愛媛・愛南の海をダイビング! 華やかで賑やかで美味しい、何度も訪れたくなるその理由とは
愛媛県の最南端、四国の西側に位置する愛南町。最近ダイバーの間でよく耳にするエリアだが、まだ訪れたことがない方も少なくないはず。そこで、オーシャナ編集部のスイカが、愛南の海を案内するダイビングショップ「西海観光船」にお邪魔して、実際に潜ってどんな海なのか取材してきました!

目次
愛南町の海ってどんなところ?
国立公園にも指定される豊かな「宇和海」
愛南のダイビングポイントがあるのは「宇和海」と呼ばれる海域。1972年に日本で初めて「海中公園地区」に、2002年には「足摺宇和海国立公園」に指定されている。その理由は豊かな生物相や造礁サンゴと温帯性の海藻が同時に見られるといった、美しい景観と学術的な価値の高さから。
このエリアはリアス式海岸による複雑な地形が重なり、湾や入り江ごとに水深や潮流、日照などの条件に違いが生まれる。そこに豊後水道からくる黒潮の分流がもたらす温暖で栄養豊富な海水と、河川からの栄養分。これらが複雑に絡み合い、場所ごとにサンゴ群集、海藻林、アマモ場など多様な生態系が形成され、熱帯性と温帯性などさまざまな生き物を見ることができるのだ。

島々に囲まれた複雑な地形が海の中にも続いている
実際に愛南町に行ってみると、海辺の集落の漁港付近には養殖施設があり、釣り人の渡し船も数多く見られる。釣り人が多い場所は当然ながら魚が多く、楽しいダイビングポイントでもあることが多い。これは期待大!

至る所に養殖設備が見られる
取材に訪れた西海観光船は、もともとは1966年に、この豊かな海を案内する遊覧船事業として始まった。そこに、愛南町の海に魅了され東京から移住した代表の高橋翔さん・香(かおり)さん夫婦と、1985年から松山を拠点に愛南の海をガイドしてきた竹田さんが10年ほど前に入り、ダイビングやシーウォーカーも行うように。

船着場には観光船とダイビング船が
今回は、竹田さん、高橋さん、小野さんの3名のガイドに多様な海中景観をたっぷりと案内していただきました!

ガイドの小野さん(左)からブリーフィングを受けてダイビングへ。オーシャナ編集部・スイカ(右)
一面ピンクの花畑!
美味しそうな魚と楽しむ横島
初めに潜ったのは「横島断層」。港から船で15分ほどいった先にある横島という無人島のポイントだ。横島は国立公園の中でももっとも厳しい保護レベルである特別保護地域でもある。
エントリーして水深5mまで潜降すると急に海中が華やかになる。岩棚の上に一面ピンクの絨毯を敷き詰めたように、ウミアザミを中心としたソフトコーラルが繁茂している。いったいどこまで続くのかとガイドの小野さんに着いて行くが、いつまで経っても花畑。

一面に広がるソフトコーラル

ソフトコーラルが岩肌を覆っている
所々に深緑のテーブルサンゴも現れ、それを彩る赤や青のイバラカンザシ、蛍光っぽい白やオレンジのウミシダが現れ、目を楽しませてくれる。その上をピンクやオレンジのキンギョハナダイや真っ青なソラスズメダイが乱舞し、光が入るとキラキラと反射して美しい。

ソラスズメダイとキンギョハナダイがサンゴの上を乱舞
いつまでも眺めていたいくらいだったが、小野さんに深場に誘導される。ピンクの棚を越えて水深10mほどまで沈んでいくと、その景色は様変わりする。

棚を超えて深場へ
ハードコーラルは見られなくなり、浅場とは違う種類のチヂミトサカというソフトコーラルが広がり、流れに合わせて白い体とその先のピンクのトサカをなびかせている。相変わらず岩肌は見えない。

一面のトゲトサカが波に揺られている
まったく違う光景に目を奪われていると今度は小野さんが海面を指す。カンパチの群れだ。ダイバーの泡を餌と勘違いしているのか何度もこっちに向かって泳いでくる。体長50cmくらいだろうか。海底のソフトコーラルに気を遣って中性浮力に保ちながらしばらく観察していると、泡が餌でないことに気がついたのか、カンパチたちは去っていった。

何度もこちらに向かってきたカンパチ
そのまま壁沿いに進んでいくと、棚の下の隙間にさまざまな魚たちが隠れている。


エキジットが近づき、棚上まで戻ってくると、キビナゴの群れが通り過ぎていった。

2本目もそのまま横島のポイント「横島2号地」へ。こちらも横島断層と同様ソフトコーラル畑が続く。

ドロップオフの先に行くと、先ほどとは違い、黄色いオドリカラマツがわさわさと生えている。何か生き物が間にいないかと目を凝らしていると、イサキの群れが現れた。ゆっくりマクロを探している暇がない。

壁にぶつかってくるイサキの群れ
でもちゃんとマクロも見つけてくれました。やっぱりカラフルなソフトコーラルやサンゴはマクロの背景としてよく映えるので、探して行きたいところ。

オオイソバナに擬態するオルトマンワラエビ
ちなみにこのオオイソバナめちゃくちゃ大きくて、これだけでも見応えあり。愛南では巨大なオオイソバナがそこかしこに生えていました。

横島は約2.5kmほどの距離を延々とこの花畑が続くそうだ。地形的に波やうねりの影響から守られている場所らしく、これだけのソフトコーラルが繁茂しているという。
ハードコーラルとソフトコーラルが戦争?
「クロハエ」
先程の横島断層とはうって変わってハードコーラルが群生する「クロハエ」へ。そこまで大きく離れているわけではないのに景観がまた違う。一番印象的だったのは、ミドリイシ系のサンゴの下からワサっと生えるトゲトサカ。グリーンのスカートから派手なピンクのパニエが飛び出しているみたいでかわいい。

まさにソフトコーラルとハードコーラルの共生! と感動していたが、高橋さんによると、ソフトコーラルとハードコーラルが縄張り争いをしているだけとのこと。共生というか、たまたま一番最初に栄えたやつがそこにたくさんいるだけなのだとか。

たぶん戦争中の壁
そう考えると、壁一面のイボヤギがいた場所は、他のサンゴが入る余地なくイボヤギが占拠したのだろうか。ビビッドカラーが勝利のカラーに見えてくる。

イボヤギ一強
大型で多様なソフトコーラルに圧倒される
「イナグラバエ」
イナグラバエは翔さんと香さんが一番好きなポイント。まんまと私もハマってしまい、今回のダイビングでは一番のお気に入りとなった。このポイントは長く伸びた根がいくつもあり、その根の一つ一つ、いや、側面ごとに景色が一変するのだ。
最初に現れたのはオレンジとピンクのイソバナが咲き乱れる壁。数年前に台風で大きなものは無くなってしまったらしいのだが、現在は小さなイソバナがいくつも壁から生えている。

一面華やかな壁
しかし、反対の根には黒に近いグリーンのナンヨウイボヤギが繁茂している。華やかなイソバナとはうって変わって少し不気味ですらある。

左右でまったく景色が違う

ナンヨウイボヤギの隙間から顔を覗かせるサザナミヤッコ
また別の根に移ると今度は山吹色の巨大なオドリカラマツの群生が。愛南の他のポイントでも大きなオドリカラマツは何度か目にしていたが、視界一面に広がっているのはこの場所が初めてだ。

ススキの草原かのように広がるオドリカラマツ

オドリカラマツに群れるイサキ

オドリカラマツやナンヨウイボヤギ、ウミウチワなどの森の間を抜けて浅瀬まで戻っていく
浅瀬に戻ると、明るい光がカラフルなトゲトサカに当たって美しい。

何に出会うかわからない
ハウスリーフ「瀬ノ浜」
今回何度か潜らせてもらった「瀬ノ浜」。ショップの目の前のポイントなのだが、正直ここだけで一日遊べてしまうのでは?というおもしろさだった。

ショップの目の前すぐに海と船着場がある

停泊している船からエントリーできる
限定水域の講習でも使われる穏やかな場所で、水深も5mほど。エントリーしてすぐ目についたのはホンダワラの群生。

テトラポット周りに繁茂している
それまで華やかなソフトコーラルが溢れる海に潜っていたので、愛南の海はソフトコーラルのイメージで固まり始めていたが、ここを潜ってそれが打ち消された。

さまざまな海藻類が幻想的な風景を作り上げている

船着場の反対側にも違った海藻が
そして海藻の森の周りを泳ぐアジやタイの稚魚。この時期によく見られると聞いてはいたが、想像以上に数が多くて圧倒された。

アジまみれ

海藻だけでなくサンゴもそこかしこに鎮座している
他にも砂地に行けばネジリンボウやヤシャハゼがそれほど深くないところで見られたり、ナイトダイビングではタコやイセエビが顔を出したり、通常砂の中にいる貝が歩いてきたりしていた。

小さなタコが何匹もいた

色鮮やかなウミウシ

通常は水深50mより深いところにいるウネウラシマガイ
潜るポイントでまったく違う海中景観を見せる愛南の海。その他にもここでは書き切れないほどたくさんの生き物にも出会えた。高橋さんは何度も「この海はサラダバーなんです」と言っていたが、なるほど栄養豊富なこの場所に色んな生き物が餌を求めてやってきているのだろう。この海では海中景観を楽しみたい方も、生き物を観察したい方も、どこを潜っても新鮮な出会いがあるだろう。水中写真を楽しむ方はどこを切り取るのか、被写体とソフトコーラルの組み合わせはどうするか、そんな楽しみ方も無限だ。
美味しい愛南の海
さて、ここまでダイビングの楽しみを紹介してきたが、愛南にもう一度訪れたい理由が実は他にもある。それは「食」、特に海鮮だ。高橋さんによると、海がしけたとしても、飲みにだけくるお客さんも多いとのこと。
まさかそんな…と思ったがカツオの刺身を一口食べて納得してしまった。

「六方」のカツオとマダイの刺身
カツオは多少の生臭さがあるのが普通だと思っていたがまったくない。もちもちとした食感で箸がどんどん進む。マダイは「出汁足してる?」と聞いてしまうほどジューシー。さすがは養殖マダイの生産量日本一の愛南町。

「市場食堂」の刺身定食。1500円前後でその日に仕入れたおいしい魚が食べられる
今回の取材では海鮮が美味しすぎて、スーパーでもランチでも至る所で魚を食べたが、とにかく美味しい。

道の駅にも美味しそうなカツオが
それから、お店の方やカウンターで隣り合った方、銭湯で一緒に湯船に浸かっていた方など、どこに行っても地元の方があたたかく迎えてくれたのが印象的だった。

「六方」のカウンターにて高橋さん夫妻と。この後隣に座った地元の方々ともお話しできた
おすすめのお店やお土産など、地元の人たちから教えてもらって、さらに次の店へ…ということを繰り返していた。スナックもたくさんあるらしく、愛南町公認の夜遊びマップにはたくさんのスナックが紹介されている。まだまだ開拓の余地がある…これも、愛南に何度も訪れてしまう一つの理由なのではないだろうか。

愛南の海は、とにかく奥が深い!サンゴや海藻が入り混じるカラフルな景色に、泳ぎ回る多種多様な魚たち。賑やかな海を目一杯堪能し、陸の自然と地元の人々と食に癒される。愛南は、何度でも訪れたくなる癒しと発見がギュッと詰まった町でした。




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