相次ぐサメの出没。専門家とサメの素顔に迫るPart2 -絶滅の危機からサメを救おう-

「専門家とサメの素顔に迫るPart1 -サメって怖いの?-」ではサメ出没の理由や性格の特徴、人間に噛み付く理由などについて世界屈指のサメの研究を行う「沖縄美ら島財団総合研究センター」の上席研究員である佐藤圭一先生(以下、佐藤先生)にお話を伺った。Part2の今回も佐藤先生に、人間の乱獲や環境問題により、年々数が減生しているサメの現状について伺っていく。

オーシャナ編集部

サメの数は減っているのでしょうか?

佐藤先生

減っていますね。ホホジロザメに関していうと、1番の原因は、人間がサメをたくさん捕獲してしまったことです。20年前くらいに欧米ではホホジロザメがゲームフィッシング(釣った魚の重量を競う遊び)の対象になっていました。そのときにたくさんのサメが捕獲されて、数が激減してしまったのです。また、特に遠洋のマグロ漁業に使われる漁具(はえ縄やまき網)などによる、混獲も原因のひとつ。日本でも年間数件ほどあります。あとは、ホホジロザメに限らずサメにとって、ゴミ問題はかなり深刻です。

オーシャナ編集部

サメにもゴミの影響が?

佐藤先生

はい、最近問題になっている海ゴミですが、サメにも大きな影響があります。サメは水面に浮いているものをたとえゴミだとしても食べてしまいます。サメの消化管はとても細いので、詰まって死んでしまうサメがとても多いんです。あと、あまりニュースで見かけないですが、漁業に使われる網やロープに絡まって、打ち上げられてしまうサメもかなりの数います。特にプランクトンを食べるジンベエザメは、サメの中でもゴミに弱いサメだと思います。

サメの胃から見つかったプラスチック片 国営沖縄記念公園(海洋博公園)沖縄美ら海水族館

サメの胃から見つかったプラスチック片 国営沖縄記念公園(海洋博公園)沖縄美ら海水族館

オーシャナ編集部

ジンベエザメはゴミに弱い??

佐藤先生

ジンベエザメは大きな体がゆえに漁網が体に絡まったままずっと泳ぎ続けることで傷を負い、死んでしまったり、プランクトンと一緒にゴミを吸い込んでしまったりします。事実、いま世界中で目撃されているジンベエザメはほとんどが子どもです。ジンベエザメは大人になるまで25年から30年くらいかかりますが、生まれてから大人になる前にほとんどが死んでしまっているのです。

国営沖縄記念公園(海洋博公園)沖縄美ら海水族館

国営沖縄記念公園(海洋博公園)沖縄美ら海水族館

オーシャナ編集部

サメに海洋汚染の影響はあるのでしょうか?

佐藤先生

あります。サメは、さまざまな重金属や有機化合物のようなものが蓄積しやすい深海にも多く生息し、高次捕食者であるサメの肝臓の中にそういったものが蓄積されてしまうのです。

サメの胃から見つかったゴミ 国営沖縄記念公園(海洋博公園)沖縄美ら海水族館

サメの胃から見つかったゴミ 国営沖縄記念公園(海洋博公園)沖縄美ら海水族館

オーシャナ編集部

サメの駆除についてどのようにお考えでしょうか?

佐藤先生

人間が噛まれるといった事故が発生していたら、駆除も一つの手かもしれませんが、特に被害もないのに駆除をするというのは、絶滅危惧の観点から、長い目で見ると考えものです。仮に、サメのイメージが悪いということだけで駆除することは、事実を謝って解釈したことによる、サメの無駄な死と考えざるをえない。サメはそんなに悪いことをしているわけではないし、悪者ではないんです。 野生動物は本気になればなんでも怖くて、たとえばカバとか、相対したときにはサメよりも怖いんじゃないですかね。動物に対するイメージと本当の怖さってだいぶギャップがあるような気がします。

オーシャナ編集部

サメの絶滅は進んでいるのでしょうか?

佐藤先生

進んでいます。サメは500種類以上いますが、そのうち半分の250種類くらいは深海に住んでいるサメで、人と接することがありません。化粧品や健康食品の原料のために乱獲され、深海という私たちが見えない場所で、絶滅危惧種に指定されることもなく絶滅していくということもあるのです。取り尽くしてしまうとなかなか元には戻りません。見えないからあまり問題視されていないだけです。ジンベエザメはみんなが知っていて人気者なので、保護の対象になるのですが、あまり知られていない地味なサメってなかなか目が届かないので、興味関心があまり向かないというのもありますね。

オーシャナ編集部

サメの数は回復しないのでしょうか?

佐藤先生

深海のサメって一生がすごく長くて、人間よりも長生きします、大人になるまで何十年もかかるようなサメもいますから、一回取り尽くしてしまうと、私たちが生きている間に回復するということは難しいと思います。

オーシャナ編集部

サメが減ってしまうと何が起きるのでしょうか?

佐藤先生

海でサメは捕食者の頂点なので、サメがいなくなると生態系全体に影響が及びます。たとえば、九州の有明海に生息するシュモクザメはトビエイというエイの一種を主に食べるのですが、シュモクザメが増減すると、エイも増減します。このような連鎖が起きると、サメとは無関係だった生き物にも影響が及んでしまうのです。

オーシャナ編集部

サメを守るために私たちができることはありますか?

佐藤先生

まずは、海に流出するゴミを減らすことですね。身近なゴミ問題を一人ひとりが意識して取り組んでいくこと、そして教育が大事だと思います。たとえばゴミのポイ捨てが海に与える影響を学ぶのと学ばないのとでは、日常生活に大きな差が出ます。環境問題が話題になっている今だからこそ、教育をきちんと行っていくことが重要だと思っています。

取材してみて

ゴミ問題の被害を受けるのは、カメやクジラの印象だったが、サメへの被害も多いようだ。また、サメの数が減ることで生態系全体に与える影響も大きいことから、海全体の生き物を守るためにも積極的にサメを保護していく必要がある。世界的なダイビング教育機関のPADIには、海洋生態系に対するサメの価値やサメを絶滅の危機に追いやっている主な脅威などを学べるプログラムも。サメについてより詳細に学びたい方はこちらをチェックしてみるのもいいかもしれない。
▶︎AWAREサメの保護スペシャルティ・コース

佐藤圭一先生について

世界でも有数のサメの研究を行う沖縄美ら島財団総合研究センターの上席研究員。
専門分野は、軟骨魚類学。研究内容は、軟骨魚類(サメ・エイ類)の生態・生理・繁殖学的研究。
佐藤 圭一 | 一般財団法人 沖縄美ら島財団
関連書籍
・佐藤先生執筆「寝てもサメても 深層サメ学」
・佐藤先生監修「サメってさいこう!」

PROFILE
2018年、電子部品メーカーに新卒で入社。同時にダイビングも始める。平日は広報室で社会人としての経験を積みながら、土日は海通い。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。
現在はライターとしてネタ探しに目を光らせているが、海やダイビングについての記事を書けることに幸せを感じている。ダイビングをもっと広める!子どもたちの未来にも綺麗な海を届ける!そんな想いで日々活動している。