イギリスで注目、身体障害者のためのダイビング「デプセラピー」とは

こんにちは!

ダイビングのトレーニングを始める際、名前、年齢、ダイビング経験や資格等を含めた自己紹介をする事は普通ですよね?

これはもちろん簡単な事ですが、もし皆さん何かの障害があったらどうでしょうか?
皆でどうやってコミュニケーションをとることができるのでしょうか。

そこで、イギリス人のリチャード・カレンさんがDeptherapy(デプセラピー)というコースを始めました。

デプセラピーは英語のdepth(深さ)と therapy (治療)の二つの言葉を組み合わせたもので、深い所、いわゆる水の中、で治療を受ける事を示します。

身体障害者の方にダイビングの経験を提供し、PADIの資格を与えるのが目的です。

リチャードさんはこう話しています。

「デプセラピーはダイブマスターやインストラクター向けのコースで、修了後、デプセラピーインストラクターは、身体障害者にダイビングを教える事ができます。身体障害者と働くのは、人生を変えるようなとてもいい体験です」

コースはこんな流れです。

初めに、戦争でケガした海軍や軍隊の方、交通事故でケガした方など、実際に誰が参加するか、そしてどのような障害を抱えているか、生徒についてのプレセンテーションが行われます。

リチャードさんは、生徒の前で泣かないように、感情で胸がいっぱいにならないように、「難しいかもしれないけど、障害を見ないでください。その人自体を見てください」と注意します。

次に、障害者向けのダイビングコースを計画、準備するにあたって何を考えなければいけないのかも習います。

生徒が医者からの診断書を提供しているか、サインしなければならない書類をきちんとサインし、その内容を理解しているか、そして提供された医療情報をインストラクターが理解できているのかを確認します。

また、薬を飲んでいるためダイビングがしたくてもできないというケースもありますので、これをきちんと確認し、生徒にどう説明するのかも習います。

普段のオープンウォーターコースの準備とあまり変わりませんが、身体障害者向けのコースにはいくつか配慮しなければならないポイントがあります。

例えば、プールでの練習等も生徒の知能や身体能力に合わせて変えなければならないので、生徒や障害によって調整する練習が行われます。

視力障害がある方には、インストラクターが黒いレンズの特別なマスクをつけて、あまり見えない状態で「触覚によるコミュニケーション」を練習します。

例えば、「大丈夫?」と聞きたい時は腕を強く押す、「上がりましょう」は手を2回タッチするなど、マニュアルに基づいて練習します。
プールに入る前に黒いレンズのマスクをつけながら歩き回ることによって、その感覚に慣れていくこともできます。

足がない方には、フィンなしでゆっくり泳ぐ練習をして、推進装置をタンクに付ける事も可能です。

最終テストは、身体障害者向けのオープンウォーターダイブを計画し、実行する事です。

駐車場等から水辺までどうアクセスするか、エントリー、エグジット、ドライスーツかウェットスーツ、補助スタッフの必要性などすべてを配慮し、実行します。

「教室やプールで練習したスキルを使い、最終テストだけど生徒達の写真を撮ってあげて、楽しむ事も大事」とリチャードさんは言います。

身体障害者の方にとって、ダイビングはどんな効果があるのでしょうか?

集中力とゆっくりした呼吸のおかげでリラックスできると言う人がいます。
また、一般の人が普段やっている事に参加できるのも精神的な支えになるそうです。
水中生物との出会いやダイバー向けのクラブに入り、新しい友達ができることも大きな支えだそうです。

私としては、デプセラピーを通して、身体障害者にもっと前向きな人生観を与える事ができれば、このコースに大いに期待できると思います。

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PROFILE
イギリス生まれ、8歳から13歳まで日本で育ったイギリス人と日本人のハーフ。

2006年に再度来日し、ナレーター、翻訳者、ライターとしてNHKテレビ、ラジオ、日本駐在外国人向けのウェブサイトなどで活躍。
2010年ニューカレドニアで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、2011年以降定期的に日本で潜っている。

日本の海の魅力、多様な生物や地形等に感動し、海外であまり知られていない日本のダイビングを紹介する目的で、2011年にブログ(Rising Bubbles)を立ち上げた。

外国人向けのサイトや海外のダイビングサイトで日本のダイビングスポットを定期的に紹介しており、スコットランドのセントアンドリューズ大学で水産養殖も勉強中。

「ダイビングをきっかけに、日本の海がどれだけ魅力的なのかをすごく実感しました。この連載では、たくさんの情報を届けていきながら、海外からのトピックを取り上げ、日本と海外の違いや海外の視点等をシェアするのを楽しみにしております」
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