイバーが講習の前に記入する健康調査フォームなどは、このRSTCが潜水医学会などと相談して作ったものです。
ダイビングをするための健康面での最低限の条件を決めたものです。

Cカード協議会はRSTCの日本バージョンといってもよいでしょう。
そのCカード協議会が、ダイバーに直接安全を訴えるセミナー「第1回 ダイバー自身の安全対策セミナー~海で死なないダイバーになるために~」を初めて10月20日に開催したということです。

「なぜ認定団体でなく認定団体の連合体のCカード協議会が、安全ダイビングのセミナー?」と事務局に聞くと、「今年は例年になく事故が多く、認定団体としても心を痛めており、事故を減らすにはダイバーの安全への意識のレベルアップが欠かせないので、ダイバー自身に安全を考えていただきたい。その機会を提供したい。その最初の機会として開催することにしました。引き続き2013年には第2回を開催する予定です」ということであります。
一言でいえば、認定団体がそろって、ダイビングの安全を考える直接行動に出たといってよいかもしれません。

さて当日、かなり著名なダイバーからビギナーまで、かなり広い会場は満席。
安全への関心度は、ダイビングのキャリアとは関係なく高いようでありました。

当日のセミナーの詳しい内容は、PADIなどの認定団体のサイトでご覧いただければと思うのでありますが、かいつまんでレポートします。

まず、認定制度とはなんだろう、ダイビングは本当に安全なのかといった、やや総論、抽象的な会場出席者と司会者とのディスカッションからスタートしました。
認定制度と免許との違い、あるいはCカードの更新制度、あるいは更新のときの講習がダイバーの技量を維持させるには必要ではないか、といった意見もございました。

続いて海上保安庁の救難課の担当者が、今年のダイビングの事故者数が多く、特に8月までに事故者数43人、うち死亡事故者、行方不明者が16人になっているという速報が発表されておりました。
確かに昨年の年間38人、死亡/行方不明者9人より大幅に多いペースであるようです。

続いて、DANジャパンからの事故の傾向などが発表されたのですが、これが2003年までのDANアメリカの古いレポート。
さらに中高年ダイバーの事故者が多いという、昭和女子大の芝山教授による医学的な面からの講演がありました。
内容的には最近の傾向の一般論で、ダイバー人口の高齢化が背景にあることを重々心すべき、といった想像通りの内容でありました。

ここでヤドカリ爺は、持病の腰痛のために、残念ながら退席したのであります。 

全体の印象を率直に言わせていただくなら、開催したCカード協議会の意欲を感じましたが、ややテーマが“安全”と、大テーマに過ぎて、ディスカッションが抽象論になったのが残念でありました。

しかしながら、不況下の業界の中で、やはり安全度をどうにかして高めたいというひとつの動きがあったということは、評価しなくてはならないと思うのです。
来年にさらに期待したいところであります。

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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