コロナ禍で進む海辺移住計画。その真相をSUUMO副編集長に聞いてみた

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新型コロナウイルスの影響下でリモートワークを取り入れる企業が増えてきた今、憧れの海辺暮らしを望む人も増えてきたように感じる。
では実際、どんな人が、どんな場所に興味を持っているのか。そして実際に引越しを検討する際には、どんなことをチェックしたら良いのか。

今回はリクルート住まいカンパニー『SUUMO』副編集長の笠松美香さんにご協力していただき、リアルな海辺暮らしのヒントをご紹介していく。

今回お答えいただいたのは…

リクルート住まいカンパニー『SUUMO』副編集長 笠松美香さん


■略歴
1996年 リクルート入社。ふぉれんと事業部(現賃貸領域)に配属。「週刊ふぉれんと」、「週刊住宅情報首都圏版」および、同誌関西版などの編集・商品企画を担当
2007年 「週刊住宅情報関西版」副編集長
2016年 「SUUMO 新築マンション」編集長
2018年 「SUUMO」副編集長
    「SUUMO ジャーナル」をはじめとする情報コンテンツを担当
     スーモ リサーチセンター研究員を兼務

掲載数NO1の国内最大級住宅ポータルサイトSUUMO
https://suumo.jp/

新型コロナウイルスの影響下で変わった、人々の住まいに対する価値観とは

ー新型コロナウイルス影響下で、人々の住まいに対する意識や求めることはどのように変化したと思いますか?

笠松さん

『SUUMO』をご覧になられる方は、緊急事態宣言のタイミングで増えました。
テレワークや自粛生活をきっかけに、自宅や自宅周辺で過ごすことが多くなったため、現在住んでいる家がやや窮屈に感じてしまったり、機能性という面で不十分さ(仕事用の部屋が必要になるなど)を感じたりした方が多いようです。

また、これまでは会社帰りに買い物などの用事を済ませていた人たちも、自宅周辺で用事を完結すべく、電車に乗らなくてもある程度充実した生活を送れる街に住みたい、と思うようになったのも理由の一つですね。

ただ、実際に多くの人が引っ越しているのか、というと一概には言えません。
まだまだコロナ禍で先行きが見えないことから、引き続き検討しつつも、様子を見ている方もいるように感じています。

一つ言えるのは、「いずれは住宅購入をするけれど、当分先だろう」と考えていた方が、今回のコロナ禍での不自由さを感じたことにより、快適な住まいを早い段階で購入しよう、と考える動きが出てきましたね。

やはり海周辺のエリアは人気なので、空いている土地を探すのも大変です。空きが出てもすぐに買い手がついています。
だからこそ、購入した住まいを将来的に手放したいと考えた時でも、住居の条件次第では比較的売却しやすいと思われます。

ーまだ行動に移せずとも、移住を検討し始める人が増えてきたんですね。

笠松さん

はい、今回のコロナの影響でリモートワークになったという人でも、会社側が今後の働き方の方針を完全に固めたわけではないという人がほとんど。
単身者であれば比較的身軽に動けますが、会社の方針を見据えながら、具体的な時期や金額相場などを見極めている方が多いと思います。

ー郊外への移住ニーズとして、「二拠点生活」を望む人も増えていると聞きました。

笠松さん

そうですね。まだまだ勤務先のリモートワーク環境が整っていないケースが多いこともあり、いきなり家族全員で郊外へと引っ越すのは結構ハードルが高く感じる方も多いです。
そういう方は、まずは気になるエリアの物件を借り、週末だけ暮らしてみるなどの二拠点生活を送るニーズも潜在的にあると思います。

2018年に、私たちリクルート住まいカンパニーではデュアルライフ(二拠点生活)をを送る人=「デュアラー」というものをトレンドワードとして発表しました。その時の調査では二拠点生活に興味があると答えた方が14%でした。
しかし昨年の調査では、約28%の人が興味を持っているという結果になっています。

それまで働き方改革などで注目されていた二拠点生活への関心が、コロナ禍で加速しているのではないでしょうか。

ー逆にコロナ感染が不安で引越しを見送る、という人もいたりするんですか?

笠松さん

「引越によって感染がおこらないか」という不安が原因で、諦めているという話はほとんど聞いておりません。
引越し会社側でも、スタッフの消毒や検温など、対策を万全に行なうようにしているので、作業自体への不安はあまりないと思います。

コロナ禍で特に人気が伸びているエリアについて

ー具体的に、どんなエリアの人気が伸びてきているのでしょうか?

笠松さん

コロナ禍で人気が加速しているのは、「都心まで100キロ圏内の郊外」になります。
下の表では、実際に『SUUMO』物件詳細閲覧数を2020年1月、8月のコロナ前後で比較し、伸び率が高いエリアを示しています。

出典:「クラシゴト改革」
https://www.recruit.co.jp/company/involvement/korekara/seminar/0003.html

笠松さん

中古マンションでの人気は、
1位 神奈川県三浦市、2位 神奈川県逗子市、3位 神奈川県横浜市瀬谷区、
中古戸建物件では、
1位 千葉県富津市、2位 千葉県館山市、3位は栃木県那須町
と、比較的海側のエリアが人気です。
千葉県でも富津市や館山市は、都心に通勤するにはかなり大変なエリアですが、リモートワーク主流の動きが見えてきたことから、皆様の関心が高まっているようです。

SUUMOアプリの賃貸では「なぞって探す」という機能があり、その名の通り、地図上で気になるエリアを指でなぞって検索範囲を指定できます。ピンポイントで海沿いの物件を探したい、という時などに便利だと思いますよ!

ーちなみに、このランキングにはないけれど、実は人気な穴場スポットはありますか?

笠松さん

よくお声を聞くのが、神奈川県藤沢市辻堂
大きなショッピングモールがあり、駅周辺も発展しているため、車がなくても自転車で十分便利な生活が送れることから、若いファミリー層から支持されている印象です。

また、関西では大阪や神戸どちらにも通勤に便利な西宮や明石など瀬戸内海方面と、二拠点目としてはリゾート的な魅力のある南紀白浜など和歌山方面も人気です。
ただ関西は関東とは違い、都市から少し離れるとすぐに自然が楽しめる距離感なので、デュアルライフをせずとも、1つの拠点で利便性と自然環境をバランス良く叶えることが可能でしょう。

都市とは完全に分離して二拠点目を持ちたいと考える人は、九州などもよく検討されています。

ー離島への移住を考える人も多いのではないでしょうか。

笠松さん

希望する方はいらっしゃいますが、都会の仕事についたままリモートワークを前提に住み替えるか、現地で新たな仕事を探すかなど、まずは仕事面をクリアすることが大変だという声をよく聞きます。

実際に移住している人は、50代くらいの方が「アーリーリタイア」という形で、自然を楽しみながら農業や飲食・観光業を行っていたり、フルリモート環境で働ける若い世代の方が拠点の一つとして選んでいるケースが多いですかね。

比較的住む場所にとらわれずに働くことができるインフルエンサーとして活躍されている方々の中には、思い切って島へ移住する人も多いです。
そのような発信力を持つ人が移住することによって、その人の持つネットワークからイベントに参加できることをきっかけにライフスタイルを知り、自分もやってみたいと移住する方も多く、特有のカルチャーが生まれています。
長崎の五島や山口県の周防大島などは、そのようなライフスタイルを求めて移住者が集まる場所として以前から有名ですね。

移住する前に知って起きたい、海近物件のメリット&デメリット

ー実際に海辺に移住した人からは、どんな声が挙がっていますか?

笠松さん

やはり「生活の中に海がある」ということを魅力に感じている方がすごく多いです。
少し早起きして海辺にお散歩へ行ったり、お仕事の合間に夕日を見に行ったりなど、ちょっとした時間を使って自然を楽しむことができる、開放感を感じられることに喜びを感じていらっしゃるようですね。
自宅での時間を大切にするようになるので、毎日の食事を丁寧に作ったり、知人を招いたりして楽しんでいるという声もよく聞きます。

実際に地方でワーケーションをした方の中には、健康的な暮らしで心身ともに調子が整い、「コロナ鬱」を克服できたという方もいました。
参考記事:会社員だけど毎日サーフィンする暮らし。ワーケーションで“プチ欝”脱出 私のクラシゴト改革6

デメリットとして挙げられるのは、やはり渋滞と湿気ですね。
塩害によって自動車やバルコニーが汚れやすくなってしまうのは、やはり避けることができない事実だと思います。マメなお手入れが必要になります。
また、週末や夏場などは車で海辺に行く方が多いので、渋滞が多いという声も上がっています。

ーこれらのメリット、デメリットを踏まえて、物件を探すときにチェックすべきポイントがあれば教えてください。

笠松さん

先ほどお伝えしたデメリットのほか、郊外では道が狭い通路も多いです。
車をよく使う方は、実際の生活圏内の道を自分の車が通れるのか、はチェックしておいた方が良いと思います。

また、海を目前に望む「オーシャンビュー物件」を探されている方が多いのですが、実際に生活するとなると1日中海を眺めているわけではなく、金額感もかなり上がってきてしまうので、他の快適性や利便性も重視した方が良いかもしれませんね。
海が目の前にあっても、実際に遊びに行くときは荷物があるので車を出さなくてはいけない、ということも多いので、実用的な海との距離感はしっかり考えた方が良いと思います。

ー海の近くですと、津波の心配をされる方は多いのではないでしょうか?

笠松さん

そうですね、やはりハザードマップはしっかりチェックして欲しいです。
不動産会社でも、物件の重要事項説明時に必ずハザードマップの説明をする決まりになっているので、契約前にはわかることではありますが、やはりお部屋探しの段階で見ておいた方が安心だと思います。

その地域の自治体のホームページには必ずハザードマップが掲載されており、津波に限らず、洪水など、どんな災害が起こりうるかが書かれています。

また、実際に災害が起きたときにどこに避難するのか、避難するときの道筋はどうなっているか、というのも合わせてチェックしておきたいポイントですね。
走っていける距離感なのか、子供やペットと一緒でも避難できるのか、など、考えておくと安心です。

ー笠松さん、ありがとうございました。

開放感に溢れた憧れの海近物件だが、もちろんメリットばかりではないのが当たり前。
引越しを検討する前にしっかり見定め、自分に合った快適な暮らしを手に入れよう。

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PROFILE
神奈川県藤沢市在住。女性ファッション誌からキャリアをスタートし、現在はフリーランスの編集ライターとして活動。オーシャナでは美容やライフスタイル記事をメインに、エコライフのヒントとなるトピックを執筆。
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