四国・愛南で海に恩返し 30年以上続くダイビング+ごみ拾いイベントに参加してみた
「故郷の海へ、少しだけの恩返し」。
これは、愛媛県・愛南町にショップを構える「西海観光船」のコンセプト。そこが主催する清掃&サンゴ保全活動が、今年で31年目を迎えた。6月最終土曜日、ダイバーとしてオーシャナ編集部・スイカも現地に足を運び、その空気感を存分に味わってきたのでレポートする。

ダイバー50名+陸スタッフで“ゆるっと本気”の大集合
愛媛をはじめ四国はもちろん、中国・関西・関東などさまざまな場所からダイバーが西海観光船に集まった。なんと総勢60名! ダイバーだけでも50名という驚きの人数。開会式では西海観光船の代表の高橋さんと、先代オーナーの竹田さんからご挨拶。この活動に関して、「ゆるくやってるからこれだけ長く続いている」というお二人。開会式でも「ダイビングを楽しんで、ごみがあったらついでに拾いましょう」という竹田さんのひと言がとても印象的だった。

バディダイビングで海底のごみを回収
ごみ拾いダイビングの場所はショップの目の前の「瀬ノ浜」。砂地のポイントだが船着場や堤防の周りには海藻とサンゴが生え、生き物も豊富なビーチポイントだ。この時期は小さなアジやタイの群れが泳ぎ回っている。

船着場周りとテトラポットとの間がダイビングポイントとなっている
ダイビング前、誰とバディを組むのかや潜る時の注意点、ポイント・ルートの説明が高橋さんからされる。初心者は高橋さんらインストラクター引率でグループで潜る。準備が出来次第バディごとにエントリー口に向かい、スタッフの香さんからごみ拾い袋を受け取りエントリーしていく。

エントリー口でごみ袋の受け渡しと人数確認を行う

バディで協力しながらごみを集める

なんだかわからない不思議なごみも

それぞれが楽しみながらも、しっかりごみを拾っていた
陸側では町役場職員や海上保安庁のメンバーが堤防に溜まったごみを手際よく回収していった。

テトラポットの下からごみを引き上げていく
約45分のダイビングが終わり、上がってきた参加者たちはごみを分別していく。陸では網や縄など漁具が多くみられたが、海から上がったごみは漁具だけでなくペットボトルやおもちゃなど生活ごみも。ダイビングの感想を聞いてみたところ、この日はあいにくの透視度で、口を揃えて「濁ってた〜!(笑)」というダイバーたち。でも二言目には「楽しかった〜!」「魚めっちゃいた!」とダイビングを楽しむ様子も伺えた。中には「ごみ拾いに夢中になりました!」と、ごみを探すのをメインで潜っていた方も。

エントリー口に設置された分別ボックスにごみを分けていく

あがってきたダイバーたちはみんな笑顔だった
午後はファンダイブに切り替え、愛南の海を満喫
午後は10分ほど船で移動した先にある無人島・鹿島に渡りサンゴ保全活動を予定していたが、強風で中止。代わりに再び瀬ノ浜でのんびりファンダイビングに変更された。もちろん、ごみを拾いたい人は拾ってOK。そんなゆるく楽しめる雰囲気がイベント全体として感じられ、このイベントが長寿企画である理由を垣間見た。
この日のためにライセンス取得!地元の人々の本気
さらに、今年のトピックは、愛南町職員をはじめとした地元の方々5名が、このイベントに合わせてCカード(ダイビングライセンス)を取得したこと。愛南町は養殖漁業を中心に水産業が盛んな町というところもあり海産物は身近だが、海で遊ぶ地元の方々はそれほど多くないという。本格的にダイビングをするのは初めてだったというみなさん。感想を少しを伺ってみた。
「想像していたとおり楽しかったです。水中だと会話できないので、伝えたい、共感してほしいという思いが強くなるし、逆に相手が何を考えているか、どうしてほしいか理解する力や思いやりが育つ気がしました」(田中 純樹さん/愛南町議員)
「緊張しましたが、呼吸音で『スターウォーズ』の “ダースベイダー”を思い出しました(笑)。陸上で『アジ』『キビナゴ』『モイカ』などを見ても感動することはありませんが、水中では非日常感のなか、皆同様に『綺麗』と感動を共有でき、信頼関係が深まるような感じがします」。(濵哲也さん/愛南町職員)
「呼吸ってこんなに大事なんだ!と驚きました。空気の出し入れだけで浮いたり沈んだりできるなんて、すごく奥が深い。同じ景色を見て、立場関係なく感動を共有できるのもダイビングの魅力だと感じました」。(浦川宙さん/愛南町職員)
「どこを見ても魚がいて、本当に飽きなかったです。18mまで潜れるようになって、時間が経つのを忘れるくらい夢中でした」。(武藤皓治さん/愛南町職員)
「器材が水中でスッと軽くなる感覚がおもしろかった反面、自分でコントロールできるか不安でした。でも中性浮力を保つことで、安心して海中を楽しめるとわかり、海の中で自分と向き合う時間になりました」。(関根麻里さん/一般社団法人Umidas事務局・元地域おこし協力隊)

今回のイベントに合わせてCカードを取得した田中(右)さんと濵さん(左)
まずは楽しむこと。 それが31年継続する秘訣
アフターダイビングは参加者みんなで愛南町の居酒屋「六方」で打ち上げ。海を愛するダイバー同士で交流するのもこのイベントの楽しみの一つだ。イベントを立ち上げた竹田さんは「故郷の海を守りたい。でも“義務”になると続かない。だから楽しくゆるくやろう」という。そのスタンスを受け継ぎ、現スタッフは毎年、参加者に「潜って楽しんだついでにごみが減れば最高」というメッセージを送り続けている。

今回集まった海中ごみ
「10年前のごみの量は、今日の3倍はあったんだよ」
そう教えてくれたのは香さん。参加者は毎年増えているが、ごみは確実に減ってきているという。継続的に清掃をしているから量が減っているのはもちろん、この活動自体が地元の方々に広まり、地元の方や海を利用する釣り人のごみに対する意識が高まっているのだという。「あそこで拾ってるんだからポイ捨てはやめるか…」と実際にやめた人もいるそう。続けることの大切さを感じられるエピソードだ。
本イベントは毎年6月最終週の土曜日。来年はあなたも愛南町の海を楽しんで、“ちょっといいこと”しに来ませんか?

終了後にも記念撮影




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